2010年3月24日水曜日

カナダ視察旅行記

 3月13日(土曜日)~3月18日の日程でカナダのバンクーバーに視察旅行に行った。日記は、視察の部分を除いたもの。前の日記に書いたけど写真もあります。

3月13日(土曜日)
 朝10時過ぎに出て広島空港に向かう。以前は関西空港からバンクーバーへ直行便があったらしいのだけど、今は無い。ということで広島ー羽田、羽田ー成田、成田ーバンクーバーという乗り継ぎをする羽目に。これが現国交相の言う空港のハブ化が必要ということか。国内の主要空港(羽田)に着きながら、国際線に乗り継ぐためにはバスで1時間かけて成田に移動しなければいけないというのはどう考えても非効率的。くたくたになりながら、成田空港から17時40分発のJALでバンクーバーへ。搭乗客が多く空席がほとんど無かったので、それでなくても狭いエコノミーの席ではこれまた疲れた。VIPになりたーい!日付変更線を越えてバンクーバーに到着したのが同じく13日の午前9時。一度終わったはずの13日をまた1から繰り返さなきゃいけない、何だかスゴロクの「振り出しに戻る」状態。今回の視察でお世話になるLyn Bennさんとも空港で無事に再会。ホテルまで送ってもらう。その後は同僚と二人で時差ボケ解消のため無理やりショッピングをしたりしたのだけど、あまりの疲れと眠気でダウン。一度ホテルに戻り休憩した後、改めて出直した。簡単なショッピング、そして夕食は中華系でシーフードのお店へ。新瑞華海鮮酒家(Sun Sui Wah Seafood Restaurant)というお店で、どうやら蟹(Alaska King Crab)が有名らしく、お店を入ると正面にある水槽の中には大きな蟹がたくさん!!お店では蟹を注文すると、料理をする前に足を広げると1メートルはありそうな蟹を生きた状態で持ってきてくれる。お客さんはそれを持って記念撮影をしたりしている。僕たちは二人だったのでバンクーバークラブ(Dungeness Crab)を注文。サイズは小さいんだけど、それでも二人では食べきれない位の大きさだった。メニューには日本語もあり、味も薄味で美味しいのでお勧め。現地の人達も沢山来ていたので有名店なんだと思う。ホテルに戻ったのが夜9時過ぎで10時過ぎには就寝した。

 ちなみに今回ホテルのあるRichmondは中国系の移民が多い街。1997年の香港の中国への返還の際に多くの移民がバンクーバーに来たらしい。実施この辺りでは白人を見かけることの方が少ない。というかこんなに日本料理店が多いとは知らなかった。

3月14日(日曜日)
 夜中の2時にDaylight Savingsによりいきなり1時間時計が前に進む。まあ17時間の時差を乗り越えてきているので1時間位時間が変わったっておまけみたいなものか。今日は明日から視察に行く大学のスタッフLynさんによる観光ツアー。Granville IslandCapilano suspension bridgeに行く。Granville Islandはアーティストがお店を出していたり、道端でパフォーマンスをしていたりして、何だか楽しい。中には日本酒を作っている所もあってびっくり。話を聞くとオーナーは福岡で修行をした人なんだとか。たまたまかどうかは知らないけど、お店にいた人は日本語を喋れました。Capilano suspension bridgeに到着した時はあいにくの雨。とりあえずは一周したんだけど、。。。カナダの自然を手軽に味わうという意味では良いのだろうけれど、天気が災いして疲れてしまった。夜はどこにもでかけずホテル内のレストランで食事、そして就寝。いよいよ明日から視察。

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 という感じで残りは現地視察。朝から晩までずーっと忙しい中付き合ってもらった事に感謝。ほんっとに有意義だったけど,とても疲れた。でもご飯がおいしかったので許す(誰を?)。バンクーバー自体は自然が美しいけれど,街並みが美しいということはなかった(街並みの美しさで言えばやっぱりヨーロッパかな。日本も街並みはあまり美しくない。)。でも素敵な人に囲まれて良い思い出ができた。いつも思う事だけど,「旅=人との出会い」だね。以前就職したばかりの頃,毎年夏に学生の引率でイギリスに行ってたんだけど,その時は必ずその後1週間有給休暇を取ってバックパッカーもどぎなことをしていた。そこでの出会いは忘れられないなぁ。一度アイルランドのユースホステルで出会ったドイツ人二人の男子学生と飲みに行ったことがあって,「写真送るから連絡先教えてー」なんて言われたので,名刺を渡した。そしたら,「???」って目でその名刺をのぞきこんでた。大学教員がユースホステルに泊まってるのが不思議だったんだろな。うーん,今はそんな無茶なことができるだろうか。。。しかし,やっぱり海外旅行は良い!楽しい!最近プライベートで行けてないけど,また行きたいなー。
 ちなみにバンクーバーは移民の多い都市。ロンドンも移民の多い都市で,ロンドン市民のことをLondonerと呼び,誇りに思っている。バンクーバー市民にも同じような表現はあるのか気になったので聞いてみるとVancouveriteという呼称があるらしい。Londonerほど一般的ではないらしいけど。あとはカナダ人を呼ぶ言葉としてCanuckというものもあるらしい。ジーニアスで引くと((通例侮蔑))とあるけど,結構一般的に使われているみたい。
 

2010年3月20日土曜日

I'm back!!!

 3月13日(土曜日)~3月18日(木曜日)の日程で行っていたカナダはバンクーバーの視察から帰ってきた!日付変更線をまたぐので,実際に帰国したのは昨日19日(金曜日)。今回はバンクーバー→成田→羽田→広島空港→広島駅→お家,という成田ー羽田間の移動(バスで約1時間)が入っていたので大変だった。バンクーバー=成田間は約8時間なのに,日本国内についてからお家までも同じぐらいの時間がかかるって,何だか理不尽。昨日家に着いたのが午後11時,結構ちゃんと寝れたので今のところは元気。でも日本語やら英語やら,現在,過去,未来やらいろんなものがごっちゃまぜになって,いまいち思考がきちんと働かない。まあ,今日の卒業式が終われば明日,明後日と連休なので少しリハビリします。
 視察に関する日記はここに,そして視察のまとめについては研究のブログに近いうちにアップします。とりあえずはバンクーバーで撮ってきた写真でもどうぞ。

2010年3月16日火曜日

カナダにおける学習支援の実態その1

 2010年3月13日(土曜日)~18日(木曜日)の日程でカナダのKwantlen Polytechnic Universityへ視察へ行った。今回の目的は本学の学習支援センター設立の際にお世話になったUNBC (University of Northern British Columbia)のLynさんに会いに行くこと。今までの経緯は、2006年度に本学からUNBCへ視察、2007、2008年度には本学にLynさんを招聘しワークショップを開催、そして2009年度は再び本学からの視察という流れだったのだけれど、今回は日程の都合でUNBCは取りやめ現在Lynさんが所属するKwantlen大学のみへの視察となった(University of British Columbiaにも行ったが)。以下、移動などを除いた三日間の視察のまとめ(写真についてはこちらから)。
 Kwantlen大学は近年collegeからuniversityに変わったということで、いろいろな試行錯誤を行っている。学生数は17,000人。Richmond, Surrey, Langley, Cloverdaleの4つのキャンパスを所有している。

<1日目>
 今日の予定はKwantlen大学の4つのキャンパスのうち、3つのキャンパスをめぐること。まず1つ目はRichmondキャンパス。アート系の学生が多く通うキャンパスで、ESL (English as a Second Language)に焦点をおいたサポートを行っている。待ち合わせの時間まで時間があったので、建物内を見て回ったが、非常にコンパクトに全ての施設が集まっている印象。Learning Centreは現在1つの部屋が割り当てられているが、今後図書館の中に移転する計画らしい。大学内の廊下に設置されていたハンドアウト、Study Skills(Success Skillsと呼んでいた)に関するテーマは以下の通り。

Getting the Most from your Reading
Tips of Effective Note-Taking
Tips on Managing Test Anxiety
The 4R Method of Note-Taking
An Introduction to Assertiveness
Tips on Managing Public Speaking Anxiety
Tips on How to Study Effectively
Tips on Time Management
An Introduction to Stress Management
Test-Taking Tips
Tips on Managing Procrastination
Tips on Multiple-Choice & Essay Questions

 これらはCounselling Servicesが提供しているようだが、これはLearning Centreと連携しているのだろうか?(ここについては今後スタッフに確認予定)。どちらにせよ具体的な試験対策から心理的なサポートまで幅広く行っているようだ。

 ここではスタッフのJoanさんから2010年に1月に導入したTUTORTRACというシステムについて説明してもらった。これは学生が勉強に関するサポートが必要な時に、全てオンラインで予約できるというもの。チューター側の予定も全て管理されているので、2週間の期間の間でどのチューターが面談可能かを知ることができ、即座に予約ができる。チューターも出来る限り面談の記録を残すことによって、学生に関する情報を共有している。学生はその他にもmoodleやM drive、resource centreなどのオンラインの情報源を利用している。(どうやら成績などの管理システムとは別のよう)。

<その他に聞いた質問の覚え書き>
Q:学習サポートをする人たちの育成について
A:様々な立場の人がいる。基本的にはマスターレベルの学位を有している人が多い。
Q:ワークショップの参加への促し方
A:特に本学と変わらない様子。ただし5名限定などグループを形成してワークショップを運営している。授業との単位上の連携は特にしていないが、ワークショップではより具体的な内容を扱うよう留意しているらしい。

Surreyキャンパス
 去年の秋(?)から図書館にLearning Centreを移転した。いわゆるLearning Commonsの形式。書籍やPCなど全てが1つの建物内でアクセス出来るためとても便利。ただ1つの裏話としては図書館の中にあることによって学習環境のアクセスは向上するが、以前のようにセンターが独立した形の時に見られた学生のコミュニティー意識はなくなってしまう、とのこと。具体的には今までは1人あるいは複数名のグループでの学習相談の事前予約が多かったのだが,現在はdrop-inと呼ぶいわゆる立ち寄りの形式が多くなったとのことである。このあたりについては現在原因を調査中し改善に務めているらしい。ここでは、たまたま雑談をしている時に話題になったAcademic Boost Campについての話を主に伺った(日程についてはこちらを参照)。これはいわゆる学業不振に陥っている学生を対象にしたもので、LASSI (Learning and Study Strategies Inventory)、CSSS(College Survival and Success Scale)、VARKなど数多くの評価を用いたり、様々なことについて学ぶというもの。各セメスターに1回行うらしい。現在の問題は学生側のコミットメント。例えば先日行ったイベントでは70人が登録したにもかかわらず、約半数しか現れなかったらしい。

<その他に聞いた質問の覚え書き>
Q:ピア学生の育成方法
A:CRLA (College Reading & Learning Association)に基づくトレーニングを実施しているとのこと。実際の本としてMacDonald, R. B. 2000. The Master Tutor: A Guidebook for more effective tutoring. The Cambridge Stratford Study Skills Institute.を紹介してもらった。

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一日目はとにかく忙しい日だった。キャンパスが4つあり、しかもその間に結構な距離(車で30分)があるので大学の教職員にとっても大変だろうなぁと思っていたら、やはりKwantlen大学の人達はそう思っているらしい。夜はDaveとLynさんと共にMad Greek Restaurantに行った。今までギリシャ料理のイメージってあんまり良くなかったけど、ここは美味しかったなぁ。

<2日目>
 2日目はSurreyキャンパスで腰を据えていろんな方からお話を伺った。まず一番目はThe Centre for Academic GrowthのスタッフであるAliceさん。このセンターはいわゆる大学教員(Faculty)への研修を提供する機関である。詳しくはホームページを見てもらえれば分かるけれど、数え切れない位多くの研修機会を提供している。また以前本学でも紹介してもらったISW (Instructional Skills Workshop)は4日間の集中プログラムで数多くの教員が受講している。このワークショップは世界中に広がっているらしい。これらは彼らの昇進や給料につながる訳ではない。話によればCNC (College of New Caledonia)などでは何と研修会の参加を給料に反映させているらしいが、あくまでも例外らしい。理想だけではなく、実際にこのワークショップを受けたという教員に数多く会った(教員のうち約7割は受講している)。日本でも新任教員を中心にこれらのトレーニングを受講することを義務化すれば良いと思う。FDに関しては教員向けの書籍として以下のものを推薦してもらった。

What the Best College Teachers Do?
Enhancing Adult Motivation to Learn
The Skillful Teacher
The Department Chair Primer

その他,日常的な実践としてTeaching Squares(4人組)を作り、お互いのクラスを観察し共有する、などとにかく“share”することが重要だと言われていた。面白いのはEngaged Learning Symposiumなるものを開催していること。このシンポジウムの特徴は、教育実践について教員側だけではなく学生側の発表もあること。日本でもこのような試みは行われていると思うけれど、まだまだ少数派。是非教員と学生が対等の立場で話し合うことのできる学会(あるいはシンポジウム)を日本でも開催できれば良いのではと感じた。高等教育機関の教育ついて考える組織としてISSOTL (International Society for the Scholarship of Teaching and Learning)も紹介していただいた。
 その後、moodleやmaharaの話を聞きたいと思っていたら、学習支援センターのスタッフの一人であるAlissaさんが詳しいということで、話をしてくれた。どうやらガジェットやテクノロジー大好きな人だったらしく、WordPressFLIP(日本でも買えるんだろうか?)の話もしてくれた。Macユーザーらしい、うん、良い人(勝手な思い込み)。カナダのオンライン大学Athabasca UniversityではMaharaのデモも見れるらしい(まだ見つけられてないけど)。
 そしてその後Wayneさんからビジネススクールで採用しているCases Approachについての説明を受けた。教員は題材のみを提供し,それに基づいて学生は調査を行い論理的な分析に基づいて発表をする事を求められる。教員の授業での役割は単にサポートするだけ。このような学生中心の授業は非常に面白いと感じた。そしてその後国際交流のSandraさんとも談笑。日本とのつながりもあるらしく,非常に楽しいお話ができた。

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二日目は一つのキャンパスに腰を据えて深い話ができた。特に大学教員間における教育への意識,そして教育力の向上を目指すためには,きちんとした組織作りが必要だとつくづく感じた。夜はSteaveston Seafood Houseに行った。道中「カナダとアメリカって似たような国?」という所僕の質問から火が着き、夕食の間はずーっと盛り上がっていた。というかカナダ食事がおいしゅうございます。

<3日目>
 視察最終日の午前中はUBC (University of British Columbia)のLearning Centreを視察した。その中のLearning Commonsは学生を主体に運営しているらしい。また日本で言うところの初年次教育の授業もある。この辺りについてはまだリサーチが済んでいないので,また後日まとめてみたい。
 午後はthe old spaghetti factoryで昼食をとり少し休憩。そして夕方から前日Wayneさんから話を聞いたCases Approachに基づいた授業を観察させていただいた。2つのグループがPowerPointを用いてプレゼンテーション。そして最後の短い時間を使って講師が説明というスタイル。文化差はあるとは言え,学生の参加度は素晴らしいものだった。

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夜はLynさんと遅めの夕食。さすがにみんな疲れていたので早めに就寝した。

まとめ
 機中泊2日,現地4泊という何とも忙しい視察ではあったが,非常に実りの多いものであった。何よりもこの視察は今回の成果というよりも数年間かけてLynさんと広島修道大学との関係を緊密にしてきた前センター長をはじめとした人たちの努力の結果である。先方も忙しい中,こちらが忙しくて参ってしまう位,多くの事を経験させていただいた。カナダと日本における学習支援に対する考え方は当然のことながら異なる。だから全てのことをそのまま日本に応用することはできないが,何よりも素晴らしいのはきちんとした組織を作り一貫したマニュアルなどに基づき運営しているということだと思う。
 できるだけ早いうちに3日目の視察についてもまとめたいが,UBCのように学生が自然と集まってくる大学とは異なり,今回視察をしたKwantlen Polytechnic UniversityはPolytechnicということばが入っていることから分かるように,いわゆる工芸学校(日本の辞書の訳に基づくと何だか変だけど)であるということが興味深い。本学と同じように多くの学生が仕事と学業との両立を模索している。また大学での授業が終わるとすぐに仕事に向かってしまうため,大学内におけるコミュニティー作りが重要だという認識があるようだ。この辺りはいわゆる一流大学における学習支援とは異なり,日本の大学とも近く参考になることが多いのではないだろうか。
 あまりにも内容が盛りだくさんで頭を整理するのに時間がかかること,また今回の視察内容に関して5月に報告をするよう求められているので,また後日いろいろと整理したい。

2010年3月12日金曜日

3月の予定

 休暇期間中はもっといろいろなことができるはずなんだけどなぁ。気付いてみたらもう3月も中盤。3月のイベントと言えば,これまでこんな感じ。

3月6日(土曜日)第2回キャンパス学習
 いわゆる秋の入試で合格した人を対象にしたキャンパス学習の2回目。1回目はぎこちなかった子たちも,高校を卒業して見かけ(制服→私服)だけではなく,中身も成長した様子。大学には行ってから勝負です。楽しい学生生活を送るためにも今のうちに勉強で苦労しましょうね。

3月7日(日曜日)後期入試
 本学のとりを取る入試。秋から始まった長ーい入試期間がようやく終わりました。今度は広島修道大学の学生としてキャンパスで会いましょう。

3月10日(水曜日)
 ゼロから企画立案をした講演会が無事終了。懇親会が終わり抜け殻。

3月はやろうとしたことが自分の容量を超えて120。そのうち実際に形になったのは10程度。形にならないお仕事はたくさんしたのだけど,何だか気持ちがとっても焦る。。。まぁ,これが来年度に一気に形になることを願おう。今週末からカナダ出張です。詳細はまた後日!

2010年3月11日木曜日

moodleを利用したeラーニングの可能性

 2010年3月10日(水曜日)午後3時より広島修道大学心理学専攻交流会・人文学部FD研修会として講演会を行った。講師は佐賀大学高等教育開発センター教授穗屋下茂氏。「moodleを利用したeラーニングの可能性」というテーマでお願いしたのだが、まさにeラーニングの可能性を感じさせる講演であった。いつまでかはわからないけれど、http://www.ustream.tv/channel/daihiko で視聴できます。以下覚え書き。
 eラーニングには(1)LMSの機能を対面授業に利用、(2)WBT (Web Based Training):ドリル型、(3)講義コンテンツ:VODフルeラーニング(ネット授業)の3種類があるが、佐賀大学ではアピール度を考えて(3)を採用した。講演ではデモ用のビデオなどを交えてeラーニング教材の作成から、教材を用いた実践まで幅広く紹介していただいた。。。といろいろまとめたいのだけれど、自分たちが企画した講演であったこと、そして司会を担当していたこともあり、ドタバタしてしまい内容を深く理解する余裕が無かったのが残念。
 企画としては成功だったと思う。コンピュータを知らない人には難解な用語がたくさんあり理解が難しかったかもしれないが、eラーニングという流行りのテーマであったためか多くの方に関心を持っていただいた。学内限定にもかかわらず教職員40名以上が参加。ustreamという無料インターネット中継をしたのだが、30名が視聴(実は講演を聞きながら2名の人がインターネット中継を見ていたらしいので、実質28名)。質疑応答の時間では、主に「eラーニングをいかに効果的に教育に用いるか」について活発な議論が行われた。
 佐賀大学では専属のスタッフがおり、コンテンツ作成をしているが、予算が無い大学ではそこまでは無理。まずは基本的で簡単なコンテンツ作成をすることからスタートすると良いのではないだろうか。moodleは可能性を秘めた素晴らしいシステムだが、独特の用語や操作感がある。eラーニングに興味を持ちコンテンツを作成しようと思う気持ちを持っていても、最初の取り掛かりで「あっ、難しいな」と思うと二度とやろうとは思ってくれない。何でも同じだが、最初にどれだけの労力と時間を費やしてeラーニングを学ぼうとする姿勢があるかどうかが重要。なぜなら教員は対面授業をすることには慣れており、eラーニングの可能性と必要性に気づかなければ、わざわざ冒険を犯して(言い換えれば時間を無駄にして)までeラーニングのコンテンツなんか作成しなくても良いからである。
 そのような問題を解決するために,穂屋下先生も言われていたが「コンテンツ作成に対するサポート」と「コンテンツの共有化」がこれからのキーだと思う。穗屋下先生には夜の懇親会までお付き合いいただきました。非常に気さくな方で,このような出会いを契機に,今後横のつながりが広がっていければ大学教育も良くなるのではないかと感じた。
 

2010年3月4日木曜日

2009年度学年末授業アンケート結果

 後期末に行った授業アンケートの集計結果が返ってきた。3科目行ったアンケートの簡単なまとめ。設問は各5点満点(A=5,B=4,C=3,D=1の加重平均)。

「e-learning英語II」履修者数45人(回答者数34人)
設問平均4.7(科目別平均4.6,受講者数平均4.5)

e-learning英語に対する評価の平均点を頂いたという感じ。来年度は違う学科を担当しますが,より良い評価をしてもらえるように頑張ります。一番低かった設問は「学習意欲が増した」で,4.2。これは科目別平均でも4.2なので,科目自体の特徴と言えるかもしれないけど,改善の余地あり。この科目に関しては来年度eラーニングの利用方法も含め改善を行う予定です。

~自由記述欄より~
「アシスタントの方が優しくて質問しやすかった」をはじめ「先生のe-learningでよかった」など肯定的な意見をたくさんいただきました。有り難うございました。「席の周りがうるさかった」「黒板の字が少しみえにくい」などについては気をつけていたつもりですが,改善します。

「英語の諸相II(英語の意味論・語用論)」履修者数34人(回答者数26人)
設問平均4.9(科目別平均4.6,受講者数別平均4.7)

テキストは英語だし内容も難解なのだけれど,予想以上に高評価をいただきました。ただし履修人数が34人というのにも助けられているよね。「教員の声・話し方は聞き取りやすかった」,「黒板や機器等の使用が適切だった」,「質問や発言を促し,それらに充分対応していた」,「学生の反応や理解度をみながら授業が進められていた」は5.0,一番低いものとしては「学習意欲をかき立てられた」で4.7(科目平均4.3,受講者数別平均4.5)。この項目の評価は「e-learning英語」とも共通するし,ここ数年の課題。授業時間なんて限られているので,学生自身が興味を持って授業外で自発的に勉強してくれるような授業を展開したいなぁ。

~自由記述欄より~
「授業のプリントがとてもわかりやすかった」など理解補助プリントを準備した点については多くの学生に評価してもらいました。また授業中に観た映画も高評価でした。しかし,「先生の男レベルが高いこと。」とはどいうこと??男子学生からのコメントのようですが,同性からこのような評価をもらえるのは純粋に嬉しい。春休み期間中も頑張ってレベル上げます,ボスを倒せるぐらいに。

ゼミナールII」履修者数13人(回答者数10人)
設問平均5.0(科目別平均4.6,受講者数別平均4.7)

ほぼ5点をいただきました。その中で低かったのは「講義要項と授業内容が一致していた」4.9,「教材は授業内容の理解に役立った」4.9,「学習意欲をかき立てられた」4.8といった所。講義要項と授業内容は一致しているはずなんですけどねぇ。教材に関してはテキストが難解なこと,そしてゼミ生が準備するハンドアウトが中心なので,理解に苦労する時もあるのかもしれませんね。学習意欲に関してはゼミですからねぇ,もうちょっとかき立てないと,自分。

~自由記述欄より~
「毎回とても楽しかったです」,「生徒主体の授業進行で,分かりやすかったです。質問をしやすい空気づくりができているところ。」はい,それはいつも心がけていることなので評価してもらえてとても嬉しいです。「教材が重い」いや,軽い方だと思うけどなぁ(厚いけど)。「ゼミと就活がかぶったら大変なので少しだけでいいので考慮してくれたら嬉しいです」もちろん考慮はします。でもゼミと就活を両立させるのも大事なスキルですよ,一緒に頑張りましょう!

もうすぐ来年度が始まりますが,来年度もよろしくお願いいたします。

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追記:ネットで話題のtwitter。総理大臣や現職国会議員が情報発信しているのをはじめ,芸能人などもやってます。何と宇宙飛行士の野口さんが宇宙ステーションから発言したりもしています!!!新しい情報発信・検索ツールだと思います。慣れるまで少し時間がかかりますが,試しにやってみると面白いかも。

2010年3月3日水曜日

第19回広島外国語教育研究センター外国語教育研究集会

 2010年3月2日(火曜日)、広島大学にて第19回広島外国語教育研究センター外国語教育研究集会が開催された。広島大学を卒業して早10年以上。記憶は薄れつつあるけれど、久々にいわゆる国立総合大学の雰囲気を感じることができて楽しかった。やっぱり大規模の大学というのは休み期間中であっても活気があって刺激的(対する我が地方私立大学は休みに入ると文字通り閑散とする)。そんなことはともかく覚え書き。

山森光陽(国立教育政策研究所)
「学習支援としての教育評価とポートフォリオ評価の位置づけ」

 ポートフォリオ評価についての概論。以下,その要旨。

学習支援としての教育評価を考えると,

*学習者にとっての評価
学習者自身の個人差に適合的な教育を受けるため、学習者が教育目標を達成するための手がかりとして、後続する学習活動に取り組むため、の評価

*教師にとっての評価
学習者にとって適合的な学習指導を計画し実施するため、指導方法の改善、後続する学習指導をより効果的なものにするため、外部への説明責任を果たすため、の評価

である。評価には、診断的評価、総括的評価などがあるが、形成的評価とは、

「すべての学習者が目標を達成できるようにするために、指導実施途中の学習者の学習状況を把握し、教師の指導方法や学習者自身の学習の進め方を改善するために実施する評価」

である。以上のことを考えると、継時的に学習者の能力の変化をたどることができる、指導と評価の一体化を図る、学習者が「何ができるか」を提示する機会を提供する、学習者に振り返りを促し、自己評価するスキルの育成に寄与する、教師と学習者が学習者の進歩を共有する機会を与えうる、のはポートフォリオ評価である。ポートフォリオ評価に至るまでの流れとして,以下の2つの流れがある。

*教育評価
Lado=discrete point testing,言語要素を個別にテストする必要性
Carroll=コミュニケーションを統括的にとらえる必要性
CEFR=全体的な尺度の必要性

*外国語教育評価
Thorndike=分量的に存在するものは測定できる
Wiggins=学習者が現実場面における問題解決能力持ちうるかを評価する

これらの流れから代替評価(現実場面における問題解決に必要な能力をその場面に即した形で直接的に査定した結果をもとに評価)、パフォーマンスアセスメントが必要と言える。

英語科目においては残念ながら4技能の呪縛から逃れられていない。パフォーマンスアセスメントの成否は、潜在的な能力の様相を記述できるかどうかが重要。ポートフォリオ評価はパフォーマンス評価の発展系であり、継時的複数(一時点単一)のもの。目的的、計画的に学習者に関する資料を蓄積し、あらかじめ定められたルーブリックに基づいて評価を行わなければならない。

ポートフォリオ評価を実施するには目的、何を入れるか、評価における学習者の役割、評価方法と基準を決める、などが必要。実施における壁としては、時間の確保、信頼性・妥当性の確保、などがある。

まとめ
・評価は学習者が首尾よく学習活動を進めるために過くべからざるものである。
・形成的評価の充実が学習支援につながり、そのための方法の1つとしてのポートフォリオ評価
・部分ではなく、全体、単一能力ではなく問題解決能力を評価しようとする動きによるパフォーマンス評価の考え方の重視
・パフォーマンス評価の発展系としてのポートフォリオ評価

Measurement and assessment in education(参考書籍)。
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最近巷に蔓延っているポートフォリオという概念を1から丁寧に説明していただいたという点では非常に有益であった。PowerPointのスライドやたとえ話など,聴衆を楽しませようという心遣いは有り難いのだけど,とっても身内な内容が多く部外者には「???」というものもあった。こういった概論的な話につきまといがちな問題としては,「ではその理論に基づいて具体的にはどうすれば良いの?」ということが見えにくい所。特に外国語教育においてポートフォリを評価をどのように実施すれば良いかについては疑問が残った。というところで次の話に続くのだろうけれど。。。

樗木勇作(愛知淑徳大学)
「全学英語教育におけるマスカスタマイゼイションー愛知淑徳大学の試みー」

 漢字が難しいのだけど「おてき」先生による愛知淑徳大学における試み。大学の内情なども包み隠さず話して下さって面白かった。話を聞いている限りはこれらの試みについて中心になってやっていらっしゃるようで,本学でも導入しようとしているポートフォリオの参考になった。愛知淑徳大学では英語科目においてeラーニングを活用している(10科目中6科目)。そしてASU English.comと称して,ASU Writing(電子掲示板),TOEFL Writing (Criterionを利用したもの)英語学習相談、電子カルテの活用をしている。また到達度を測定するために,TOEIC IP(年5回)、TOEFIL ITP(年2回)を実施している。

 電子ポートフォリオは電子カルテとBlackboardの2つから構成され,電子カルテはFileMakerを利用して作成している。その内容は,TOEICスコア、TOEIC Abilities Measured、英語授業履修履歴、英語学習相談履歴、ASU English.com履歴、基礎からのやり直し英語カルテ(大学院生のサポート4週間)、ALC NetAcadey 2学外アクセス履歴、履修登録案内画面、など。

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広島修道大学でも導入しようとしているeポートフォリオ。その実例としていろいろと紹介していただいたので参考になった。但し,1つ目の講演におけるポートフォリオという概念と2つ目の講演におけるポートフォリオという概念は少し乖離している気もする。ポートフォリオという言葉を用いるのであれば,やはり学生側からの働きかけがもう少し加わらなければいけないのではないだろうか。


全体の感想(研究集会とは関係ないけど)
 年に1回センターとしてこのような研究会を開催し紀要も刊行するというのは素晴らしいことだと思う。地方の私立大学ではどうもそのような勢いがないので,見習わなければいけないなぁ。広島大学で導入している到達目標型教育プログラム(Hiprospects)や現在建築中の学生プラザ棟には興味を引かれた。一度時間がある時に調べなければ。