2020年4月9日木曜日

私が2020年度前期に担当する授業における方針

 新型コロナウイルスの蔓延にともない刻々と変化する状況に対応するため、私の勤務する大学では学長を本部長とする緊急対策本部が設置され、2020年4月20日(月)に延期した前期授業開始日に向けて、連日のように長時間の会議を行なって対応を検討しています。「学生・教職員の行動の自粛」「通学時のバスの混雑緩和」「いわゆる3密を避ける工夫(教室のサイズ・換気)」「マスク着用の義務付け」など物理的な対策に関しては実行可能なありとあらゆる対策を講じる予定になっています。
 ただし状況次第ではゴールデンウィーク明けに再延期される可能性もありますし、最悪の場合は前期の対面授業は前期実施不可能ということも考えられます。現在教職員の間だけではなく学生の間にも混乱が広がっているようなので、取り急ぎ私個人が担当する授業に関する方針を示しておきます(暫定版なのでコメント歓迎します)。

2020年度担当授業における方針(2020年4月9日現在)
授業形態:
・テキスト+対面+Moodle(LMS)を利用した活動
物理的対策:
・3密にならない席の配置
・対面での活動自粛

 10年近くMoodleを利用した授業を実施しており、近年はほぼすべての授業でMoodleを活用しています。このことから対面授業を予定通り開始し継続できるのであれば、この授業形態を踏襲します。ただし、通常であれば教室内におけるペアワークなども積極的に行わせていますが、今年度に関しては原則として学生が向かい合って行う活動は行いません
 また体調不良の学生および通学を躊躇する学生には、「積極的に欠席する権利」を認めます(これは2018年7月の西日本豪雨の時にも学生に伝えたメッセージです)。欠席した場合でも授業をフォローできるように、LMS上に内容の概要および板書の写真をアップロードします。
 4月20日に予定通り前期を開始できない場合、あるいは開始したとしても休校になった場合にはZoomなどのビデオ会議システムを利用しますが、いわゆる90分遠隔授業のような形ではなく、「LMS上での活動+短めの動画+オンラインにおける少人数のやり取り」に活用する予定です。

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以下は上記の方針に至るまでに学内で検討し共有した内容です。遠隔授業について何も知らない人は「90分間ライブで中継する」といったことを考えてしまうかもしれませんが、物理的に不可能ですし、単調な90分間の動画を見続けるほど学生は暇ではないでしょう。だとすれば、物理的にも可能で、各教員が背伸びをせずできる範囲でやれることをやりましょうという趣旨です。

文部科学省の定義する「多様なメディアを高度に利用して行う授業」
その1: 同時双方向型(Zoom, Google Meet, Microsoft Teamsなど)

その1における課題
  • 4月以降多くの教育機関が遠隔授業を行うことが予想されるため、どこまでできるか未知数。
  • 多くの教員が同時に学内からビデオ会議を実施することは、物理的に不可能(自宅から行うことも選択肢の1つ)。
  • ゼミなど少人数クラスには適しているが、学生側の通信環境を確認する必要がある。
  • 遠隔授業を行うための設備投資(カメラやマイク)やトレーニングが必要で、多くの教員にとって90分間飽きさせない授業を行うのは困難。
その1における対応策
  • 実際に利用を検討する人は状況が悪化した時だと思われる(つまり4月以降)。そのため今年度中に利用を開始できるようにするための予算措置が必要(可能であればサポートするための人員も)になる。
  • 実際に体験してみるために、4月前期授業延期期間のどこかで1度Zoom接続テストを実施してみる。
  • ビデオ会議(双方向)とウェビナー(動画配信+チャット)の使い分けの検討が必要になる。

その2: オンデマンド型(LMS等を利用した動画や音声、資料などの配信)

その2における課題
  • 本学でLMSとして利用可能なものは主にMoodleおよびGoogle Classroomだが、使うためにはトレーニングが必要。
  • 容量の制限(Moodleでは長時間の動画などをたくさんアップロードできない)。
その2における対応策
  • Moodle利用教員を中心に、体験できる場(オンラインが望ましい)を設定する。
  • クラウド・ストレージ(Google DriveやDropbox)やMOOCなど外部のサービスを活用する。
現時点で考えられ得る現実的な対応策
  1. 基本はその2のオンデマンド型(LMSの活用)を採用し、文字を活用した情報や課題を提供し、必要に応じてその1のビデオ会議などを採用する。できない人はメールや郵便のやり取りでも良いかもしれない(オンラインである必要はない)。
  2. 著作権に留意しつつMOOCなど公開されている教材を利用して、補習用の教材を教員が作成するという形式も考えられる(1〜2回程度の緊急措置であれば)。
気になること
  • 履修登録期間は早い方が良い(仮でも良いので1度履修登録を終わらせておけば、オンライン授業での対応が迅速に行える)。教科書の購入についても同様。
  • オンラインで授業を行うのであれば、学科ごとに学生向けガイダンスが必要。
  • 教員の行動変容が必要不可欠(授業や会議の実施方法)。

私の勤務校で現時点(2020年4月9日時点)で利用できるもの
 同時双方向型(ビデオ会議)に利用できるものとしてGoogle Meet、Microsoft Teams、Zoom(教育機関として申し込み済みなので2020年4月末まで制限なしで利用可能)、LMSとしてはMoodleおよびGoogle Classroom。

そのほかにもcisco Webex、Skype Meet Nowなども無料で利用できる。

参考URL
新型コロナ対策・オンライン授業のためのブックマーク
https://www.notion.so/66568dc20cf9425081cbcd2a2bc587f9?v=6bdaefbaa5164c26bb0a88bba562ad7d
新型コロナウイルス感染症対策に伴うICTを活用したオンライン教育等の取り組みについて
https://www.nii.ac.jp/news/2020/0325.html
東京大学「新入生・在学生のための, オンライン授業を受けるための準備」
https://utelecon.github.io/oc/
大阪大学オンライン授業実践ガイド
https://www.tlsc.osaka-u.ac.jp/project/onlinelecture/
専修大学「大学のオンライン授業を展開するための簡易ガイド」
http://senshu-iis.jp/?p=1102
山梨大学教育センターオンライン授業の実施について
https://www.che.yamanashi.ac.jp/20200318-2/
オンライン授業のための情報まとめ
https://digitalnagasaki.hatenablog.com/entry/2020/03/15/002904

zoomパーフェクトマニュアル
https://zoomy.info/zoom_perfect_manual/
これからZOOMでオンライン授業をしようと思っている教員の方へ
https://qingyuan.sakura.ne.jp/wp/?p=4121
Zoomを用いた遠隔オンライン授業の実施運営に関する資料
https://drive.google.com/file/d/1hNTRmQqChjopLb6xZtRUpKu_cJrzCEgf/view?usp=sharing
大学等遠隔授業におけるLINE Open Chatの利用について
https://www.dropbox.com/s/9vajq7v6chaixfi/大学等遠隔授業におけるLINE%20OpenChatの利用について_20200331_a.pdf?dl=0
Moodle事始めマニュアル(授業事例集あり)
https://sites.google.com/site/ozawashinya/elearning/moodlemanual
中西先生Moodle講習会資料(2019年9月11日)
https://www.dropbox.com/s/pjf2c0nfn23x4d3/20190911Moodle講習会.pdf?dl=0
そのほかの参考資料
「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」
https://www.mext.go.jp/content/20200324-mxt_kouhou01-000004520_4.pdf
「大学における多様なメディアを高度に利用した授業について」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/09/10/1409011_6.pdf
「学事日程等の取扱い及び遠隔授業の活用に係るQ&A等の送付について」
https://www.mext.go.jp/content/20200401-mxt_kouhou01-000004520_6.pdf
「大学等における臨時休業の実施に係る考え方等について(周知)」
https://www.mext.go.jp/content/20200401-mxt_kouhou02-000004520_04.pdf
「新型コロナウィルス感染症対策に伴う学校教育におけるICTを活用した著作物の円滑な利用について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/92080101.html