研究法セミナーおよび課題別研究プロジェクトは改めて研究に対する姿勢を考えさせてくれる契機になりました。気になったことばをいくつか書き留めておきます。
- 「研究はひとりよがりではいけない。フィールド全体の発展に貢献する研究を行う」
- 「多くのResearch Questionを取り入れた研究は複雑で解釈の難しい結果を生み出す」
- 「良い研究は良い意味でconservativeであること。論理の飛躍をさせない。研究結果以上のことを述べない。」
- 「やった研究は人目に触れないと意味がない。口頭発表も大事だがやはり論文執筆そして掲載が重要」
いわゆる英語教育研究の作法をきちんとしましょうという主張だと思いますが、研究の厳密さを追求しすぎると、いろいろと間違いを恐れて研究に手を出せなくなる人がいるかもしれないということは少し気になりました。英語教育研究においては、教員(特に中・高等学校教員)が手軽に間違っていない手法を用いて実践を共有できるような研究が行えると良いですね。将来的には研究のチェックリストのようなものを作成するとのことなので期待したいと思います。あとこれも浦野先生によれば今後話題として扱ってくれるらしいのですが、 研究における倫理上の問題についてはきちんと考えるべきだと思います。
その他、今話題の江利川春雄先生(和歌山大学)がパネリストの1人して登壇したシンポジウム「生徒の目が輝くとき」にも参加しました。
その他のパネリストとして中・高等学校の教員も登壇し、それぞれの活動実践例などの紹介をされました。中・高等学校の先生の活動例を聞くのはとても楽しいものです。が、それらの活動をどのように評価しているのかについてもう少し詳しく話を聞きたいと思いました。
実はこのシンポジウムのタイトルにある「生徒の目が輝く」ということばに、少し違和感を覚えました。確かに中学生や高校生を見ていると目が輝いているなと感じるときはありますし、私自身も大学生と接していて目が輝いていると感じるときもあります。ただし、英語教育という視点から考えたときに「生徒の目が輝く=英語を学習(習得)している」ではないと思うのです。これは江利川先生の主張する「教師の力量=英語力+指導力+人間性」ということばにも感じた違和感なのですが、「生徒の目の輝き」や「人間性」などで判断しない英語教育力というものを考える必要があるのではないかと思います。極論で言えば目が死んでいても教師の人間性が低くても、確実に生徒の英語力は向上しているといったことがあっても良いのではないでしょうか。
私は現在英語教員養成にかかわる科目を多く担当している立場ではないのですが,それでも「英語科教育法」という科目を1つ担当しています。最近意識して受講生に言うのは,
・自分が受けてきた英語教育の猿真似はするな。きちんと考えること。
・理論は現実には不向きかもしれない。でも困った時には必ず助けてくれる。
・楽しいだけの活動はだれでも作れる。でも活動をどう評価するかを考える。
ということです。教育経験の無い大学生の今だからこそきちんと考えてもらいたいという思いがあります。たまたま今学生を相手に行っている英語勉強会で読んでいる本に次のようなことばがありました。ありきたりなことばではありますが、大切ですね。
Lightbown &Spada (2013) "Take a moment to reflect on your views about how languages are learned and what you think this means about how they should be taught (p.2)"
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ということでCELES参加が終わりました。恥ずかしながら全国大会には顔を出すものの、このように地方大会に参加するのはかなり久しぶりでした。そこで感じたのはフロアの温かさです。どんな発表に対しても聴衆が真摯に質問します。JASELEなんかも昔はそうだったのですが、最近そのような雰囲気が薄れてきているので寂しいですね。近いうちに必ず自分も発表したいと思わせてくれる学会でした。ゼミ生曰く「先生の学会参加中のつぶやきは修学旅行みたいでしたね」(笑)。うまい喩えだと思いますが、本当に楽しい学会参加でした。
ちなみに話が逸れるので書きませんでしたが, 阪上辰也先生による「縦断的学習者コーパス分析による共起表現の経時変化」の発表は好みでした。こういう研究をしたいんですよね...。頑張らねば。
その他、備忘録。
『英語教育、迫り来る破綻』
「英語教師の研修ノート」
Edinburgh Project on Extensive Reading (EPER)
Nagoya Interlanguage Corpus of English (NICE)
関係ない富山の想い出たちはこちら。