2008年2月9日土曜日

Moodleの可能性

去る2月7日木曜日神戸大学国際文化学部キャンパスで行われたmoodleのワークショップに参加した。「使ったことが無い人でも理解できる」ワークショップを目指しているだけあって、参加者の半数以上が初心者。全体としては実際に授業で使用している教員がどのようにmoodleを使用しているかを実践報告した上で、eエデュケーション総合研究所の井上氏が、moodleの概要について説明した。

まずは最初に神戸の大学で実際にmoodleを利用した授業をしている大学教員2名による実践報告。神戸海星女子学院大学の山内真理先生による報告は少々分かりにくい部分もあったのだけれど、moodleの可能性を感じさせてくれるものだった。簡潔に見えるmoodleの画面構成でも莫大な労力を払って教員が教材の作成や配列などを考えなければいけないらしい。また先生も言われていた授業ベースと自習ベースの違いは重要だ。授業ベースであればアクセスを制限し、授業内で用いている教材を加工してアップロードすれば良いが、自習ベースの場合はどこからマテリアルを拾ってくるのか。ネット上には沢山のフリー英語学習素材があふれているとは言え、微妙な問題である。

次に神戸大学のティム・グリア先生の実践報告。自身が試行錯誤しながら使い方を学んでいると言っていただけあって、初心者にとって分かりやすい報告であった。自分の授業でも掲示板を使って英語でやり取りさせるという活動を行っているが、そういう活動も含め、教材さえしっかり作れば成績管理はmoodleの方が容易である。


そして最後に井上博樹氏による講演。moodleのバックグラウンドがよく理解できた。まずは欧米で流行し、Blackboardなどに比べれば導入コストが安い(無料)ということで、注目を集めているmoodle。今流行のオープンソースということもあり自由度が高く、拡張機能も多い。英語教育に限っただけでも、教材の掲載や配布に始まり、小テスト、採点、課題提示/回収、成績管理、Podcastなど何でもできる。教材作成ツールとして無料あるいは格安で手に入るOpen OfficeやAudacity, GarageBand, iMovie, Windows Movie Maker, Camtasia, Profcast, Keynoteなどを利用すれば、費用対効果の面から考えても可能性は無限に広がる。

元々教育のバックグラウンド、そして社会構成主義的な考え方も取り入れていることから、教育に活用するメリットは大きい。自分の研究テーマの一つでもあるportfolio的な使い方もできる。それは今までの作品集的な紙のポートフォリオではなく、e-portfolioと呼ぶのだそうだ。ワークショップ参加者の質問から話は脱線し、virtual universityなどの話にもなったが、それはそれで興味深かった。

数年前からmoodleということばを聞いており、興味を持ちつつも実態を把握していなかったのだけれども、今回のワークショップでだいぶ頭が整理できた。ハンズオンセミナー的なものもしてもらったので、教材のアップロードや小テストの作成などを実際に自分でやってみたのだが、文系人間でも即座に理解できるものであった。授業だけではなく、教務などと連携した利用方法もあるらしいので、「一度導入してしまえば」、学生の授業に関する情報の管理は容易になるのではないだろうか。また教員から学生への一方通行ではなく、学生も自分の成績などを参照できるというメリットは大きい。この相互方向性は今後大学教育において必要となってくるはず。

それだけの可能性を秘めているにも関わらず、大規模に導入しているのは国内で数校のみ。また常にmoodleということばを聞くにもかかわらずそこまで広がらないのには理由がある。括弧付きで「一度導入してしまえば」とした点である。つまりmoodle自体は無料なのだが、それを導入するサーバースペース、そしてそれを管理する人間が必要になってくるのだ。実はこのワークショップに参加した後、大学の情報センターに確認をしたのだが、もしやるとすれば自分でサーバーを立てて管理するしかないらしい。もちろん、大学としてmoodleを導入しようという話になれば問題は無いのだが、個人で気軽に利用しようと言う話にはなかなかならない。

何とかなりませんかね、この問題。サーバースペースの問題さえ解決できれば来年度からでもすぐに使いたいものではあるのですが。。。