2012年11月17日土曜日

「コミュニケーションに活かす英文法指導とは?-『意味順』の提案-」

 去る11月15日(木曜日),広島修道大学人文学部英語英文学科の1年生を対象として行われる「初年次セミナー」クラスを利用して学術講演会を開催しました。講師としてお招きしたのは京都大学教授の田地野彰先生です。文法用語を使わずに英文の理解と作成を助ける方法として「意味順」を考案され,英語教育の分野において注目を集めている方です。当日は履修者のみならず,英語英文学科に所属する学生や教員,近隣の大学からも聴衆が訪れ,時折ユーモアを交えながらお話をされる田地野先生の話に魅了されていました。

 意味順とは,「だれが」「する」「だれ・なに」「どこ」「いつ」といった語の順番を意識して簡単に英文を作成できるようになることを意図したものです。今まで日本人英語学習者にとって常識だった5文型とは異なった視点で英文の仕組みを学ぶことで,完璧ではなくても英語を産出することができるようになることを目指します。

たとえば,

(a) The man ate the apple.
(b) The apple ate the man.

という例文を見てみましょう。日本語であれば語順よりも助詞の利用に意味がありますが,英語の場合にはそうはいきません。しかしながらこのような語順の誤りは日本人英語学習者にとっての特徴的な誤りの1つであると考えられているそうです。

 詳細は以下のリンクや田地野先生の出版物を参照していただければと思いますが,講演当日は意味順を支える様々な理論的根拠を提示されるアカデミックな側面あり,意味順を試してみる実践的な側面あり,そしてユーモアのある内容で,笑いの絶えないとても刺激的な学術講演会となりました。

 私の感想としては,以下の表のように意味順だけではなく従来の5文型も意識した上で英文法を考えると視覚的な理解が楽になると思います。

(田地野, 2008より抜粋)

「新しい学校文法の構築に向けて-英文作成における「意味順」指導の効果検証-」
「学習者にとって「よりよい文法」とは何か?---「意味順」の提案」
ディスカヴァー社長室ブログ
意味順の解説動画
意味順ノートについて(キョクトウ・アソシエイツ)
意味順でNew Horizon





2012年11月1日木曜日

意味順の田地野先生が来広!

 「意味順」英語学習法でおなじみの田地野先生が広島修道大学に来学されます。今回は,本学の学術交流センター主催の学術講演会という形で,英語英文学科の1年次生を対象とした講演をしていただきます。タイトルはずばり「コミュニケーションに活かす英文法指導とは?-『意味順』の提案-」です。詳細はこちらをご覧下さい。

 田地野先生は京都大学に移られる前に,広島修道大学で勤務されていた経験がおありになります。私が働き始めたのは2002年からなので,田地野先生とは入れ違いだったのですが,それがご縁で学会等でお会いする度にいろいろとお話(主に雑談や冗談)をさせていただいていました。今回それがこのような形につながり,とても嬉しく思っています。

 現在,英語英文学科では「学生の英語力を向上させる」ために様々な試みを行っていますが,その1つの形として今回の講演会を行います。英語英文学科の1年次生に限らず誰でも参加できますので,参加を希望される方は私あるいは本学の学術交流センターまでお問い合わせください。

今年の秋は広島が熱い!!!

講演会
タイトル:
コミュニケーションに活かす英文法指導とは?-『意味順』の提案-
講師:
田地野 彰(京都大学 教授)
日時:
2012年11月15日(木曜日)10時45分-12時15分
場所:
広島修道大学 6号館 6102教室



2012年9月14日金曜日

2012年度前期授業アンケート

 前期末に行った授業アンケートの集計結果が返ってきたので,まとめておきます。設問は各5点満点(A=5,B=4,C=3,D=1の加重平均)。

ちなみに質問項目は2分類に分かれており,以下の通り。
【授業の体系性】
1.授業内容は授業計画と一致していましたか。
2.授業のねらいや学習目標は明解でしたか。                            
3.授業時間や授業回数はきちんと守られていましたか。            
【教授方法・講義内容】
1.教員の話し方や声の大きさは適切でしたか。    
2.教員は学生の質問などに適切に対応していましたか。    
3.学生の反応や理解度をみながら授業が進められていましたか。
4.学習に対する興味・関心を刺激する授業でしたか。            
5.授業の内容は理解できましたか。                                    
6.授業を通して新しい知識や理論、考え方が分かるようになりましたか。
7.教員は私語など受講マナー上の問題に対して適切に対処していましたか。
8.教材(テキスト、プリント、レジュメ、スライド、ビデオ等)は、授業内容を理解する上で役立ちましたか
9.黒板・ホワイトボード・プロジェクタ等の使用は適切でしたか。
10.課題(発表、レポート、小テスト等)は、勉学を深める上で役立ちましたか。

「Reading & Writing I」履修者数29名(回答者数26名)
【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.7,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.9(科目別平均4.5,受講者数平均4.7)

授業内でMoodleを利用した活動をメインに行っている授業。すべての項目において高評価をいただきました。改善しなければいけないのは【教授方法・講義内容】の分類にある「授業を通して新しい知識や理論,考え方が分かるようになりましたか。」という項目(4.7(科目別平均4.4,受講者数別平均4.5))。Moodleを利用して書いたり読んだりする作業が多いため,あえて簡単なテキストを選んでいるのですが,それを物足りなく思う受講生がいるということでしょう。

今回気になったのは【学習態度の自己評価】にある「この授業科目について,授業の前後に合計してどれくらい勉強しましたか?」という項目。

3時間以上: 19.2%(科目別構成比11.5, 受講者数別構成比14.2)
2~3時間以内: 11.5%(科目別構成比7.5, 受講者数別構成比9.1)
1~2時間以内: 7.7%(科目別構成比12.2 受講者数別構成比19.0)
30~1時間以内: 26.9%(科目別構成比17.5, 受講者数別構成比22.1)
30分以内: 30.8%(科目別構成比24.4, 受講者数別構成比21.3)
全く勉強していない: 3.8%(科目別構成比26.7, 受講者数別構成比14.1)

予復習が毎回30分以内で終わってしまっている人が1/3いるというのは問題だろうと思います。

【自由記述欄】
・「とにかく楽しいし、分かりやすく説明してくれる。」
・「15回おつかれさまでした!先生の授業すごいたのしかったです。(*^^*) 後期もよろしくおねがいします☆ あと、先生が最初のころ言ってたTOIECの点数もがんばりたいです!」=期待しています!
・「先生がパワーポイントなどを使って文法を説明してくれたのはとてもわかりやすくて、よかったです。英語の童話の中で、一番読みやすい(簡単な)のはどれですか。」=読みやすいというと難しいのですが,自分の好きなものから始めると良いですよ。著作権の切れているものは無料でGutenberg Projectから入手できます!グリム童話なんかも面白いですしね。
・「他の人と英語でコミュニケーションをとったりすることができて良かったです。」
・「先生が非常に面白い。もう1年履習したいくらい、先生と話しやすい」=え?単に落と
せば良かったってこと?(笑)このコメントを書いたのが誰だかはわからないのでご心配なく。
・「寒い」=!!え?僕のギャグではなく教室内の温度であることを切に願います。

「英語研究III」履修者数58名(回答者数54名)
【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.7,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.8(科目別平均4.5,受講者数平均4.5)

今年度は新たな試みとして,授業で扱った内容に関する意見をMoodle上のフォーラムに書き込んでもらうということをやりました。毎回やった訳ではありませんが,多くの受講生が参加してくれました。今後もう少し発展させて授業内・外の連携を円滑なものにしていきたいです。

概ね高評価をいただいたのですが,【教授方法・講義内容】の所で,「学習の内容は理解できましたか。」が4.6(科目別平均4.4,受講者数別平均4.4),「授業を通して新しい知識や理論,考え方が分かるようになりましたか。」が4.7(科目別平均4.4,受講者数別平均4.4)であるということ。講義科目でいろいろと新しい知見を紹介しているつもりですが,あまり反応は芳しくないようなので改善します。

【自由記述欄】
・「この授業の雰囲気が、みんな授業に参加しているんだということが分かって良かったです。この授業は、いつも終わるのが早く感じるくらい好きな授業でした。」=良かったです。つまらなく感じると90分間は苦痛ですからね。
・「ただきくだけの講義とは違って、授業に積極的になれたので、楽しかったです。」
・「パワーポイントがとても分かりやすかった。授業で提示されたパワーポイントや資料がムードル上で見れるので、復習がしやすかったです。」=Moodle上での予復習を促す目的もあったので,良かったです。
・「先生の絵とだじゃれのセンス」=!!!
・「スライドが多いので、ノートをとる部分がたまにわかりませんでした。」=このようなコメントは去年もありました。気をつけます。
・「今まで受けた事のないような内容で毎回授業で学ぶこと全てが新鮮で楽しかったです。普段何気なく使っている言葉や文法をつきつめて勉強していくと奥が深くとても身になったと思います。今回初めて大澤先生の講義を受けたのですが、受けて良かったと思いました。これでテストが難しすぎなければなお良いのですが…。」=ありがとうございます!テストはどうでしたか?
・「先生の授業は、自分が大学に入って唯一興味を持てた授業なんです。(後期の語用論も)色々みんなが楽しめるように工夫してくれているのがすごく伝わります。」=ありがとうございます!
・「先生のパワーポイントはいつもわかりやすく、おしゃれで、私もいつかこんな風にパワーポイントを使って話せるようになりたいな。と毎回思っていました。」=これは嬉しいなあ。でもほんとはパワーポイントを使いたくない(笑)。
・「分かりやすかったけれど、あとで振り返ってみると何やったかあまり覚えていない し、内容が深いけど覚えていない。テストが、どうなるか不安です。」=この科目では広く浅くいろんなテーマについて話をするので難しいかもしれませんね。来年度以降の課題にします。
・「修道大学に入学してから2年が経ちましたが、この2年間で、1番楽しい授業でした!!楽しいというか、勉強している授業をまじめに受けている感覚を取り戻せました。」=良かったです!特に「勉強をしている」感覚を味わえてもらったというのは嬉しい一言ですね。
・「後期の授業を先にとってしまっていたので、昨年こっちから先にとっとけばよかったなと少し思いました。先生のトークもすべりながらでしたが相変わらず面白かったです!」=!!!(涙)

「英語科教育法II」履修者数24名(回答者数23名)
【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.8,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.8(科目別平均4.6,受講者数平均4.7)

指導上の問題や評価について概説したあと,受講者によるミニ模擬授業を中心に進める授業。昨年度までは模擬授業に対するフィードバックを紙で提出させて共有していましたが,今年度からはMoodleのフォーラムでフィードバックを共有しました。

概ね高評価をいただきました。「授業の内容は理解できましたか。」は4.6(科目別平均4.5,受講者数別平均4.5)なので改善が必要。来年度以降,授業で扱う内容や進行方法を改善しようと思っています。

【自由記述欄】
・「今回生徒が考えた授業が中心となっている授業を初めて授けさせてもらってお互いから学び合いながらクラスとして成長できる授業でした。」
・「教職で必要な英語力がどこまで必要なのかが分かったところ。」=教職課程履修者ということで他科目より厳しくしています。
・「英語を教える上で大切なこと、気をつけなくてはならないことが何なのか学ぶことができた。他の人の模擬授業を見ることで、良い点・悪い点など多く学べた。」
・「moodleを用いる授業はe-learning以来で、戸惑いはあったがみんなの意見を聞けるという点ではかなり重宝した。永久保存版にしてほしい。」=永久保存は無理ですが,記録に残るのは良いですよね。
・「指導案や、授業で使うプリントや、テストを作り、大変だったけど、みんなの感想を聞けて、よかったです。そして、教科書の内容に、感動しました。」
・「関連図書、最近の英語学習に関する動向を適宜教えてくれた所 模擬授業をただやらせるだけでなく、授業後にきちんと授業に関するコメントの発言の場を設けてくれた点。又、コメントもしっかりしてくれたところ。」
・「授業担当に対して全員がコメントをいい合う時間がダラダラしていた。もう少しメリハリを持つよう生徒へ呼びかけてほしい。」=これは僕の授業運営上の問題もあると思います。来年度に修正を加える予定です。
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授業アンケートを実施する際には「できるだけ自由記述欄にコメントを書いてください」とお願いしています。数字だけではわからない所もあるので,今回頂いたコメントを基に後期や来年度の授業において改善を加えていきたいと思います。

2012年9月10日月曜日

第3回Mahara Open Forum


 第3会Mahara Open Forum(通称MOF)が2012年9月8,9日の日程で熊本大学で開催された。詳細は下記のページにあるのでそちらを参照のこと。


ページ上では,プログラムだけではなく予稿集,発表当日の様子も視聴することができます(過去のものは既にありますが,今回に関しては執筆時<2012 .9.10=".9.10">ではまだアップされていません)。MaharaというのはeポートフォリオシステムでMoodleと同じくオープンソースのシステムです。eポートフォリオシステムとしてはまだ未成熟な感が否めませんが,様々なものをオンライン上にアップロードし簡単にそれらをレイアウトしたページを作成できるのはさすがです。FレックスのページもMaharaを利用して作られています。

2010年度に福井で行われた第1回,札幌で行われた第2回に続き今回は3回目。規模は大きくない(60名程度?)ものの,参加者・発表件数ともに着実に参加者が増えている集まりです。何よりも素晴らしいのは,有志のメンバーが手弁当で予稿集作成や映像の録画などすべて行っていることでしょうか。現在は参加費無料ですが,今後規模が大きくなると運営が難しくなってくるかもしれません。が,できれば無料あるいは格安の参加費のまま継続していってほしいと思います。詳細に関しては上記のページ,あるいは当日のつぶやきのまとめを参照してもらえればわかると思います。当日は私と同僚の中西さんを中心に2件の発表を行いました。

大澤真也,中西大輔(広島修道大学),吉田光宏(Moodle / Mahara パートナー)
Mahara1.2 翻訳作業をとおしてMahara を批判的に検討する

2012年2月に発表者3人で『Maharaでつくるeポートフォリオ入門』という翻訳本を出版しましたが,その中で見えてきた課題やちょっとした裏話を提供させていただきました。完璧に「ネタ」提供に徹したスライド作りをしていたので,会場の雰囲気がどうなるかヒヤヒヤしていましたが,発表中に聴衆の顔を見渡してみると結構笑顔で聞いていただけていたので,そういう意味では一安心でした。

Mahara をMoodle と連携させる
中西大輔,大澤真也(広島修道大学)

こちらは現在中西さんが研究室に構築しているサーバ上で試しているMahara,Moodleの連携について概観し,そこから見えてきた課題を指摘しました。

そして私が個人的に力を入れていたのは以下のパネルディスカッションの企画です。

パネルディスカッション「eポートフォリオとしてのMahara の課題」
コーディネータ:大澤真也(広島修道大学)
パネリスト:青木久美子(放送大学)
藤田豊(横浜市消防局)
隅谷孝洋(広島大学)
中西大輔(広島修道大学)
小村道昭(エミットジャパン)

企画意図は,「Maharaを使い始めたばかりの方,あるいはその他のeポートフォリオシステムを使われている方などをパネリストとしてお招きすることで,Maharaの課題を明らかにし今後につなげていく」とあるように,Mahara初心者を中心にパネリストをお迎えしました。その意図は正直なところ,私自身がMaharaをeポートフォリオとして使っていくことに限界を感じているので,Maharaという土壌ではなくMahara以外のシステムを使ったことのある方々に議論してもらうことで,何か面白い話になるのではないかと思ったからです。別名「Maharaをdisる」が企画意図でした(笑)。

1時間と限られた時間内だったので,事前に課題をパネリストから集約してまとめておきました。またパネリストがそれぞれ発表する形式ではなく,藤田さんに25分程度で話をしてもらい口火を切っていただくことで,できるだけ議論の時間を確保しようと思いました。ねらいは的中し,議論が開始した当初はどうなることかと思いましたが,終わってみればフロアも含めてパネリスト間で様々な意見交換ができたと思います。反省点は司会である私の采配に至らないところがあったため,ディスカッションとしてのまとまりに欠けたところでしょうか。

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今回の実行委員長である久保田先生の「この会は全員がフラットなんです。上下がないんですよ。」,福井県立大学の山川先生の「Maharaが良いということではなく,Maharaという共通の話題を基にしていろいろ考えていく。」ということばに表れているように,一つの教室でみんなが話題提供をする楽しい会です。そしてその話題提供についてみんなで真摯に考えていくというのは素晴らしいことだと思います。ただやはりeポートフォリオとしてはMaharaは使いにくい所もあるしあまり成功例がありません(Fレックスでは積極的に活用されていますが)。Moodleも使いにくくはありますが,苦労するのは教員です。Maharaの場合は苦労するのが学生なので,学生が嫌になってしまえば使ってくれません。そう言う意味では既存のFacebookやtwitterなど使いやすいインターフェイスに慣れている学生が,Maharaを積極的にしかも自主的に使ってくれる動機づけはないとも言えます。

ツールとしてはあそこまで面白いことをあっという間にできるのは魅力的です。少しeラーニング経験のある教職員であれば,Maharaを使いこなすのはそんなに大きな問題ではありません。何が問題かというと90分×15回という限られた時間内で,Maharaという少し難しいツールを学生に使わせると,それ以外のことに時間が割けなくなってしまうという点です。特に私が担当している授業においては,Moodleを使っていたりその他の作業をしていたりする時間が長いので,Maharaの操作説明に時間を割くことができません。

これは前から思っていることですが,Maharaに限定して言えばeポートフォリオとして使う必要はないのかもしれません。教職員が中心になってリソースを提供するためのツールとして使うという発想があっても面白いのではないかと感じました。これについては賛否両論あるでしょうが,今後試験的にやってみたいことです。

さいごに・・・

懇親会も盛り上がり,2次会(私は参加していませんが)では「踊るMaharaジャ!」という関係者にしかわからないフレーズも発明されました(笑)。下手にtwitterやFacebookで写真をアップロードすると,次の日に司会者に突っ込まれます(笑)。twitterでつぶやいただけなのに,議論で取り上げられます(笑)。年齢層を問わずまじめな話からしょうもない話までできるのは,とても幸せなことだなと思った2日間でした。


2012年9月5日水曜日

日本リメディアル教育学会第8回全国大会


 2012年8月27〜29日の日程で日本リメディアル教育学会第8回全国大会が立命館大学衣笠キャンパスで行われた。予想はしていたけれどそれを上回るほどの暑さ,そして京都駅から30分以上もバスに揺られなければ到着しないキャンパスとで疲れ果てた3日間だった。ちょっとした発見は京都のバスでは積極的に高齢者に席を譲ること(その代わり,乗客が目当てのバスを見つけてどんなにバスを追いかけても,運転手は素知らぬ顔をして発車する),そしてホテルのバーは高層階にないことかな。それはさておき・・・。

今回はポスター発表を行ったのだけど,その準備に追われ他の発表を集中して聞くことができなかった。

今回のポスター発表は,

大澤真也・中西大輔・竹井光子 「学生に自信をつけさせる英語教育プログラムの予備的検討(3):英語カリキュラム改善のために」

ということで,2010・11年度,本学の1年次生を対象に行ってきた英検Can-doリストを用いた自信度評価およびTOEIC Bridgeスコアの関連を明らかにし,英語カリキュラムの改善につなげようというもの。なかなか思うような結果は出なかったものの自信度の自己評価とTOEIC Bridgeスコアの間には相関が認められたため,今後のカリキュラム改善へとつなげていきたい。この結果を基に現在進行中なのは英語動画教材作成である。本学と同レベルの大学に無償で公開することを計画しているので,興味関心のある方は是非ご連絡くださいませ。

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ということで今回は発表で手一杯だったので他の発表を聞いた備忘録については省略。「リメディアル」ということばに注目している人は多いけど,いまいち定義の難しいこのことば。どの学力層が多く在籍する大学なのか,またどの分野を重点的に教えるのか,などによって議論の方法が異なってくる。この学会の面白い所は理系・文系を問わず様々な分野の研究者が集まって議論する所だと思うので,今後の活動にも期待したい。

今回気になったのは「キャリア」や「コミュニケーション」ということばが用いられるようになってきたこと。確かに入口から出口を意識した上でリメディアル研究が行われるべきだと思うのだけれど,ちょっと焦点がぼやけてしまう気もする。あとリメディアルというのであれば高校との接続を意識した発表が増えても面白いのではないだろうか。

2012年8月9日木曜日

外国語教育メディア学会第52回全国研究大会

 2012年8月7日~9日の日程で神戸の甲南大学にて外国語教育メディア学会が開催された。今回のテーマは「外国語教育における学習・指導・評価の最前線」ということで基調講演3件の顔ぶれを見ると今までのLETとはひと味違った感じ。今後のLETの方向性を暗示している気がします。甲南大学の近辺は高級住宅街で大きなお家ばかり!かと思えばその辺に流れる川でイノシシが水を飲んでいたり!真夏の暑い3日間(ワークショップを含む)でしたが,何かと勉強させていただきました。以下,備忘録。

[1日目]
1日目はワークショップの日。メインキャンパスよりも更に上の建物ということで,体力的にやられました。

Aaron Campbell(京都外国語大学)
Using Moodle Reader to Support Extensive Reading


以前から気になっていたので受講。詳細はmoodlereader.org参照のこと。いわゆるGraded Readerを読んだかどうかを確認するための問題をボランティアが作成しているというプロジェクト。moodlereader.orgに登録しても使えるし,自前のサーバにインストールしても利用することが可とのこと。ワークショップ中に3~40人の受講者が一斉にアクセスするとダウンしてしまったので,授業時間内に一斉にアクセスさせるということは考えない方が良いかもしれない。問題のレベルや質についてはあまり精選されていない印象だけど,実際に授業で使ってみたい。

阪上辰也(広島大学)
Rによる教育・言語データ処理のススメ

数年前にRをインストールして以来,挫折していましたが今回重い腰を上げて勉強してみました。実際に触ってみることによっていろんなことがわかったし,簡単な分析であればすぐできることもわかりました。無料でここまでできるのはすごい(とは言えやはり初心者には何かと辛い)。今後継続して勉強してみたくなりました。阪上さんのExcelやSPSSに対するコメントが個人的にはツボでした。

[2日目]
岩田聖子(追手門学院大学)・原田章(追手門学院大学)
CALL学習者に影響を及ぼす要因の特定に向けて:CALL学習者のコンピュータスキル及び英語力に関する質問紙開発


関口幸代(文教大学)
ソーシャルメディアを活用した英語学習者の自己調整学習環境の構築


iPadを貸与し,どのようなアプリをダウンロードして学習したかや,twitterを利用して学習記録をつぶやかせるなどの実践を行った。
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面白いとは思うのだけど,twitterを敢えて利用する意味があるかどうかは疑問。でもtwitterを利用した英語学習には個人的に興味あり。最後の質疑応答はtwitter利用者同士の戦いになっていました(笑)。

安川佳子(神戸凪川学院大学)・白木智士(甲南大学)・吉田佳子(甲南大学)・佐々木緑(関西国際大学)
社会人と大学生が考える自己の英語能力と社会で必要な英語能力とはー社会人と大学生の意識調査からー


社会人と学生の意識について非英語専攻の1年生167名と社会人75名を対象に質問し調査を行った。質問紙はCEFRをもとにしたもので,回答者が「すでにできる」,「大学を卒業していれば,できるべきだ」,「仕事,趣味,生活等に役立つ能力だ」のうち該当する項目にチェックマークを入れる方式で行った。
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「社会人」の定義は何なのか,なぜチェックマークという方式を採用したのか疑問が残る。面白いテーマなので今後の展開が楽しみではあります。

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その他にもポスター発表で「文法力の要請と基礎文法力要請のための教材開発の試みとその検証」(木村修平(立命館大学)・森永弘司(同志社大学))や「汎用計算ソフトを用いたランダム出題型テストの開発と運用」(前田啓朗(広島大学)),「『極めて短いストーリーコンテスト(Extremely Short Story Competition)』を導入した教室活動に関する報告ー東京経済大学のでの実践例ー」(三宅ひろ子(東京経済大学))などが印象に残りました。LETらしくtwitterなどソーシャルメディアの活用を行ったり,事前にオンラインに配布資料を閲覧できる状態にして置いておくなど,学会参加者への配慮が嬉しかったです。

LET参加の楽しみはワークショップとICTなどを活用した実践報告。中にはセカンド・ライフを活用した英語教育実践例等もあったりして興味深く拝聴しました。けれどもこのようなテクノロジーを活用した実践の効果を評価するというのはとても困難なことである気がするので,今後の課題でしょう。そういった意味で今回の大会は「学習・指導・評価」をきちんとやっていきましょうという学会としての決意表明であったような気がします。

時間の都合で荘島宏二郎(大学入試センター研究開発部)先生の講演は聴けなかったのだけど,過去の講演はこちらで視聴できるようです。

第38回全国英語教育学会愛知研究大会

 2012年8月4,5日に愛知学院大学日進キャンパスにて、第38回全国英語教育学会が開催された。名古屋というと暑いというイメージがあるが,名古屋から地下鉄とバスを乗り継いで1時間弱,そして入り口から会場となる建物まで歩いて5分以上!発表をはしごする度に汗が滝のように流れて疲れ果ててしまった・・・。教育関連の学会は夏のまっただ中に行うのが恒例ではあるのだけれど,年々参加するのが厳しくなってきたなあ。来年は北海道らしいので期待しております(何を?)!関係ないけど初日にはオープンキャンパスも同時開催していて,何かと参考になりました。ということ聴いた発表の中でいくつかのものを備忘録(タイトルだけのものもあります)。

[1日目]
安達優也(千葉大学大学院生)
「大学英語学習者の自律学習とはー自己調整学習の観点から」

 自己調整学習(Self-Regulated Learning)の観点から,大学生英語学習者の自律学習を探ろうとしたもの。参加者は29名の英語教育専攻の大学生。Pintrich & De Groot (1990)の「自己効力感」「内発的価値」「テスト不安」「認知的方略使用」「自己調整」の5つのカテゴリーから校正される尺度を和訳し,5段階の尺度で回答させた。結果それぞれのカテゴリーは十分に信頼性(α計数)のあるものだと考えられる。次に認知的方略使用,自己効力感,内発的価値のカテゴリーの正規分布曲線領域においてスコアが有意に0から離れている学生,またはzスコアの値が他の学生よりも高い学生をそれぞれ3名抽出し,伊藤(2009)が作成した「自己動機付け方略」の項目を基にしながら,英語学習における認知邸・動機づけ的方略を半構造化インタビューの形式で聴取した。それらのデータを書き起こしKJ法の手法を用いて,認知的・動機付け的方略にかかわる部分に下線を引いて分類した。分類は以下の通り。

英語学習における自己調整学習方略
目標設定/計画作成/自己理解/進度確認/環境整備/想像/社会的比較/整理/社会的/メリハリ/報酬/反省/修正/注意焦点化/推測/関連付け/理解・想起/オーセンティック/リハーサル/反復・練習・リソース


そしてそれらを認知/動機づけ/行動/文脈に大別した(それぞれに更に予見,モニタリング,コントロール,省察がある)。

Pintrich, P. R. (2000). The role of goal orientation in self-regulated learning. In Boekaerts, M., Pintrich, P. R., & Zeidner, M. (eds.), Handbook of self regulation. CA.

伊藤崇道 (2009). 自己調整学習の成立過程.北大路書房.
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インタビューを行うまでの手続きが参考になりました。半構造化インタビューということで伊藤(2009)を基に行ったということだが,実際にインタビューでどのようなやり取りが行われたのが気になる。それが分類に影響していることも考えられるので。


磯田貴道(立命館大学)・田頭憲二(広島大学)・大和知史(神戸大学)
「語用論的能力と学習者の個人差要因:依頼表現のタイプと動機」

 語用論的能力と動機づけどの関係を明らかにする目的で行われた研究。談話完成課題により抽出された依頼表現を用いて,学習者の産出する依頼表現のタイプと動機づけとの関係を明らかにしようとするもの。
 中間言語語用論では,学習者の語用論的意識に影響を与えるものとして(1)言語環境,(2)習熟度,(3)目標言語環境への滞在期間,(4)動機づけの4つの要因が現在まで検討されている。これまでの調査によれば動機づけの高い学習者は語用論的意識が概して高く,習熟度に限らずこの傾向が見られることが報告されている。しかしこれらの調査では実際にどのような表現を産出するのか,また表現の種類と動機づけがどのように関連するかは検証されていない。
 調査協力者は日本人の大学1年生121名(欠損値のある10名を除外),以来表現についてはBardovi-Halig & Dornyei (1998)で使用された質問紙を援用し,談話完成課題を用いた表現により筆記形式で依頼表現の抽出を行った。場面は「学生が教授から本を借りる場面」「アンケートを依頼する場面」の2つ。これらの場面で使用できると思われる表現をできる限り多く書き出すよう指示した。表現はTrosborg (1995)を参考に依頼表現のhead actごと(間接的依頼,慣習的間接,直接的依頼およびその下位分類)に基づいて分類した。
 また動機づけについては,自己決定理論(内発的動機づけ,外発的動機づけ(同一視的調整,取り入れ的調整,外的調整,無動機)に基づいた質問紙(廣森, 2006)を使用した。因子ごとに尺度得点化し5変数を投入しクラスター分析を行った。結果,内発的動機づけの高いグループは,間接的な表現を用い,高くないグループはより直接的な表現を用いる傾向にある。が,内発的動機づけが高くても直接的な表現を用いるケースもある。そのため今後は習熟度や指導方法の再考について検討する必要がある。
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語用論には興味があるのでこの発表者たちの発表はいつも楽しみにしています。そう言えばJASELEでは語用論に関する研究発表は少ないですね・・・。「出来る限り」という指示であったとのことだが,学習者がその表現がその場面で適切だと思って書いたかどうかはわからない(のかな?)。発表者たちも述べているように今後,習熟度や指導方法等を考慮に入れた時にどのような結果が出るかに興味を持った。以前中学校の教科書をざっと調べたことがあったのだけど,語用論的なことを意識した構成にはなっていなかったので・・・。

廣森友人. (2006). 外国語学習者の動機づけを高める理論と実践. 多賀出版.

松宮新吾(関西外国語大学)
「The Criterion Online Writing Evaluation Serviceの活用による大学生のライティング・ストラテジーの活性化に関する調査研究(ライティングに関する大学生の意識調査と分析)」

[2日目]
久山慎也(広島県立安古市高等学校)
「日本人初級英語学習者におけるfast writerとslow writerの特徴ー作文得点・言語熟達度・方略使用の観点からの分析ー」
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ここ数年いつも楽しみに聴かせていただいています。高校で実際に指導をしておられる方が自らの実践を分析できるというのはすばらしいことですね。

斉田智里(横浜国立大学)
「英検Can-doリストのDIF分析の試み」
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僕の理解を超えてしまっているのだけど,こういう手法があるのだという勉強になりました。

浦野研(北海学園大学)
Measuring Japanese learners’ implicit and explicit knowledge of adverb placement in English.

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専門外の方でもわかるし楽しく聴けます!とにかくシンプルに発表することにこだわっておられるのが素晴らしいですね。

酒井英樹(信州大学)
「英語教育研究における単一事例実験計画の可能性」

第二言語習得研究や第二言語指導の効果を検証する研究においては長期的な視点で学習者の言語発達を見ることが重要であるとされるが、多くの研究では事前・事後(さらに遅延事後)を伴う実験群・統制群(もしくは対照)群を対象にする計画である。Mellow et al. (1996)は単一事例実験計画(single-case experimental designs)を発達過程に情報を提供する可能性があるものとしてその活用を勧めている。

単一事例実験計画は、単一事例を対象とすること、長期にまたがる複数の観察時点を有すること、実験条件の操作を行うこと(実験を志向すること)という特徴を持つ。基本的にはABA(基線・処遇・条件の撤去)という手順で計画され、基線でのパフォーマンスが処遇期におけるものと比較でき(統制群の役割)、撤去期に処遇期のパフォーマンスが消去することを確認することで処遇の内的妥当性を高めることができる。田中(1987)によればこの計画は準実験としての特徴を持つとされている。

この計画は対象クラスが1つ(少人数、個別指導など)、継続的な指導ができる(複数のデータ収集が可能)、従属変数が数量化でき反復測定ができる、独立変数(教育的介入)が明確かつ個別である場合に用いるのが適切であると考えられる。

教育機関においてはできるだけ多くの観察点を設け、語彙テストや動機づけの質問紙評定や作文など数量化が可能なものを実施し、独立変数(教育的介入)が明確かつ個別であることが重要である。

この計画の限界としては、本計画を用いても継時的な研究にならない場合もあること、準実験計画であり他の実験計画にとって代わるものではないこと、内的妥当性を高めるために撤去期を設けることが望ましいが、条件によっては可塑性の問題から難しい場合もあり、そのような場合には多重事例計画を考慮すると良い。
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中・高等学校や大学など実践に重きを置きながらデータを収集できるという意味で,このような手法が今後普及しても良いのではないだろうか。実践をしているのに「とにかくデータを収集する」とか「統制群と実験群の比較」という手法に以前から違和感を感じているので,参考になる部分が多くありました。

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参加する度にあまりの人の多さと発表の多さに圧倒される学会です。この学会では研究手法の説明に重きを置いた発表が多い気がするけど,正直な話「○○という手法を用いて」という話が発表時間の半分以上も続くと辟易としてくる(研究手法の精緻化や改善に主眼を置いた研究は除く)。逆にあまりにもいい加減な研究手法を用いてしたり顔で発表している場合もどうかと思うし(自己反省の意味合いもあり)。もう少し合理的に研究手法を整理して,内容で勝負する発表が増えてくると面白い気がします。量的にしろ質的にしろ研究手法を確立していくことは重要だと思うので,研究手法については最低限説明するだけで済むようになると良いですね。

しかし今回はポスター発表やワークショップ,ランチョンセミナーなどあまりにも盛りだくさんで移動に疲れました。CEFR-Jのシンポジウムも参加しましたが,こちらは東京で参加したシンポジウムと話が重複する部分が多かった気がします。

2012年6月7日木曜日

迷惑メール

 大学のメールアドレスを持っていると大量の迷惑メールが届く。一時期,迷惑メールへの締め付けが厳しくなって,数が減少したようにおもったけど,最近は野放し状態。あまりに変な「件名」のものが多いので,いちいち突っ込んでおきます。

件名:【重要】お疲れ様です
回答:こんなことが重要だったら,世の中重要なことだらけです。
件名:好きですか?
回答:ごめんなさい,僕は流行の草食系です。
件名:Re Re Re Re Re
回答:あなたからメールをもらうのははじめでですが・・・。
件名:した。必ずご確認をお願いします。
件名:したっ!!
件名:お世話になっております。
回答:お世話していません。
件名:迷惑メールフォルダに届いた場合、移動お願いします。
回答:迷惑メールフォルダに移動しておきました。
件名:やほー
回答:最近もっぱらぐーぐるです。
件名:はじめまして,みちこで~す
回答:はじめましての割には失礼だな。
件名:招待状が届いています
回答:社交界デビューであれば考えます。
件名:これでもう諦めます
回答:はじめてのメールで諦めるなんて!
件名:ごく普通ですが・・・
回答:普通が一番!
件名:年齢不問 18禁!
回答:不問じゃないぢゃん。
件名:お疲れさまでございます。
回答:ありがとうでございます。
件名:担当の田中直美です。
回答:前任者からの引き継ぎがまだですが・・・。
件名:こんな私ですが。。。
回答:心配なら止めましょう。
件名:エイチな女性が集まる理由
回答:そこにアイはありますか?
件名:家で生活3日目突入しちゃった
回答:何の問題もありません。僕も1年のうちほとんど家で生活しています。
件名:私の事助けてくれる優しい
回答:その後が何!気になる!
件名:神様退学になっちゃったよー(´Д`;;)
回答:まずは親に相談!

2012年3月20日火曜日

卒業式

2012年3月20日(火曜日),本学で卒業式が行われました。昨年の卒業式は東日本大震災の直後ということもあり何だか落ち着きませんでしたが,あれから1年が過ぎたんですね。
 今年も無事卒業生を送り出すことができました。毎年この時は寂しくもあり,学生たちのことを誇らしく思うときでもあります。みなさんのこれからのますますの活躍をお祈りしおります。大学時代に築いた大切な「絆」をこれからも大事にしてください。
 大学教員にとってはようやく1年間が終わってほっとする瞬間。来週からは新年度に向けて何もかもが加速します。頑張らなきゃ。



2012年3月13日火曜日

CEFR-J公開シンポジウム

Cefr-Jの公開シンポジウムが3月9-10日の日程で明治大学駿河台キャンパスのリバティタワーで行われた。このリバティタワーというのが御茶ノ水駅から徒歩5分程度で,まあでかくて・・・。なんて田舎者の感想はここまでにしておいて,当日の覚え書き。

「新しい英語能力到達速度指標 CEFR-J公開シンポジウム」は欧州言語共通参照枠(The Common European Framework of Reference for Languages 通称: CEFR)の日本の英語教育における運用を目的と下2008-2011年度科学研究費補助金基盤研究(A)「小、中、高、大の一貫する英語コミュニケーションの寿力の到達基準の策定とその検証」(研究代表者:投野由起夫)の最終成果報告である(当日配布冊子より引用)。

おそらく公式のウェブサイトはここ

1日目の使用言語は英語で,ブリティッシュ・カウンシルとケンブリッジESOLから講師を呼んでの基調講演もあった。最初の基調講演の後,投野由起夫先生からCEFR-Jの背景と開発の経緯について説明があり,その後「CEFR-Jを用いた学生の自己評価アンケート」と題して中野美知子先生がCEFR-Jにおけるdescriptor(記述文?)と日本語学習者の自己評価との関連について行った調査について簡単な説明をされた。調査は中学校,高校,大学生を大賞に2011年の春と夏に行われた。人数は順に1685名,2538名,1234名,1245名の計5468名。中学生はpre-A1レベルからA2.2レベルにおける12項目,高校生・大学生はpre-A1からC2における22項目について自己評価を行った。分析手法はItem Response Theoryのtwo-parameter logistic model。いろいろと説明をされていたが,この結果descriptorとして順番に並ばない項目を中心に妥当性の検証を行ったという理解で良いのだろうか(ここは私の理解であり未確認)。


1日目の残りのセッションにおいては,CEFR-Jの開発過程についてのものもあったが,私が参加したのは

相川真佐夫.「自己評価と実際の能力の関係(I):スポークン・プロダクション」
椎名紀久子.「自己評価と実際の能力の関係(III):リスニング」
高田智子.「自己評価と実際の能力の関係(IV):リーディング」
中谷安男.「自己評価と実際の能力の関係(V):ライティング」

などCEFR-Jの妥当性検証に関するセッションであった。最後のスロットは投野先生の「コーパスに基づいたCEFR-Jの単語リストとその他の活用資料」を聴きに行こうと思っていたのだが、なんせセッション間の休憩時間がゼロのため,移動を断念した。

全体的な印象としてはタスクの設定,サンプル数,descriptorの選択基準,実際の能力の評価,分析手法について,各技能間でバラツキが多いような気がした。せっかく科研という枠組みでやっているのだから,ミニマルな統一設定があっても良かったのではないだろうか。ただ,「妥当性」をこのように多くの研究者が検証していくというのはとても良い試みだと思う。あと気になったのは,英語を言語として設定しているにもかかわらず日本国内に多数いるであろういわゆるALTの聴衆はほとんどいなかったこと。こういう人たちが聴きに来てくれたら面白いこともあると思うんだが。

2日目は飛行機の都合もあり最後まで聴けなかったが,

高橋美由紀.「Pre-A1レベルの指導法」
高田智子.「A1レベルの指導法」
尾関直子.「スポークン・インタラクション(Aレベル)」
根岸雅史.「リーディング(Bレベル)」

を聴いた.ワークショプ形式ということで緊張していたのだが,そこまで参加型ではなかったのである意味安心した(笑)。発表の質には差があったように思うが,一番しっくりきたのは根岸先生によるリーディングのレベルと実際のテキストのレベルを検討するというセッションだった。これはリーディングにはテキストという実物があるということにも起因するとは思うのだけど・・・。根岸先生の所の大学院生が何らかの計算式でレベルの判定をしたとおっしゃられていたが,どのような計算をされたのがとても興味がある。全セッションに共通して感じたのは,小・中・校・大,そして企業の人たちも交えて,共通の基準に従いながら教材を検討するというのは,とても面白い経験だということだ。

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ということで,全体的な印象に留まるのだが,CEFR-Jは長い年月そして大規模な調査を行った点において今後注目を集めるのは間違いがない。ただ科研メンバーも認めているように,これが完全版ではなく出発点である。小池生夫先生のことばを借りれば「どんどん叩いてもらえればいいと思う」とのこと。そのうちネット上からもCEFR-Jの完全版が入手できるようになると思うが,楽しみである(紙のものはシンポジウム当日に頂きました)。実はCEFR-Jの動向については関心を持っているという程度で,詳しくはあまり知らない(恥ずかしながら)。高等教育機関においてはTOEICの点数だけが目標として設定されてしまう場合も多々あるので,CEFR-Jのような包括的(あえて抽象的ではあるけど)な基準をどのように活用できるかは今後検討していきたい。

English Profileのリンク。

あれから1年〜twitterのつぶやきを中心に振り返る〜

2012年3月11日で,東日本大震災から1年が経過しました。これまで震災について語ることを避けてきましたが,1年経過したということで自分のtwitterのつぶやきを読み直してまとめてみます。

2011年(平成23年)3月11日14時46分18秒(日本時間)、宮城県牡鹿半島の東南東沖130kmの海底を震源として発生した東北地方太平洋沖地震は、日本における観測史上最大の規模、マグニチュード (Mw) 9.0を記録し最大震度は7で、震源域は岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200kmの広範囲に及んだ。この地震により、場所によっては波高10m以上、最大遡上高40.0mにも上る大津波が発生し、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらした(Wikipediaからの引用)。

当日は普通に大学で仕事をしていました。冬期休暇中でもありゆったりとした気持ちで学習支援センターでtwitterを立ち上げながら仕事をしていました。そしてその時間,twitter上に「揺れた」「大きい」といったことばが溢れ出しました。被害が大きくない地震であればその場限りでつぶやきは消え去るのですが,その日はいつまで経っても消えません。慌ててテレビのある部屋に駆け込んで見た津波の映像,そして日本列島全域に発せられた津波警報。何人かの職員の人たちと呆然とテレビの映像を眺めていました。筆舌に尽くしがたい嘘のような映像。アナウンサーが「行方不明者は・・・,死者は・・・。」と小さな数字を繰り返し伝えていましたが,被害が大きくなることは誰の目から見ても明らかでした。当日は夕食は外で食べる計画をしていましたが,沿岸部に住んでいたこともあり急遽キャンセルし,恐怖を抱いて急いで家に帰ったのを覚えています。世界各地の友人から心配してメッセージや電話がありました。中でもシンガポールの友人からもらったことば,”Take care and stay strong.”は今でも忘れられない。

それ以降はしばらくtwitterで日常のことをつぶやきくのを止めました。広島は幸いなことに被害がなかったものの,日常をつぶやくことに何となく気が引けたからです。twitter上には世界中から励ましのメッセージが#prayforjapanというハッシュタグで流れてきました。後になってから,twitterのサーバだけはダウンしたなかったということで,「twitterは災害に強い」という評価が定着しました。避難場所や被爆に対する心構え,行方不明者の捜索など数多くのつぶやきがリツイート(拡散)されました。僕が注意したのは,地震に対する事実に関することだけをツイートすること。実際,地震以降,明らかなデマや嘘の情報が数多く拡散されましたが,一度ネットに出回ってしまった情報は消すことができません。twitterは便利である一方,危険なツールにもなりうることを実感したものです。僕が震災関連でつぶやいたのは主に以下の2つのリンクだけ。


テレビも放送を自粛しました。震災の映像ばかりで,こちらも気分が滅入ってきます。震災の映像の合間に入ってくるのはACのものばかり。3月15日前後にテレビを見るのを意識的に止めました。


3月16日には次のようにつぶやいています。

テレビも一部を除き通常放送に戻ってきた。多くの人が言っているように,被災していない地域の人たちは通常の生活に戻ることが一番大切。
昨日は帰宅途中の路面電車の中であまり聞かない音楽を聴き続けた。今日も通勤途中のバスの中で音楽を聴き続けた。平静を装っていてもみんなの想いは東日本に。

この日以降,ようやく少しだけ震災について語れるようになりました。この時はとにかく日常を送ること,そして学生たちにこういう時だからこそ勇気を持って前向きに生きて欲しいというメッセージを伝えなければいけないと思いました。

個人的には,大学に勤務する人間として印象に残っているのは数多くの学会がキャンセル(あるいは発表申し込みの延期)されたこと,そして東北地方を中心に節電のために大学ホームページが簡易版として表示されるようになったことでした。日常生活においては広島県内でもコンビニの看板の電気がことごとく消えました。震災後はじめて関東に行ったのは2011年6月4日に桜美林大学で開催された大学教育学会でしたが,関東在住の友人の一言は「よくこんな時期に来たな」でした。広島にいるとあまり感じませんが,当時東京ではまだ節電意識が強く,コンビニの店内は異様に暗く,乗った電車も電灯の数を減らし適宜消灯して運行していて驚きました。まだ1日に余震も数多くあり,西日本と東日本での意識の違いを痛感した出来事です。

2011年8月20-21日は山形大学で開催された全国英語教育学会に参加しました。同じ東北地方ではありますが,幸いなことに被害は小さかったようです。今年度はこれで山形に行くのは最後だろうと思っていたら,何と11月26-27日に山形で開催された大学教育学会に出張することになりました。1年のうちに同じ土地に学会出張で行くのは滅多にないことです。前回の経験から山形と宮城はバスで1時間程度ということを知っていた僕は,学会終了後,宮城県仙台市を訪れてみようと思いました。時間は限られているけど,震災の影響をこの目で見ておかなければいけない気がしたからです。訪れたのは宮城県多賀城市の辺りです。すごく気が引けたのですが,タクシー運転手に事情を説明し,案内してもらいました。道中いろんなことを話してもらいました。一見すると瓦礫もきれいに片付けられていますが,住宅地が丸ごと流されてしまった地区があり,そこで佇んで会話をする家族。流された家があった場所に,以前あった灯籠などを探し出して集めて来ている人(悲しそうな目が印象的でした)。津波で折れ曲がったポールのある駐車場でキャッチボールをする親子。写真を記録として残そうと思った1時間でしたが,写真を撮る気になれませんでした。運転手さんが促すように,「写真を撮りますか?」と言う時にやっと撮るだけで,そんな気になれなかったのです。被災地での戦いはまだ続いている,そしてその中でもたくましく日常を送っている人がいる。月並みだけどそんなことを感じました。

今年卒業する子たちの中には卒業研究のテーマとして,「震災」に関連することを選んだ人たちが15名中2名いました。学生たちが必死に今回の出来事を理解しようとしている姿を見て,僕自身被災地を自分の目で見ておきたいという思いがありました。コメントは付けませんが,その時に撮った写真をアップロードしておきます。

東日本大震災から1年が経過しました。それを契機にテレビ局がここぞとばかりに特集で映像を繰り返し流しました。僕にはまだこれらの映像をじっくり眺める勇気がありませんでした。震災について語ることを避けてきたのも,勇気がなかったからでしょう。このブログは誰かにメッセージを伝えたいというよりも自分の気持ちを一度整理しておきたいという思いから書いたような気がします。

さいごに:2011年ユーキャン新語・流行語大賞には震災関連の語が数多くノミネートされましたが,大賞は「なでしこジャパン」でした。何だかとても日本的な選出な気がするのは私だけでしょうか・・・。







2012年3月12日月曜日

第1回Moodleシンポジウムat広島修道大学


201238日(木曜日),広島修道大学にてシンポジウムを開催した。予想外に約50名の参加者があり,北は北海道,南は熊本など全国各地から参加者にお越しいただいた。当日はUSTREAMによる中継やtwitter, moodleによるチャット機能を会場内に表示しながらのシンポジウムにしたが,いろいろと至らない所もあったものの楽しい会になったように思う。当日は司会だったので,はっきり言ってあまり記憶が無い(苦笑)。
それぞれの振り返りを運営サイドから。

twitterのつぶやきハッシュタグ : #msh2012

第1部ワークショップ:
使ったことが無い人から中級の人までを対象にしたワークショップ。いきなり参加者をteacherではなくstudentロールに割り当ててしまっているという大失敗から始まったが,何とか時間内に収まった。反省材料はワークショップとは言え,時間の制約からあまり触ってもらう時間を作れなかったこと。それぞれmoodleに関して持っている知識は違うので,MoodleMootでもやっているのように,ジーニアスバーのような形式でmoodleの操作方法に対する疑問をぶつけてもらうという形式でも良かったかもしれない。
 本学で開発した「e問つく朗」は一般公開しております。


からお入りください。ユーザ名はmondai,パスワードはyarou!  です。

第2部シンポジウム:
今回の人選の基準は1つで,「今まで直接話を聞いたことがある人」であった。発表の数自体が少ないので,話を聞いて面白い方が良かったと思ったからである。基調講演はデータを交えたものでとても迫力があったし,パネルディスカッションの講演者はそれぞれとてもエキサイティングな発表をしていただいてので,感謝している。企画段階からの懸念は,パネルディスカッションで活発な議論ができるかどうかであったのだが,これに関しては成功とは言えず今後に課題を残す結果となった。
語学教育に関わっている人は神谷先生のウェブサイトをぜひ!必見です。
第3部情報交換会:
毎度のことだが,夜の部での情報交換の激しさは尋常ではない(笑)。むしろ夜に積極的に参加した方が,いろいろと面白いことができるのでは。翌日から東京出張だったということもあり,2次会の途中で失礼しました。

全体のまとめ:
 今回は「第1回」と銘打っていますが,次回以降があるかどうかは全くの未定です(笑)。MoodleMootという会がある中で敢えて今回のような会を企画したのはちょっとした思いつきではあったのですが,せっかく来ていただけるのであれば,いろいろと交流が行える会になればと思いました。また学会などの母体が無いからこそできる会にしたいとも考えました。いろいろ失敗もありましたし,イベント当日まで大変なことがたくさんありましたが,そういう意味では一定の成果は残せたのではないかないかと思います。Moodleの面白さは様々なバックグラウンドを持った人たちが集まる所です。その多様さ故,聴衆の興味関心に完全に合致するのは難しいという側面もありますが,何となく「同好会」的で,「無償」で協力し合いましょうという雰囲気があるのが特徴だと思います。今後もその雰囲気を大事にしつつ何かを企画できれば楽しいですね。
twitterでもつぶやきましたが,「LMSガチンコバトル」のようなイベントがあっても楽しいと思います。いろいろなLMSを使っている人たちが,お互いのシステムを本気でけなし合う!そんなイベントが実現する日を夢見ております。

ーーーーーーーーーー当日のスケジュールーーーーーーーーーー

第1部:ワークショップ
10:00-11:35 ワークショップ「moodleのABC」
10:00-10:45 初級編 「moodle事始め (コースの作成と編集)」     
  土岸 真由美 (広島修道大学) 
10:50-11:35 中級編 「moodle熟達への道 (レポートと小テスト)」 
                    有田 真理子 (広島修道大学) 
第2部 シンポジウム / Keynote and Symposium
13:10-14:20 基調講演 「moodleを利用したeラーニングの可能性」
                    山川 修    (福井県立大学)
14:30-15:30 パネルディスカッション
中西 大輔 (広島修道大学)  
「はじめてMoodleを使うひとのために」
上田 浩    (京都大学)        
「倫倫姫プロジェクト: Moodleによる多言語情報倫理教育の実践」
神谷 健一 (大阪工業大学) 
「4択問題データの多目的利用―moodleだけのために問題データを入力しないで済む方法―」
藤井 俊子 (佐賀大学) 
「佐賀大学におけるLMSの活用事例」
15:45-16:15 質疑応答・全体討論

2012年3月1日木曜日

2011年度後期授業アンケート


後期末に行った授業アンケートの集計結果が返ってきたので,まとめておく。設問は各5点満点(A=5,B=4,C=3,D=1の加重平均)。

ちなみに質問項目は2分類に分かれており,以下の通り。
【授業の体系性】
1.授業内容は授業計画と一致していましたか。
2.授業のねらいや学習目標は明解でしたか。
3.授業時間や授業回数はきちんと守られていましたか。
【教授方法・講義内容】
1.教員の話し方や声の大きさは適切でしたか。
2.教員は学生の質問などに適切に対応していましたか。
3.学生の反応や理解度をみながら授業が進められていましたか。
4.学習に対する興味・関心を刺激する授業でしたか。
5.授業の内容は理解できましたか。
6.授業を通して新しい知識や理論、考え方が分かるようになりましたか。
7.教員は私語など受講マナー上の問題に対して適切に対処していましたか。
8.教材(テキスト、プリント、レジュメ、スライド、ビデオ等)は、授業内容を理解する上で役立ちましたか。 9.黒板・ホワイトボード・プロジェクタ等の使用は適切でしたか。
10.課題(発表、レポート、小テスト等)は、勉学を深める上で役立ちましたか。

「ゼミナール II」履修者数14名(回答者数13名)
【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.8,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.9(科目別平均4.6,受講者数平均4.6)

【授業の体系性】【教授方法・講義内容】とも高評価をしていただきました。ただ少人数の演習形式の授業は評価が高くなる傾向になるので,低いものに関しては改善していく必要がある。概ね, 4.9,5.0の評価だった中で,4.8だったのは,「学習に対する興味・関心を刺激する授業でしたか。」「授業を通して新しい知識や理論、考え方が分かるようになりましたか。」「教員は私語など受講マナー上の問題に対して適切に対処していましたか。」の3項目。最初の2項目については,専門分野を追求する授業でこの評価ではダメでしょう。最後の1項目は思い当たる節あり。授業中の私語へもう少し厳格に対処するようにします。

【自由記述欄】
・雰囲気が明るくて、和やかな感じなので発表がしやすい。レジュメを作るのが大変で苦手だけど、自分でレジュメを作ることによって、内容をしっかり理解できて良い。
・Maharaに予習ポイントを載せていただくのはとても助かります!!

「Reading & Writing II」履修者数30名(回答者数28名)
【授業の体系性】
設問平均5.0(科目別平均4.8,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.9(科目別平均4.6,受講者数平均4.6)

授業内でMoodleを利用した活動をメインに行っている授業。前期に引き続き同じクラスの担当でした。前期の平均はそれぞれ4.9,4.8だったので,少し評価が良くなったのは嬉しい。前期は「内容が簡単すぎる」という声があったので,少しだけ内容を高度なものにしました(それでもやることは高校生レベル)。その中で評価が低かったのは,「 授業を通して新しい知識や理論、考え方が分かるようになりましたか。」の4.6(科目別平均4.5,受講者数別平均4.5)。基本的な内容をやることが多かったので,簡単すぎると思われたのかもしれません。

【自由記述欄】
・皆が書いた英作文などを共有できたことと、いくつかの英作文の直しを先生がしていたので案外ミスが多いことがわかって参考になったので良かったです。あと先生の説明もわかりやすいし面白かったので良かったです。=英作文の共有を意識していたので,良かったです。
・You Tubeとかつかってみたり、いろいろ工夫がされた授業で、楽しく英語を勉強することができました。そして、英作文添削システムを使ったりして、少し英作文をつくる力がついたと思う。
・パソコンを使っているのでリスニングもできたし、黒板よりも理解が深まったと思います。説明も分かりやすくて新しい考え方ができました。=アナログ方式の授業が良いという声もあるんですけどね。良かったです!
・小テストが難しくてしっかりと勉強しないと点が取れないという点。=きちんと勉強すれば満点が取れる小テストの作成を心がけています。
・難しいことについてはたくさん時間を使うのでうれしいのだが、あまりにも簡単で3分もあればできることを10分~15分も使って時間が少し無駄になっていたので、その分、早く終わるか、新たな作業をしてもらいたい=これは気になっていたことです。オンラインで作業をすることによって様々なことができるのですが,早く作業が終わってしまった人が何か新たな作業を出来ると良いですね。検討します。
・誰かの英作文などにコメントをする時、名前がわかってるせいか誰が誰にコメントをするかが決まってきていたこと。自分もなのでしたくてもしづらい人がいたりしました。匿名だとしやすかったです。=なるほど!システム的に匿名というのは難しいので,申し訳ないのですが・・・。

「英語の諸相II(英語の意味論・語用論)」履修者数51名(回答者数44名)
【授業の体系性】
設問平均5.0(科目別平均4.8,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.8(科目別平均4.6,受講者数平均4.6)

敢えて英語の難解な専門書をテキストに指定し,その内容を解説することを主眼に置いた授業。専門的なことを妥協せず面白くやる授業が理想なので,この授業ではスライドや視聴覚教材もあまり使っていません。評価が低かったのが,「授業を通して新しい知識や理論、考え方が分かるようになりましたか。」(4.7(科目別平均4.5,受講者数別平均4.5)),「課題(発表、レポート、小テスト等)は、勉学を深める上で役立ちましたか。」(4.7(科目別平均4.6,受講者数別平均4.6))。1つ目は非常にショック,専門的なことをやっているので,もう少し評価が高いと思っていましたが・・・。2つ目は改善すべき点ですね。ここ数年Moodleを利用した小テストなどを行おうと計画しているのですが,なかなか実現できていません。致命的なのが「授業の内容は理解できましたか。」(4.5(科目別平均4.5,受講者数別平均4.5))という質問項目の低評価。毎回ハンドアウトを配布しているのですが,もう少しわかりやすいものへ改善する必要があるかもしれませんね。

【自由記述欄】
・生徒に質問していたので、みんなが授業に参加できたと思う。
・居眠りをしてしまった時の注意の仕方がすてきでした。ありがとう先生。=え?どんな注意をしましたっけ?学生が寝るのは自分の教え方が悪いからだと思うようにしているので,「こら,寝るな!」と直接的には注意をしていないはず。
・わかりやすい例え話と上手なイラストでとても楽しい授業でした。今まで知らなかった分野について深く広く理解できた気がします。=絵が下手なのはある意味ネタにしているので,これは皮肉ですね!(笑)
・興味的な講義でした。大澤がほんと少しだけおもしろい。=「少しだけ」・・・。
・テキストは僕にとっては少し難しかったので、単語など(勿論内容も)新しい知識が増えて良かったです。また、授業内で、学生が考える時間があり楽しく授業を受けられました。=良かったです!授業のねらい通りです。
・夏付近はエアコンをつけて欲しい。文字が見えにくいです。=あの教室ができた当初はすごく良かったのですが,エアコンの効き具合やプロジェクタの映り具合が最近最悪です。
・先生のシュールな笑いがツボでした!=え?一般受けする笑いを提供したつもりですが!!!


2012年2月28日火曜日

MoodleMoot 2012

2012年2月22−23日の日程でMoodleMootが三重大学で開催された。日本ムードル協会が設立されて2回目の大会。以下,いくつかの発表の覚え書き。


沼田寛・大塚裕子・椿本弥生・不破祟行.日本語ライティング指導への用語集モジュールの活用.


1年次の学生全員の必修科目「科学技術リテラシ」で理系作文技術を導入教育。2-3年前よりMoodleを活用している。受講生は250名で,全員がお互いのエッセイを閲覧可能。「テーマ選択→設問設定→アウトライン執筆→ドラフト執筆→最終稿提出」のプロセスを可視化した。各段階での教員からの評価も可視化,各プロセスにピア・レスポンス活動を導入した。

具体的には,2011東日本大震災に関する用語集を作成。各学生が解説する用語を自分で選ぶ。解説の見出しを決めたら,問いを設定して文献調査を行い,問いを検証する。調査した結果をもとに,2000字以内の解説文をまとめる。見出し語の定義文,問い(解説視点)の明示と結論の根拠事実の提示を求める。ピア活動においては,解説する用語の選択の是非,設問の適切さ,根拠提示は十分か,問いと結論の対応,出典提示方法の適切さ,などをピア相互間でチェックし合ってもらった。今後の課題として,受講生の見出し語選択の粒度の計量言語学的分析,受講生が執筆した見出し語の相互関連を学生らに見せる,学生らがリンクを発見するようなタスクの設計,ライティング・プロセスの分析(文章更新のデータを自動蓄積する機能が欲しい),受講者から同意をとってのコーパス構築などが考えられる。

質疑応答の時間にも出ていたが,ピア活動においてどのようなガイドラインを用いているかなどに興味を持った。このように「可視化」して作品を共有できるというのはMoodleの利点の1つなので,効果的に使えば面白い実践ができそう。

大西昭夫・大澤真也・中西大輔・有田真理子.小テストを簡単に作るブロックモジュール「e問つく朗」.

広島修道大学の学内向けに開発した問題作成モジュールを無償で一般公開するというもの。Moodleでは小テストを作成する時にちょっとしたコツが必要だが,このブロックを利用すれば直感的な操作で小テストを作成できるようになる。以下のサイトで公開予定です。


横浜市消防局企画課 藤田豊.続・消防本部におけるMoodle活用事例.

去年この発表を聞いた人たちの評価がすばらしかったので,聞きに行った発表。スライドの美しさ,プレゼンの美しさ,実践の美しさ,どれをとっても格別です。一番印象に残ったのは,利用者がMoodleを使っているというのを意識していないという点。eラーニングは好きな人が押し付け気味にやってしまう場合もあるけど,自然と利用者が使いたくなるような仕組みを取り入れるのは重要だ。Maharaの活用も始めるようです!

ちなみにMoodleMoo 2012の概要については以下の3つが便利です。

MoodleMoot 2012の発表資料(ログインが必要)。


その他,いくつか覚えておきたいこと。


・Feedback+(Moodle 2.2対応)を利用すればrubricを利用したライティングの評価ができる。
・バグ等の報告はMoodle Tracker経由で。
・GoogleアカウントでMoodleにログイン可能!?(β版)


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なぜMoodleMootはConferenceじゃないのか。mootの定義をODEで引いてみる。


adj. subject to debate, dispute, or uncertainty.

noun. a regular gathering of people having a common interest


つまり興味を持っている人たちが集まって,いろいろと議論をしましょうという意義があるのだと考えられる。けれども,日本ムードル協会が設立され,Moot自体がもしかするとアカデミックな方向へと舵を取りつつあるのかもしれない。そうなった時に,Mootが今と同じ位の参加人数を集められるのかということは慎重に議論しなければならない。発表内容を見てみると,プラグインなどの開発およびMoodleを利用した実践の2種類に加え,Moodleに興味を持った人を対象にしたワークショップが開講されている。つまり,Moodleに興味を持ったけど使い方がわからない人(ワークショップ),Moodleを使い始めたばかりで授業などでの使い方について知りたい人(実践),Moodleは使いこなせるようになったのでもう少し高度な使い方をしたい人(プラグインなどの開発),の3つの層をターゲットにできる訳だ。そこから考えれば自然な流れとして,Moodleを使って研究をしている人,という層をターゲットにした発表が今後出てくるのかもしれない。が,多種多様のCMSやLMSが存在する中で,Moodleに限定した研究が成功しているか(あるいは成功するか)と言われれば疑問符が付くだろう。


現在MoodleMootで弱い部分は実践を支える理論に関連する研究である。これに関してはMoodleに限定せず幅広くLMS/CMSを対象にした研究が必要になるだろう。個人的な意見としては,MoodleMootに参加する目的は,多種多様な立場から多種多様な発表が行われるからであって,アカデミックな雰囲気を求めているからではない。同じ1つのものを「好き」な人たちが集まって話し合える場というのは貴重なので,この雰囲気を残して欲しい気もする。「学会」という名前に変わった途端,いろいろと大変なので・・・。


ちなみにMoodleの一番のハードルはオープンソースで導入は無料なのに,一定の知識がないとインストールできないということです。このあたりのハードルが取り除かれれば,利用者は爆発的に増加すると思うんだけどなあ。

2012年2月24日金曜日

ウォリック大学引率ほか

ツイッターをやるようになってから,日記を書かなくなってきた今日この頃。ツイッターやらFacebookやらやりだすと,なかなか同時にすべてのことはできません。そう言えばmixiは完全に放置・・・。

それはさておき,2012年も始まりました。春休み期間は自己研修の期間でもあるので,いろいろと飛び回ります。


1月30-31日 佐賀大学・熊本大学視察
2月 5-13日 英国ウォリック大学語学研修引率
2月17-21日 アメリカeLearn学会出張
2月22-23日 三重学会出張


こうやってまとめてみると2月のスケジュールはひどいことに・・・(苦笑)。


ただこういう期間に自分の中にいろいろと蓄積しておかないと前進できないので,頑張っております。自分の備忘録もかねて,イギリスの写真とアメリカの写真をアップロードしておきます。イギリスは毎日氷点下の日々で,到着当日はヒースロー空港のフライトが半分キャンセルされるという過酷な状況でした。そんな中,学生たちは頑張っていましたよ。一点,アメリカの学会はロサンゼルスのロングビーチで開催されたので20度前後の陽気。成田空港にコートを預けておいて正解でした。両者のコントラストが面白いですね。

残す所は,3月の東京出張1回です。飛び回っているだけでは知識にならないので,少しは腰を据えて勉強しようと思います(本当かな?)。

佐賀大学・熊本大学eラーニング推進機構視察

 本学では2012年度より正式にMoodleを全学的に導入することになった。それに伴い,全国の中でも先進的な取り組みを行っている佐賀大学eラーニングスタジオ熊本大学eラーニング推進機構への視察を行った。写真も何枚か撮ったので,こちらから。
 どのような取り組みを行っているかはそれぞれのサイトを参考にしてもらった方が早いが,佐賀大学では教務課,熊本大学では総合情報センターとの関わりが密であるという点が興味深かった。そして両大学に共通するのは職員は基本的に非常勤であることである。
 今回の主な目的は施設を見せていただくということであったが,両大学とも立派な施設を持っているという印象を受けた。eラーニングにおいてはコンテンツが命であるが,このようなコンテンツの開発を行う専門的な部署があるというのは非常にうらやましい環境である。高等教育機関においてはeラーニングは教育と結びつくものなので,システムそのものではなく教育効果の高いコンテンツ開発を行う必要があるのは明らかだ。
 eラーニングを崇拝する必要はないが,上手に取り入れる必要がある。けれどもeラーニング導入における障害は,教職員にコンテンツを開発する能力と時間が無いことであり,この障害が取り除かれない限りは普及が難しいということを痛感した。
 ちなみに夜は熊本大学の教員の方数名とご一緒したが,お互いがeラーニングについて熱く語っていらっしゃったのがとても印象的であった。