2010年8月9日月曜日

大阪出張の雑記

全国英語教育学会に参加するために,8月8日(土曜日),9日(日曜日)と大阪に出張した。毎年お盆前に行われる英語教育研究においては最大級の学会で,これが終わるといつも気持ちが一段落する。けれども来年度は8月20日(土曜日),21日(日曜日)に行われるようで,発表をするとなるとせっかくのお盆休みも何だか気が落ち着かないなぁ。しかも場所は山形。日程的には気が乗らないが,未踏の地,行かねば!!!
学会はと言うと最近の流行を反映してか,小学校での英語教育,ツイッターにおける英語表現の研究,ツイッターを利用しながらの発表(!),などなど去年とはだいぶ様変わりしたようだ。1つの時間帯に20個以上の発表,そして昼食時間帯を利用してのランチョン・セミナーなど,真面目に全部聞いていると休む暇が無い(笑)。当たり外れはあったものの,今後の研究の参考になることも多くあったので近いうちにまとめたい。
この学会は今の僕の研究者としてのルーツのような場所。10数年前にはじめて「学会」と呼ばれるものに参加したのがここ,その時はどの発表を聞いても一体何のことだかチンプンカンプンで,毎年違う県で開催されるので勉強をしに行くというより半分旅行気分だった。その後,緊張しながらもはじめて発表したのもここ。その後発表の回数は多くはないものの,今までの発表の多くはこの学会だった。学会に行く度,顔なじみに会え,旧交を温めることができるのもまた楽しい。今回は大学院時代の先生およびその関係者10数名で通天閣近くの串カツ屋さんに行った。あこがれの「二度づけ禁止」初体験!おいしかったー。
ちなみに僕が現在所属している学会。

全国英語教育学会(中国地区英語教育学会)
日本教科教育学会
日本コミュニケーション学会
外国語教育メディア学会
日本リメディアル教育学会

。。。うーん,研究における自分の悩みを反映しているように統一感が無いな。とりあえずは来年,初心に戻ってこの学会で発表してみようかな(と宣言だけしておく)。

追記:8月2,3日,8,9日と連続で出張したけど,この時期の出張は体力的にしんどい。どちらでもその土地でおいしいお酒と料理を嗜んだけど,その分移動時に汗で大量放出。そして汗だくなのに学会会場に行くと強制的に冷やされるという,何だか一度溶けたアイスクリームを無理矢理凍らせるみたいで嫌だ。一度溶けたアイスクリームをまた凍らせたって美味しくないのにね(訳の分からない喩え)。

2010年8月4日水曜日

久々に東京さ行って思ったこと

8月2,3日と久々に関東に出張に行った。夏休みは約1ヶ月半。そのうち出張や宿泊研修などを入れると,おそらく自分の研究のために使える時間はごくわずか。有意義に使わなければ。

1)東京さ人多い。
何でもあってとても刺激的な都市,東京。年に数度行くのには楽しいが,やはり人多すぎ。坂の上から見えた数百人の人が一斉にうようよと横断歩道を渡る光景は夢にまで出てきそう(笑)。

2)東京さ人疲れてる。
いつも思うのはみんな疲れてる。サービス業の人も笑顔が疲れてるし,街行く人も何だか疲れてるし。どこに行ってもこれだけの人がいるとやっぱ疲れるよね。

3)人間ウオッチング楽しい。
ほんっとにいろいろな人がいるので人間ウオッチングはとても楽しい。海外旅行者らしき人も多数見かけたけど,彼(女)らにとってはこれが日本のイメージとして植え付けられるのかなあ.まさに映画Lost in Translationの世界。

4)ジャガー横田案外小さい。
今回の出張のご褒美は品川駅のタクシー乗り場でジャガー横田を見れたこと。テレビで見る印象よりは案外小さいが,やはり顔は恐い(笑)。

5)八天堂っておいしいの?
品川駅でみかけたパン屋さん。三原でも有名なの?品川駅では,ぼちぼち行列ができてたよ。今度行ってみよう。

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と,とりあえず思ったことを断片的に綴っておく。自分が発表をしない学会出張は刺激を受けて「がんばろう!」という気になるので良いのだけれど,思うだけで終わることが多いので要注意。

天才と凡人の違いは発想を行動に移すスピードがあるかどうか。
凡人と凡人以下の人の違いは,そういう発想が持っているかどうか。

とりあえず発想はあるのだけれど,それを数年も寝かせてしまう傾向にある僕は,多分漬け物屋さんが向いている。

そう言えば,今回は卒業生が働いているお店にサプライズで訪問してみようと思っていたのだけれど,行けなかったのがとても残念。こんだけ東京に行って観光を何もしていない僕はだめかなぁ。今度,お台場にでも行くべか?一人でよ。

外国語教育メディア学会50周年記念全国研究大会

201083日(火曜日)~85日(木曜日)の日程で,横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校にてLETの全国大会が開催された。他の学会出張などがあることもあり,今回は8月3日(火曜日)のみ参加。今回の目的は2つで,業者のブースを見て回ること,と脳科学者である茂木健一郎氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所)の講演を聴くということであった。午前中は幾つかの業者のブースを回り,資料をもらったり話をしたり,名刺交換をしたりする。LETはeラーニング系の業者が多く集うので,情報収集をするにはとても良いのだが,ブース巡りをすればするほど資料が膨大になっていくのでちょっと困る(笑)。広島修道大学では2011年度からマイナーチェンジの形で新カリキュラムを始動するので,その意味でとても良い情報収集ができた。

気になったのは,
eラーニング作成ソフトstarQuiz
ポートフォリオ機能を備えたacademic express2

 その後,昼食をはさんで午後は「横浜サイエンスフロンティア高校の授業実践」という企画に参加した。2009年に開校し,2010年度からサイエンスハイスクールに指定されたこと。また著名な科学者が定期的に講演をしたり,生徒が海外研修に行ったりと,非常に刺激的な教育実践をしているようだ。8月3日当日も,ある学生は東大での研修(?だったかな),またある学生はサイエンスハイスクールが集まってのプレゼンテーションの場に参加,など積極的に活動していた模様。こういった高校から優秀な科学者が生まれるのもそう遠くはないかもしれない。
 そして夕方から行われたのが2つの講演。1つは脳科学者,茂木健一郎氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所)による講演「オープンエンドな英語教育に向けて」,もう1つが峯松信明氏(東京大学)による講演「英語発音の物理現象を眺めていて気づくこと」,でその後二人による対談「脳科学者と音声工学者が考える言葉との出会いとその演出」であった。残念ながら新幹線の時間があったので,対談は聞けなかったのだけれど,一流の人たちによる講演はとても面白く刺激的なものであった。

茂木健一郎「オープンエンドな英語教育に向けて」
 はっきり言って有名な人の講演を聞きたいというちょっとしたミーハー心だったのだけれど,聴衆もどうやら同様な考えの人が多いらしく,携帯やらカメラで写真を撮っている人が多かった。
 中学生の頃から英語の読書を行い,またtwitterやブログでも英語でメッセージを発信することの多い氏らしく,要綱も英語で書かれていた。それに基づけば自然言語は本質的にopen-ended(開放性)のものであるということ。言語は創造的なものであり,普通の言語能力を持っている人であれば,たとえ知らない単語があったとしてもだいたいの意味を推測できる。しかし,それにもかかわらず学習指導要領では中学校では900語しか教えないとしており,この主張はおかしいということ。そして脳は行為者が他者と相互作用する状況を認識し,それに対して報酬を与えることによって,functionality(機能性?)が強化されることから,試験の成績や文法の正確さだけにとらわれている日本の英語教育はおかしいということ。また言語の習得には量が必要不可欠であり,脳の記憶はエピソード記憶の蓄積によって語彙を習得していく。このことから考えれば,日本の英語教育で教える語彙数は不足しているということ。であった。

のだが。。。

アメリカ出張帰りで意識がアメリカモードだったのか?いきなり用意してきてスライドとは全く別のことを話し始めた。「英語が得意・不得意ということよりも,日本人と英語圏の人々ではmindsetが違う。日本人みたいに肩書きを気にして名刺交換をしているような文化のままであれば,日本という国は没落してしまう。英語圏では肩書きよりもアイデアが大事。」から始まり,コンピュータがネットにつながっていることを知るや否や「何でもできるじゃん」と言い,やりたい放題の講演をし始めた。また会場に高校生がいることに気づくと,「肩書きばかり気にしているしょうもない大人なんか無視していいからな」といきなり教育者モード。文献の紹介やら,TEDの紹介やらUniversity of the People(なんと学費無料のオンライン大学!!)の話やら,いろんな情報をググりながら講演をしてく様子はある意味斬新というか興味深かった。おそらく横浜サイエンスフロンティア高校の生徒たちに,ネットの情報を上手に操るということを伝えたかったのだろうが,その手の話をするならそちらの専門家の方が良かったかな。脳科学関係の話としては2点。エピソード記憶の積み重ねから意味をマッピングしていく,ということ,そしてcontingency(偶発性)においてうまくいく/いかない経験がドーパミンを誘発するということ。
 講演のタイトルがオープンエンドであったのだけど,茂木氏の話がまさにオープエンドであった。用意してきたであろう莫大な数のスライドをほとんど使わず,そこのキーワードだけを拾って講演を進め,またきちんと内容がまとまるのはさすが。また英語を目的ではなく手段・道具として使っている人らしい講演であった気がする。講演の内容がどうとかいうよりも,非常に刺激的な講演であったし僕が今までこういった学会で聞いた講演の中では聴衆を一番引きつけたものであった。茂木氏も言われていたが,「ものづくり」をしていれば良い時代は終わったのだ。今はアイデアや内容が問われる時代。以前もBBCか何かの特集でこれからはハードではなくソフトの時代だという話があったが,まさにその通りだと思う。今や日本から目新しい物は生み出されない。英語にしてもそうだ。英語の習得自体を目標にしている時点で,英語コンプレックスからは一生抜け出すことができないし,それ以上の広がりも無い。そいういう意味で英語教育を学問として位置づけようとしている試みは評価に値するかもしれないが,広がりが無いのだ。一人の英語教育者として肝に銘じておかなければいけないことだと思う。でも外国語教育メディア学会において行われた講演という性質を考えると,うーん。。。


2010教職員向けイベント「国際社会に通じる英語を,大学は学生に意識付けることができるか」


201082日(月曜日)に東京,青山のこどもの城で行われたciee主催のイベント。実は英語英文学科で試行的に英作文自動添削システムcriterionを導入していることもあって,勉強がてら参加した。

カール・マクガリー(横浜市立大学国際総合科学部教授/プラクティカル・イングリッシュ・センター長)
「横浜市立大学の英語教育とTOEFLについて」

 横浜市立大学では2005年からPractical Englishの単位取得を3年次に進級するための必須条件とした。その条件とはTOEFL-ITP500点以上(TOEFL-PBT500点、TOEFL-CBT173点、TOEFL-iBT61点、公式のTOEIC600点、もしくは英検準1級でも可)である。しかし学習のサポートをあまり行っていなかったために,進級できない可能性のある学生が過半数に及ぶのではないかという危機感が生まれた。そして2007年にPractical English Centerを設立し(12名の常勤,10人の非常勤),英語のみで行う授業へと改革を行った。その結果,現在では18%もの学生が入学時にTOEFL-ITP500点レベルを達成しており,1年次終了時には約60%の学生が点数を達成する。また現在は上位層の学生に対してAdvance Practical Englishという科目を設置して,更なる点数の向上を目指している。
授業実践内容に関してはあまりお聞きする時間がなかったのだけれど,英語試験何点以上を卒業の条件とするという試みは数多くの大学が行い失敗しているだけに,このようにほぼ成功しているのは非常に興味深い。ポイントはカリキュラム改革もあるだろうが,点数の括弧内(TOEIC600点以上も認める)にあるような気がしないでもない。それにしても学部生の数が4000名規模の大学においてここまでできるというのは,やはりすごい。


鈴木利彦(早稲田大学商学学術院准教授)
「英語ライティング授業でのCriterion活用について」
先生自身がライティングのクラスで実践されている報告だったのだけれど,思ったことを簡潔にまとめると,1)やはり自動添削システムだけでは十分ではなく,教員がどのようなフィードバックを与えるかが重要,2)教員/学生がCriterionの使い方を熟知する必要あり,ということであった。もう少し具体的な実践報告が聞けるかと期待していたのだけれど,残念。

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今後同様のイベントを開催されるとのことであるが,教職員が望むのはより具体的な実践報告ではないだろうか。そういった意味で今回のイベントは,時間の制約もあるとは思うが,話を聞くだけで終わってしまい具体的な内容についての議論/検討が行われなかったのが残念。今後に期待したい。