2014年2月24日月曜日

Moodle Moot Japan 2014

 2014年2月19−21日の日程で沖縄国際大学において、Moodle Moot Japan 2014が開催されました。業務の都合で参加したのは2、3日目のみ。以下2件の発表を行いました。

「Moodleを活用して英語の授業を構築してみよう!」(共同発表)

 『Moodle事始めマニュアル』で実践報告を執筆してくれた方達に依頼して、英語授業における実践を紹介しました。Moodleだからできるという実践ではないのですが、LMSを使うコツを紹介できたのではないかと思います。興味を持ってくれた聴衆も多かったようで、発表途中に写真を撮っている方が数多くいらっしゃったのが印象的でした。

「eポートフォリオモジュール「柿右衛門」の開発」(共同発表)

 広島修道大学では2010年度よりMaharaを試験的に導入していますが、なかなかユーザ数が増えません。そこで発想を変えて、現在全学導入しているMoodle上に同様の機能を実現したら良いのではないかと思いつきました。発表ではその開発経緯および機能について紹介しました。

追記:本学のプロジェクトで開発したMoodleの小テスト作成ツール「e問つく朗」が2013年度ベスト・ムードル・イノベーション賞の佳作賞を受賞しました!

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 毎年のように思うのですが、Moodle MootはMoodleに興味を持っている人たちは是非参加するべきだと思います(会費が1万円と高くなってしまいましたが)。ただ今後の方向性として教育実践や研究も含めた方向に進むそうなので、そうなるとMoodleに限定してしまっている点が足枷になるのではないかと感じています。「Moodle無料!→Moodleすごい!」位で留まれば良いのですが、「Moodle無料!→Moodleすごい!→Moodleでいろいろやる!→無理があるけどMoodleでいろいろやっちゃうよ!」までいってしまうと教員も学生も不幸なので。

 全く関係ないのですが、暖かいと聞いていた沖縄は小雨まじりで風の強い毎日だったのでとても肌寒く感じました。写真はあまり撮っていないのですが、ここから。

LMS Symposium@Hiroshima Shudo University

 2014年2月15日、広島修道大学においてLMS*シンポジウムを開催しました。テーマは「eラーニングは教育を変えるか?-LMSとその効果の測定」で大げさなものではありましたが、本当に言いたかったのは「Moodleをはじめとしたeラーニングシステムは万能ではない。きちんと実践しその効果(前田先生のことばを借りれば成果)を測定した上で、長所や短所を冷静に考える必要がある」というものでした。当日は県内外から約50名もの方にお越し頂きました。ありがとうございました。

 当日は運営にかかわっていたものでドタバタで、記憶が曖昧です。twitterを利用している方は#lmsshudoをご覧いただくとして、以下簡単に備忘録ではありますがお許しください。

(*ちなみにLMSとして主に本学でも採用しているMoodleを取り上げましたが、それ以外のLMSを活用した取り組みの報告もありました)

特別講演
前田 啓朗(広島大学)
「学習の成果を測定するということ」

 60分間という短い時間の中で、評価やテストについて概観していただきました。有益な情報が多かったのですが、その中でも特に適正処遇交互作用(ATI)の説明の時に言われた「すべての人にとって最も効果的な教え方は果たしてあり得るのだろうか」という問いかけは誰もが心に留めておくべきことだと感じました。

基調講演
山川 修(福井県立大学)
「学習を可視化するツールとしてのeラーニング」

 Preziを使った講演でした。LMSやeポートフォリオ、SNSを包括する概念としてのCLE (Collaboration and Learning Environment)について説明され、ビッグデータ、そしてLearning Analyticsへの期待を示されました。実際にご自身が行われた実践の紹介もしていただきました。

実践報告
浦野  研(北海学園大学)
「目的に応じたLMSプラットフォームの選択と利用: 何ができるかではなく何をすべきかを考える」

 浦野先生はよく第2言語習得研究の観点から「インプットを増やす(そしてアウトプットも増やしたい)」と主張されていますが、この点を意識して行っている実践を報告して頂きました。報告の中ではLMSに踊らされるのではなく、適切な場面でLMSを使うことの重要性を主張されました。また先生が実際に使われているGlexaの紹介もありました。

実践報告
住 政二郎(流通科学大学)
「Moodleを活用した英語学習支援:プレイスメント・テストから到達度テストまで」

 有料のいわゆる標準的なテストを使うのではなく、入学試験の過去問題などの資源を活用することで、テストを効率的に行った事例の報告でした。Moodle上でプレイスメント・テストの実施およびクラス分けまで自動化できるプラグインを開発してもらったそうです。言語テスト理論に裏付けされた緻密な取り組みが印象的でした(そして住先生がこの取り組みに費やしたであろう多くの時間も)。

大西 昭夫(VeRSION2)
「LMSの内側を見てみる」

 様々な学会で研究報告もされている大西さんですが、今回は開発者としての視点からLMSの課題について説明して頂きました。これからMoodleをインストールしてみようと考えている人にとって、とても有益な情報だったと思います。

広島修道大学重点領域研究メンバー
大澤 真也、中西 大輔、竹井 光子、矢田部 順二、岡田 あずさ、脇谷 直子、記谷 康之
「広島修道大学におけるMoodle活用の試み」

 そして最後に、本学研究メンバーで行ってきた取り組みの紹介そして今年度はじめて行った「成績とアクセスログ」を分析した結果について報告しました。当然のことではありますが、LMS上で何をやるかによってアクセスログは変化します。だからこそ実践に重きを置きたい場合には、このようなデータの分析に一喜一憂するのではなくて、将来的な実践に活かせるような方向に持っていきたいものです。

 ということで準備期間も含め長くも楽しい1日が終わりました。LMSはまず導入するのが1つ目の壁です。そして使いこなすようになるまでが2つ目の壁です。この壁を乗り越えればかなり楽になるのですが、落とし穴として「LMS万歳!」 になってしまう場合があります。LMSにはできることとできないことがあります。Chalk & Talkということばもあるように、通常の教室で対面授業をやったって何も悪くない訳です。だからこそ、実践を積み重ねていきつつ、LMSの効果(成果)についてきちんと考えていく必要があるのでしょうね。個人的な感想としては忙しくはありましたが、楽し過ぎる1日でした。1日が終わって家に帰る夜道、「ああ、楽し過ぎる」と1人でつぶやいてしまう程に…。