2012年9月14日金曜日

2012年度前期授業アンケート

 前期末に行った授業アンケートの集計結果が返ってきたので,まとめておきます。設問は各5点満点(A=5,B=4,C=3,D=1の加重平均)。

ちなみに質問項目は2分類に分かれており,以下の通り。
【授業の体系性】
1.授業内容は授業計画と一致していましたか。
2.授業のねらいや学習目標は明解でしたか。                            
3.授業時間や授業回数はきちんと守られていましたか。            
【教授方法・講義内容】
1.教員の話し方や声の大きさは適切でしたか。    
2.教員は学生の質問などに適切に対応していましたか。    
3.学生の反応や理解度をみながら授業が進められていましたか。
4.学習に対する興味・関心を刺激する授業でしたか。            
5.授業の内容は理解できましたか。                                    
6.授業を通して新しい知識や理論、考え方が分かるようになりましたか。
7.教員は私語など受講マナー上の問題に対して適切に対処していましたか。
8.教材(テキスト、プリント、レジュメ、スライド、ビデオ等)は、授業内容を理解する上で役立ちましたか
9.黒板・ホワイトボード・プロジェクタ等の使用は適切でしたか。
10.課題(発表、レポート、小テスト等)は、勉学を深める上で役立ちましたか。

「Reading & Writing I」履修者数29名(回答者数26名)
【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.7,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.9(科目別平均4.5,受講者数平均4.7)

授業内でMoodleを利用した活動をメインに行っている授業。すべての項目において高評価をいただきました。改善しなければいけないのは【教授方法・講義内容】の分類にある「授業を通して新しい知識や理論,考え方が分かるようになりましたか。」という項目(4.7(科目別平均4.4,受講者数別平均4.5))。Moodleを利用して書いたり読んだりする作業が多いため,あえて簡単なテキストを選んでいるのですが,それを物足りなく思う受講生がいるということでしょう。

今回気になったのは【学習態度の自己評価】にある「この授業科目について,授業の前後に合計してどれくらい勉強しましたか?」という項目。

3時間以上: 19.2%(科目別構成比11.5, 受講者数別構成比14.2)
2~3時間以内: 11.5%(科目別構成比7.5, 受講者数別構成比9.1)
1~2時間以内: 7.7%(科目別構成比12.2 受講者数別構成比19.0)
30~1時間以内: 26.9%(科目別構成比17.5, 受講者数別構成比22.1)
30分以内: 30.8%(科目別構成比24.4, 受講者数別構成比21.3)
全く勉強していない: 3.8%(科目別構成比26.7, 受講者数別構成比14.1)

予復習が毎回30分以内で終わってしまっている人が1/3いるというのは問題だろうと思います。

【自由記述欄】
・「とにかく楽しいし、分かりやすく説明してくれる。」
・「15回おつかれさまでした!先生の授業すごいたのしかったです。(*^^*) 後期もよろしくおねがいします☆ あと、先生が最初のころ言ってたTOIECの点数もがんばりたいです!」=期待しています!
・「先生がパワーポイントなどを使って文法を説明してくれたのはとてもわかりやすくて、よかったです。英語の童話の中で、一番読みやすい(簡単な)のはどれですか。」=読みやすいというと難しいのですが,自分の好きなものから始めると良いですよ。著作権の切れているものは無料でGutenberg Projectから入手できます!グリム童話なんかも面白いですしね。
・「他の人と英語でコミュニケーションをとったりすることができて良かったです。」
・「先生が非常に面白い。もう1年履習したいくらい、先生と話しやすい」=え?単に落と
せば良かったってこと?(笑)このコメントを書いたのが誰だかはわからないのでご心配なく。
・「寒い」=!!え?僕のギャグではなく教室内の温度であることを切に願います。

「英語研究III」履修者数58名(回答者数54名)
【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.7,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.8(科目別平均4.5,受講者数平均4.5)

今年度は新たな試みとして,授業で扱った内容に関する意見をMoodle上のフォーラムに書き込んでもらうということをやりました。毎回やった訳ではありませんが,多くの受講生が参加してくれました。今後もう少し発展させて授業内・外の連携を円滑なものにしていきたいです。

概ね高評価をいただいたのですが,【教授方法・講義内容】の所で,「学習の内容は理解できましたか。」が4.6(科目別平均4.4,受講者数別平均4.4),「授業を通して新しい知識や理論,考え方が分かるようになりましたか。」が4.7(科目別平均4.4,受講者数別平均4.4)であるということ。講義科目でいろいろと新しい知見を紹介しているつもりですが,あまり反応は芳しくないようなので改善します。

【自由記述欄】
・「この授業の雰囲気が、みんな授業に参加しているんだということが分かって良かったです。この授業は、いつも終わるのが早く感じるくらい好きな授業でした。」=良かったです。つまらなく感じると90分間は苦痛ですからね。
・「ただきくだけの講義とは違って、授業に積極的になれたので、楽しかったです。」
・「パワーポイントがとても分かりやすかった。授業で提示されたパワーポイントや資料がムードル上で見れるので、復習がしやすかったです。」=Moodle上での予復習を促す目的もあったので,良かったです。
・「先生の絵とだじゃれのセンス」=!!!
・「スライドが多いので、ノートをとる部分がたまにわかりませんでした。」=このようなコメントは去年もありました。気をつけます。
・「今まで受けた事のないような内容で毎回授業で学ぶこと全てが新鮮で楽しかったです。普段何気なく使っている言葉や文法をつきつめて勉強していくと奥が深くとても身になったと思います。今回初めて大澤先生の講義を受けたのですが、受けて良かったと思いました。これでテストが難しすぎなければなお良いのですが…。」=ありがとうございます!テストはどうでしたか?
・「先生の授業は、自分が大学に入って唯一興味を持てた授業なんです。(後期の語用論も)色々みんなが楽しめるように工夫してくれているのがすごく伝わります。」=ありがとうございます!
・「先生のパワーポイントはいつもわかりやすく、おしゃれで、私もいつかこんな風にパワーポイントを使って話せるようになりたいな。と毎回思っていました。」=これは嬉しいなあ。でもほんとはパワーポイントを使いたくない(笑)。
・「分かりやすかったけれど、あとで振り返ってみると何やったかあまり覚えていない し、内容が深いけど覚えていない。テストが、どうなるか不安です。」=この科目では広く浅くいろんなテーマについて話をするので難しいかもしれませんね。来年度以降の課題にします。
・「修道大学に入学してから2年が経ちましたが、この2年間で、1番楽しい授業でした!!楽しいというか、勉強している授業をまじめに受けている感覚を取り戻せました。」=良かったです!特に「勉強をしている」感覚を味わえてもらったというのは嬉しい一言ですね。
・「後期の授業を先にとってしまっていたので、昨年こっちから先にとっとけばよかったなと少し思いました。先生のトークもすべりながらでしたが相変わらず面白かったです!」=!!!(涙)

「英語科教育法II」履修者数24名(回答者数23名)
【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.8,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】
設問平均4.8(科目別平均4.6,受講者数平均4.7)

指導上の問題や評価について概説したあと,受講者によるミニ模擬授業を中心に進める授業。昨年度までは模擬授業に対するフィードバックを紙で提出させて共有していましたが,今年度からはMoodleのフォーラムでフィードバックを共有しました。

概ね高評価をいただきました。「授業の内容は理解できましたか。」は4.6(科目別平均4.5,受講者数別平均4.5)なので改善が必要。来年度以降,授業で扱う内容や進行方法を改善しようと思っています。

【自由記述欄】
・「今回生徒が考えた授業が中心となっている授業を初めて授けさせてもらってお互いから学び合いながらクラスとして成長できる授業でした。」
・「教職で必要な英語力がどこまで必要なのかが分かったところ。」=教職課程履修者ということで他科目より厳しくしています。
・「英語を教える上で大切なこと、気をつけなくてはならないことが何なのか学ぶことができた。他の人の模擬授業を見ることで、良い点・悪い点など多く学べた。」
・「moodleを用いる授業はe-learning以来で、戸惑いはあったがみんなの意見を聞けるという点ではかなり重宝した。永久保存版にしてほしい。」=永久保存は無理ですが,記録に残るのは良いですよね。
・「指導案や、授業で使うプリントや、テストを作り、大変だったけど、みんなの感想を聞けて、よかったです。そして、教科書の内容に、感動しました。」
・「関連図書、最近の英語学習に関する動向を適宜教えてくれた所 模擬授業をただやらせるだけでなく、授業後にきちんと授業に関するコメントの発言の場を設けてくれた点。又、コメントもしっかりしてくれたところ。」
・「授業担当に対して全員がコメントをいい合う時間がダラダラしていた。もう少しメリハリを持つよう生徒へ呼びかけてほしい。」=これは僕の授業運営上の問題もあると思います。来年度に修正を加える予定です。
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授業アンケートを実施する際には「できるだけ自由記述欄にコメントを書いてください」とお願いしています。数字だけではわからない所もあるので,今回頂いたコメントを基に後期や来年度の授業において改善を加えていきたいと思います。

2012年9月10日月曜日

第3回Mahara Open Forum


 第3会Mahara Open Forum(通称MOF)が2012年9月8,9日の日程で熊本大学で開催された。詳細は下記のページにあるのでそちらを参照のこと。


ページ上では,プログラムだけではなく予稿集,発表当日の様子も視聴することができます(過去のものは既にありますが,今回に関しては執筆時<2012 .9.10=".9.10">ではまだアップされていません)。MaharaというのはeポートフォリオシステムでMoodleと同じくオープンソースのシステムです。eポートフォリオシステムとしてはまだ未成熟な感が否めませんが,様々なものをオンライン上にアップロードし簡単にそれらをレイアウトしたページを作成できるのはさすがです。FレックスのページもMaharaを利用して作られています。

2010年度に福井で行われた第1回,札幌で行われた第2回に続き今回は3回目。規模は大きくない(60名程度?)ものの,参加者・発表件数ともに着実に参加者が増えている集まりです。何よりも素晴らしいのは,有志のメンバーが手弁当で予稿集作成や映像の録画などすべて行っていることでしょうか。現在は参加費無料ですが,今後規模が大きくなると運営が難しくなってくるかもしれません。が,できれば無料あるいは格安の参加費のまま継続していってほしいと思います。詳細に関しては上記のページ,あるいは当日のつぶやきのまとめを参照してもらえればわかると思います。当日は私と同僚の中西さんを中心に2件の発表を行いました。

大澤真也,中西大輔(広島修道大学),吉田光宏(Moodle / Mahara パートナー)
Mahara1.2 翻訳作業をとおしてMahara を批判的に検討する

2012年2月に発表者3人で『Maharaでつくるeポートフォリオ入門』という翻訳本を出版しましたが,その中で見えてきた課題やちょっとした裏話を提供させていただきました。完璧に「ネタ」提供に徹したスライド作りをしていたので,会場の雰囲気がどうなるかヒヤヒヤしていましたが,発表中に聴衆の顔を見渡してみると結構笑顔で聞いていただけていたので,そういう意味では一安心でした。

Mahara をMoodle と連携させる
中西大輔,大澤真也(広島修道大学)

こちらは現在中西さんが研究室に構築しているサーバ上で試しているMahara,Moodleの連携について概観し,そこから見えてきた課題を指摘しました。

そして私が個人的に力を入れていたのは以下のパネルディスカッションの企画です。

パネルディスカッション「eポートフォリオとしてのMahara の課題」
コーディネータ:大澤真也(広島修道大学)
パネリスト:青木久美子(放送大学)
藤田豊(横浜市消防局)
隅谷孝洋(広島大学)
中西大輔(広島修道大学)
小村道昭(エミットジャパン)

企画意図は,「Maharaを使い始めたばかりの方,あるいはその他のeポートフォリオシステムを使われている方などをパネリストとしてお招きすることで,Maharaの課題を明らかにし今後につなげていく」とあるように,Mahara初心者を中心にパネリストをお迎えしました。その意図は正直なところ,私自身がMaharaをeポートフォリオとして使っていくことに限界を感じているので,Maharaという土壌ではなくMahara以外のシステムを使ったことのある方々に議論してもらうことで,何か面白い話になるのではないかと思ったからです。別名「Maharaをdisる」が企画意図でした(笑)。

1時間と限られた時間内だったので,事前に課題をパネリストから集約してまとめておきました。またパネリストがそれぞれ発表する形式ではなく,藤田さんに25分程度で話をしてもらい口火を切っていただくことで,できるだけ議論の時間を確保しようと思いました。ねらいは的中し,議論が開始した当初はどうなることかと思いましたが,終わってみればフロアも含めてパネリスト間で様々な意見交換ができたと思います。反省点は司会である私の采配に至らないところがあったため,ディスカッションとしてのまとまりに欠けたところでしょうか。

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今回の実行委員長である久保田先生の「この会は全員がフラットなんです。上下がないんですよ。」,福井県立大学の山川先生の「Maharaが良いということではなく,Maharaという共通の話題を基にしていろいろ考えていく。」ということばに表れているように,一つの教室でみんなが話題提供をする楽しい会です。そしてその話題提供についてみんなで真摯に考えていくというのは素晴らしいことだと思います。ただやはりeポートフォリオとしてはMaharaは使いにくい所もあるしあまり成功例がありません(Fレックスでは積極的に活用されていますが)。Moodleも使いにくくはありますが,苦労するのは教員です。Maharaの場合は苦労するのが学生なので,学生が嫌になってしまえば使ってくれません。そう言う意味では既存のFacebookやtwitterなど使いやすいインターフェイスに慣れている学生が,Maharaを積極的にしかも自主的に使ってくれる動機づけはないとも言えます。

ツールとしてはあそこまで面白いことをあっという間にできるのは魅力的です。少しeラーニング経験のある教職員であれば,Maharaを使いこなすのはそんなに大きな問題ではありません。何が問題かというと90分×15回という限られた時間内で,Maharaという少し難しいツールを学生に使わせると,それ以外のことに時間が割けなくなってしまうという点です。特に私が担当している授業においては,Moodleを使っていたりその他の作業をしていたりする時間が長いので,Maharaの操作説明に時間を割くことができません。

これは前から思っていることですが,Maharaに限定して言えばeポートフォリオとして使う必要はないのかもしれません。教職員が中心になってリソースを提供するためのツールとして使うという発想があっても面白いのではないかと感じました。これについては賛否両論あるでしょうが,今後試験的にやってみたいことです。

さいごに・・・

懇親会も盛り上がり,2次会(私は参加していませんが)では「踊るMaharaジャ!」という関係者にしかわからないフレーズも発明されました(笑)。下手にtwitterやFacebookで写真をアップロードすると,次の日に司会者に突っ込まれます(笑)。twitterでつぶやいただけなのに,議論で取り上げられます(笑)。年齢層を問わずまじめな話からしょうもない話までできるのは,とても幸せなことだなと思った2日間でした。


2012年9月5日水曜日

日本リメディアル教育学会第8回全国大会


 2012年8月27〜29日の日程で日本リメディアル教育学会第8回全国大会が立命館大学衣笠キャンパスで行われた。予想はしていたけれどそれを上回るほどの暑さ,そして京都駅から30分以上もバスに揺られなければ到着しないキャンパスとで疲れ果てた3日間だった。ちょっとした発見は京都のバスでは積極的に高齢者に席を譲ること(その代わり,乗客が目当てのバスを見つけてどんなにバスを追いかけても,運転手は素知らぬ顔をして発車する),そしてホテルのバーは高層階にないことかな。それはさておき・・・。

今回はポスター発表を行ったのだけど,その準備に追われ他の発表を集中して聞くことができなかった。

今回のポスター発表は,

大澤真也・中西大輔・竹井光子 「学生に自信をつけさせる英語教育プログラムの予備的検討(3):英語カリキュラム改善のために」

ということで,2010・11年度,本学の1年次生を対象に行ってきた英検Can-doリストを用いた自信度評価およびTOEIC Bridgeスコアの関連を明らかにし,英語カリキュラムの改善につなげようというもの。なかなか思うような結果は出なかったものの自信度の自己評価とTOEIC Bridgeスコアの間には相関が認められたため,今後のカリキュラム改善へとつなげていきたい。この結果を基に現在進行中なのは英語動画教材作成である。本学と同レベルの大学に無償で公開することを計画しているので,興味関心のある方は是非ご連絡くださいませ。

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ということで今回は発表で手一杯だったので他の発表を聞いた備忘録については省略。「リメディアル」ということばに注目している人は多いけど,いまいち定義の難しいこのことば。どの学力層が多く在籍する大学なのか,またどの分野を重点的に教えるのか,などによって議論の方法が異なってくる。この学会の面白い所は理系・文系を問わず様々な分野の研究者が集まって議論する所だと思うので,今後の活動にも期待したい。

今回気になったのは「キャリア」や「コミュニケーション」ということばが用いられるようになってきたこと。確かに入口から出口を意識した上でリメディアル研究が行われるべきだと思うのだけれど,ちょっと焦点がぼやけてしまう気もする。あとリメディアルというのであれば高校との接続を意識した発表が増えても面白いのではないだろうか。