2009年3月31日火曜日

学生ピア養成合宿

 2009年3月27日(金)~28日(土曜日)にかけて、広島修道大学学習支援センターの分室として2008年後期に設立されたピアカウンターを中心にして、学生ピア養成合宿(研修会)が開催された。これは全国的に広まりつつあるピア(SAやTAとも異なり仲間として受講生に接する立場)活用の試みで、2009年度から実際に授業に参加し下級生に接するピアたちを対象にした研修会として1泊2日で行われた。

今回の研修のねらいと達成目標は以下の3点。

1)下級生に対するとき必要な対人コミュニケーションのあり方を研修する
2)グループワークにおけるリーダーシップの取り方を研修する
3)教材実習を通じて初年次授業のねらいや授業内容を理解し、自信をつける

1日目:ピアの形成、2日目:学習内容の理解というテーマで行われた。ちなみに1日目のスケジュールは以下のとおり。

14:00~14:30 「学生ピアとピアカウンター」、「1年生のクラスで注意したいこと」
14:45~15:45 「対人関係の築き方」
16:00~17:30 「仲間を知ろう」、「マナー研修」
19:30~21:00 「仲間を知ろう」

「対人関係の築き方」では実際に臨床心理士として活動していらっしゃった本学の先生に講演をしていただいた。

 よりよい人間関係のためには理論として、「尊敬」、「共感」、「理性的」、「主張的」というキーワードが必要。それを元に実践として、1)傾聴すること、2)勇気づけの3原則、3)「私」メッセージを使う、4)感謝の言葉を伝える、が重要であるという話であった。1)、3)、4)に関してはよく聞くことであるし、3)のように"I"つまり「私」を使ったメッセージを使うと命令口調になりにくいなどは聞いたことがある話だった。けれども2)の勇気づけの原則は興味深かった。それは「叱らない」、「ほめない」、「励まさない」ということである。単純に考えれば勇気づけるために逆の行為を行ってしまいそうなのだけれど、臨床心理学の立場から言えばそれらの3つはタブーなのだと言う。教育現場では単純に応用できないかもしれないけれど、非常に考えさせられる話であった。

 よく企業などで研修と称した合宿を行い、一種の宗教的団結力を培う場合があるけれど、正直こういった試みには懐疑的であった。けれども今回参加してみて、時間が経過するにつれぐんぐんと成長し、些細なことにも「有難う」ということばを素直に言えるようになっていく学生たちを見て、多くのことを学ぶことができた。ピアだの何だのというけれども、何よりもそういう学生が成長する場面に居合わせることができたことに幸せを感じた2日間であった。

2009年3月27日金曜日

公共機関って何ぞや?

 4月1日の年度始めを前に,バスの時刻表の改変が行なわれた。私が通勤に使っているバスの便数は。。。激減。行きのバスなんか,始発に乗り遅れたら乗り継いで大学まで来なきゃいけない!今まで大学から帰る便の最終は午後8時前だったのに,何と今後は午後6時20分台になる!それを過ぎてしまうと,乗り継ぎで帰らないといけない。おそらくこの4月からも土,日出勤は多いはずだけど,な,なんと土,日はバス無し!!!

 うむ,これは仕事をするな,という神のお告げだな,なんて呑気なことも言えず。公共機関でしょうよ,公の乗り物でしょうよ。時刻表改変の理由はありきたりの「利用者の少ない時間帯の便数は減らし。。。」って何人以下が少なくて,何人以上が多いのよ?ぎゅうぎゅうにお客を詰め込んで,みんな不快な思いをしている乗客を載せて走っているバス路線が健全で,ゆったりと座って読書なんかしている乗客が多い路線は不健全だと??うちの大学を経由する路線の中には売り上げに大幅に貢献しているものもあるのだから,少し位学生のことも(もちろん私のことも)考えて,不採算路線に優しくしてほしい。

 ということでこの4月1日からの私の行動
1)「いやー,バスが無いんですよー」と仕事を断りまくる。
2)借金を抱えて,もう少し通勤が便利な場所に引っ越す。
3)バス会社に優しく抗議する。
4)チャリ通勤

さ,どれにしよう。

2009年3月26日木曜日

広島市立大学の英語教育改革-「訓練科目」としての「CALL英語集中」と「指導科目」としての「英語応用演習」- 

2009年3月25日に本学において第3回初年次教育セミナー が行われた。

 講師は広島市立大学の青木信之、渡辺智恵両先生。講演題目は「広島市立大学の英語教育改革-「訓練科目」としての「CALL英語集中」と「指導科目」としての「英語応用演習」-」であった。広島市立大学では2003年に文部科学省のGPの補助金を獲得し、オンライン英語システムおよびカリキュラムの開発に力を注いできた。GPを獲得した時点でも本学にお招きし講演をしていただいたのだが、今回はいわゆるそのフォローアップという形。

 まずは青木先生が指摘する大学英語教育における3つの根幹的問題として,1)学習時間の絶対的不足、2)集中的な学習の不足、3)実践的に英語を使う機会の不足の3点を挙げた。

 それを元にコンピュータを用いた学習を導入し(400名もの履修者のクラスを一人の教員が担当)、その余力で少人数教育を実現した。具体的には2年間のカリキュラムで、

1年次:
TOEIC 前期:CALL英語集中・英語応用演習I,TOEIC、後期:II、TOEIC
2年次
III, IV

という形で2つの授業科目をペアにして実施し,前期末,後期末のTOEICの受験で点数の伸びを測定する。

 外国語学習はスポーツ・楽器の習得とほぼ同じと考える。訓練をコンピュータで行い集中的かつ大量の学習を行わせると同時に、指導科目において実践的に英語を使用させる。少人数クラスである「英語応用演習」では、15名程度でスピーキングとライティングをALL in ENGLISHで行う。そしてCALL英語集中は完全自習、初、中、上級に分け、能力別のクラス編成。2週間ごとに消化期限を設け駆け込みの学習を防止する。評価は消化率とTOEICの伸び率で行う。

伸び得点はTOEIC伸び(事後スコア-事前スコア)÷伸び余地(990-事前スコア)×100の計算式。

 約1時間の講演後、30分間の質疑応答を行ったが、熱のこもった講演にふさわしく、時間が不足するほど多くの熱のこもった質疑応答が行われた。

個人的な感想:
 e ラーニングを利用するメリットはその余力で少人数教育を実現できる所である。そういう意味でこのような「訓練科目」と「指導科目」の両輪を用いて英語教育を推進しようという考えは間違っていないし、今後の主流になるのではないかと思われる。最近eラーニング関連の研修会などに参加させていただいて思うのは、「eラーニングはあくまでもツールであり、適切な目的で適切な場面で用いなければいけない」ということ。eラーニングだから何でもできるのではなくて、eラーニングだからできることとできないことがあるのである。このような流れは非常に健全なものだと思う。その一方でいくつかの疑問も残った。今回の講演ではオフレコでTOEICの点数の伸び率なども見せていただが、どうも上級者にはeラーニングの効果が見られるが、下位者にはあまり見られないということである。それに関していくつかの説明もされていた(例えばeラーニングを行う際の集中力の欠如など)が、何よりもやはり下位者には昔ながらの手取り足取りの指導のほうが好ましいのではないかと感じる。自分ひとりできちんと勉強できれば学力の差なんか生まれないわけで、今後は全学統一のプログラムということを謳うよりも、レベルに応じたプログラムを考えていく必要があるのではないだろうか。それと今回の講演ではTOEICの伸び=訓練科目の成果と結び付けられているような印象を受けたが、2つの授業科目を実施しているのだから、指導科目における相乗効果もあるだろう。そう考えたときに指導科目ではスピーキングとライティングしか行わないのではなく、その他の技能も教えるとより効果が高まるのではないだろうか。

 何はともあれeラーニングを用いた先進的な取り組みから学ぶことが数多くある。今後は1)カリキュラムの中でのeラーニングの位置づけ、2)eラーニングで用いるコンテンツの開発、などを考えていく必要があるように思う。

2009年3月24日火曜日

終わりそして始まり

 3月20日卒業式。今年はゼミ生を持っていないので,直接指導した卒業生はいないのだけれど,着飾った学生たちを見ていると何だか感慨深いものがありますね。4年間をかけて成長していく若者たちを見ることができるのは,まさに教員冥利に尽きます。と感慨にばかり浸ってはおれず,始まりがくるわけで,明日から在学生が成績発表やら何やらで大学に戻ってき始め,新年度への準備が一気に加速します。カレンダーを見たり予定を立てていて「4月」という文字が目に入ってくると,この春休みに何も出来ていない自分を責めたくなったりして。
 そう言う時に限って学期中はひかない風邪をまとめてひいて,頭痛,関節痛,喉痛,胃もたれという全身総攻撃をくらってダウンして,やらなければいけない仕事が遅々として進まず。

2009年3月19日木曜日

1月は・・・

 1月は「行く」,2月は「逃げる」,「3月」は「猿」!!うきっ!

そういう駄洒落を言いたくなる今年度。大学教員の1年を語呂合わせで考えてみるとどうなるんだろうと,ふと思いつきでまとめてみる。

 4月「にかけ」
   年度始めで何もかもがドタバタ。
 5月「ールデンウィーク休憩」
   教員も小休止,学生も小休止。成立しかけた授業が崩壊する。
 6月「ろくでもない」
   あんまりイベントは無いが,その分お仕事満載。
 7月「転八倒」
   オープンキャンパスあり,学期末試験あり,の盛り沢山。
 8月「しご」
   教育関連の学会シーズン到来。1~2週間出張祭り。大学もお休みだったりするので,いろいろはしご。
 9月「悩」
   夏休みボケからのリハビリ。
10月「んでもない」
   いわゆる秋の入試シーズン。秋なのでなぜかみんな頑張る。会議だらけ。
11月「遠い年明け」
   秋の入試シーズン及び第2の学会シーズン。年明けが待ち遠しい。
12月「師走でごわす」
   だじゃれでも言いたくなる月。授業のまとめ,卒業研究など。クリスマスイブ?その日が授業日になってからというものそんなイベントは心の中から抹消した。
 1月「きおい勝負」
   学期末試験。風邪なんてひいて勢いに乗り遅れたら,とんでもないことに。
 2月「げたい」
   春の入試シーズン。逃げたい。でも受験生よ,逃げてはいけない。
 3月「る」
   学生が去る,年度も去る。でもやらなきゃいけない仕事は去ってくれない。

大学で教員を始めてからというものの,「お休み」(=実質のお休み+研究に費やす時間)が確実に減っているなぁ。

2009年3月18日水曜日

卒業生来学

 2002年に入学し,卒業した学生が研究室に遊びに来てくれた。どうやら同級生が結婚するようで,結婚する彼女にメッセージを書いてほしいとのこと。ママになっていたのは知っていたし,娘の写真も年賀状で見てはいたのだけれど,今回は生娘(なま・むすめ)と一緒に来てくれた。7ヶ月(?だったっけ)で小さくてとっても可愛い赤ちゃんでした。
 2002年。僕が大学で勤め始めた年。妙に張り切り妙にハイテンションで,そういう初な所を学生からも見抜かれ,その分学生からも可愛がってもらい。。。カラオケもまだ何とかお互いの時代が重なっている部分があったし,勝手ながら少し歳の離れた先輩,後輩という感覚で接していた時代。たくさんの学生が研究室を訪れて来たくれたけれど,彼女はその中でも4年間ずっとコンスタントに来てくれた子でした。すごく真面目ですごく優秀ですごく人当たりが良くて,でも僕には何故かぶっきらぼうで(笑)。そういうバランスの取り方をする彼女でした。久々に会って,娘が同級生同士(!)ということもあり子どもの話をしたり近況を話したり,1時間ほど話した後,「○○部の○○さんに挨拶に行きたい」という彼女。一緒にいろいろな部局を回り,人当たりよく笑顔で挨拶をしている彼女を見て何だかとても温かい気分になれました。
 2002年。僕にとって遅ればせながらの社会人1年生スタートの年。その年に偶然うちの大学に入って来た学生たち。しばらく音沙汰はなかったのだけれど,なぜか今年度は大学の英語セミナーのチケット手配をしてくれた旅行会社の人が2002年入学組だったり,廊下でばったり出くわした子が2002年組の証券会社キャリアウーマンだったり,と不思議な縁がありました。そういう嬉しい縁が来年度もあると良いなぁ。
 万が一このブログを見ている卒業生がいたら,懐かしがって僕にメールをするように!

2009年3月3日火曜日

広島工業大学moodle研修会

 3月9日(月曜日)広島工業大学で行なわれた教職員向けの研修会に参加した。広島工業大学でmoodleの利用を促進していこうということなのだろうけれど,学外者である私たちも快く受け入れて頂いたことに感謝。内容は,

〈第1部〉 入門編
13:40~14:40         LMS導入の意義、Moodleの特性等(携帯電話の利用等含む)。
〈第2部〉 応用編
14:50~16:20         Moodleのコンテンツ開発(オンラインドリル等)、授業設計・運営への活用方法、国内外の優れた導入事例等。

ということだったのだけれど,大学側が参加者ごとにmoodleを用意してくれていたようで,第1部にトークを集中し,第2部は実際にmoodleを利用してハンズオン的な形で様々な機能について学習していくという形であった。講師は柳沼 良知先生(独立行政法人 メディア教育開発センター 准教授),葉田 善章先生(独立行政法人 メディア教育開発センター 准教授)のお二人。

ネット上で公開されている教育用コンテンツなど。

NIMEglad (大学等が配信している教育用コンテンツを検索できる)
The Open University , UK(イギリスの通信教育用コンテンツ)
オンライン学習大学ネットワーク (moodleを用いた教育用コンテンツ)
MIT OpenCourseWare (MITが提供する教育用コンテンツ)

また金城学院大学,三重大学などではmoodleを積極的に利用している。
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いろいろな情報が入手できて良かった。moodleを使いたいと思いつつ実際に触ったことが無かったので,実際に触らせてもらえたのが嬉しい。感想としては用語(ブロックやラベルなど)に多少癖があるけれど(あと日本語訳にも慣れが必要かな),あれだけの操作でいろんなことが出来るのは,しかも無料で出来るのは素晴らしい。うちの大学でも積極的に導入してくれたらなぁ,と思った一日だった。

第14回FDフォーラム(大学コンソーシアム京都)

 京都の大学が連合を組んで開催するフォーラム。今回は第14回目で「学生が身につけるべき力とは何かー個性ある学士課程教育の創造ー」というテーマで龍谷大学において2月28日~3月1日の2日間行なわれた。参加者は100名!!!2月28日には別のワークショップに参加したので第2日目についての簡潔なまとめ。
 2日目は8つの分科会及び4つのミニ・シンポジウムが開催された。参加したのは第4ミニ・シンポジウム「大学教育におけるeラーニングシステムの可能性」午前10時から2時間各担当者からの発表,午後1時から2時間質疑応答が行なわれた。

その1)京都産業大学情報センター坪内氏
 京都産業大学情報センター職員さんのお話。京都産業大学が代表校となって進める「戦略的連携支援事業」での取り組みの紹介。

2004年 LMS (Learning Management System)としてmoodleの採用決定
2005年 moodle利用開始

2009年1月時点で利用教員数275名(28.7%),利用科目数597科目(11.7%),利用学生数11,012名(87.8%)に達した。活用実態としては資料提供や教材が約半数(50.1),その他はフォーラム(16.5),課題(15.7),小テスト(14.6)などであった。
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その後は大学間連携のためのシステム構築の話。印象的だったのは情報センターが全ての科目及び履修者を登録し,「ご自由に使用してください」と教員に投げかけたこと。単に説明会を開催し,教員の自主的な参画を促すだけではない部局の積極的かかわりが素晴らしい。

その2)佐賀大学穗屋下茂氏
 リメディアル教材としてのeラーニング教材の可能性,コンテンツの欠如の問題,コンテンツ及び成績の管理をmoodleを用いて行なうという3点が印象に残った。またこのような試みは制度作りが重要であることを思い知らされる。佐賀大学では教務課の下にe-learningワーキンググループ,そしてその下にSE, creator, mentor(TAや学生バイと)総計約30名のスタッフを配置し,教員以外のサポートを強化している。原則として授業はブレンディッドとし,ネットと対面授業を1セットとして捉える。
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とにかくGPなどの学外資金を取り続けて潤沢な資金の基でeラーニングを推進している印象。大学のホームページのここ なんかを見れば現状を少し垣間見ることができるかも。

その3)日本福祉大学副学長加藤幸雄氏
 eラーニングを用いて地域の枠をこえたコンソーシアムを形成する取り組み。
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個人的な興味から少し外れた話ではあったのだけれど,とても情熱的な話をされる方であった。教育に対する熱い情熱を持っていらっしゃるようで,「生きた化石(?という言葉だったかな)」みたいな教員はダメだという話をされていたのが印象的。おそらく通信教育部 でeラーニングを活用していらっしゃると言うことだと思うのだけど(詳細は知りません)。


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 どの発表にも共通しているのは1)eラーニングは万能ではない(=ブレンディッドが理想的),2)コンテンツ作成には潤沢な資金が必要(GPなどの学外資金獲得の重要性,少なくとも人件費を除いて1コンテンツ(15週の授業)作成に100万円はかかる!!),などなど。潤沢な資金の基で組織を再編成する位の勢いでなければ魅力あるeラーニング環境を作るのは難しいのかもしれない。けれども発表者の方々も言われていたが,いざ学外資金が亡くなった時にはどうやって運営すれば良いのだろうか。学外資金が無いような大学でも魅力有るコンテンツ作りはできないのだろうか。費用対効果ということで考えれば数億円規模の投資をするだけの価値があるのかどうか各大学で意見が分かれる所だろう。そして何よりもキーワードになっていたのがID(Instructional Design)ということからもわかるが,技術は技術であり,それを利用したものを作るためには様々な工夫が必要である。

「学習者コーパスで広がる言語習得分析の可能性」ワークショップ

 2009年2月28日(土曜日)に京都外国語大学で行なわれた応用コーパス言語学研究会 第2回ワークショップに参加した。講師は「日本人1200人の英語スピーキングコーパス」著書の一人である独立行政法人情報通信研究機構(NICT)言語基盤グループの一員である和泉絵美氏。著名人ということもあり,定員40名はすぐに一杯になり,遠くは沖縄から関東に至るまで全国各地から参加者が集まった。午後1時からの開催であったが,迷って到着した時には12時58分(焦)。座った席の前には大学時代のサークルの先輩であり同業者である広島の大学の先生方がいて,偶然に驚く(笑)。
 4時間という長時間のワークショップはPart 1学習者コーパスの応用可能性,Part 2学習者コーパスにおけるアノテーション,Part 3「ネタの宝庫」学習者コーパス,という構成で行なわれた。以下それぞれのパートごとに簡潔なまとめを。

Part 1学習者コーパスの応用可能性
 英語教育への応用としては1)学習者言語の記述,2)学習者支援教材/システムの開発(LDOCE, CALDなど学習者用辞書,CUPの教材など,NICTではNICT’s Edenと呼ばれるerror detectionシステムを開発中であり,NICTのコーパスを使ったMicrosoft ESL Assistant などもある),3)学習者による直接参照(これに関してはあまり事例無し)が考えられる。
 その中の1)に関してはContrastive Interlanguage Analysis (CIA),Computer-aided Error Analysis (CEA)がある。CIAでは英語母語話者との比較あるいは非母語話者同士の比較などで,学習者の高頻度使用語彙,モダリティ,コロケーション/連語など,その他あらゆる個別の言語項目をトピックとする(文献リスト)。CEAはまだ数が少ないが,多くは文法,語彙レベルで行なわれている。

Part 2学習者コーパスにおけるあのテーション
 NICT JLE Corpus Analysis Took, TagEditor, Antconcなどを利用して実際にアノテーションをしてみる。error annotationとしては母語話者による訂正文の付与,母語話者によるコメントの付与,母語話者による評価の付与,エラーの分類及びタグ化,などがある。エラータグ付与補助ツールとして紹介されたのはUniversite Catholique de Louvain Error Editor (UCLEE)やNICTが開発したTagEditor,University of Jaenが開発中のものなど。

Part 3「ネタの宝庫」学習者コーパス
 この辺りは駆け足だったのだけれど,Antconcなどを利用した分析についての紹介。
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 具体的な言葉は忘れたけれど,和泉氏が言っていたように商業ベースなのは強い。豊富な(?)資金力及び組織としての力を感じさせるワークショップだった。情報収集力もさすがなもので,開発中のものも含め世界における学習者コーパス関連の情報を得ることができただけでも有意義なワークショップだったと思う。ただ,大規模な学習者コーパスにどのようにエラーのタグを付けるかについては参加者の中からも質問があったように今後改善の余地があるようだ。どこまで主観/客観を分けることができるのか,また自動化/マニュアルの使い分けをどうすれば良いのか,などなど。これは和泉氏というよりも,学習者コーパスにおけるエラーというテーマにかかわるものではあるのだけれど。。。