2014年9月20日土曜日

研究会における源泉徴収のしかた

 エントリー的にこちらに書くかどうか迷ったのですが、同じような状況で困っている人がいるかもしれないので書きます。なお記述してある情報はあくまでも私個人がまとめたものですので、実際に行われる場合は自己責任でお願いします(誤り等があれば是非ご指摘ください)。

 大きな学会であれば困ることもないのですが、小さな団体や組織で研究会を行い、謝金等を支払おうととする時に困るのが源泉徴収です。今回私の勤務校で小さな研究会をやることになったのですが、国税庁が発行している「源泉徴収のしかた 平成26年度版」を読んでもいまいちよくわからない。そこでいろいろな人に相談してわかった結果を以下にまとめておきます(あくまでもできるだけ手続きを簡単にするための手順ですので、大きな学会などを開催する際にはあまり参考にならないと思います)。

*記載してある情報は2014年9月20日現在の情報です。

 まず第一に「個人が主催する講演会等の場合には源泉徴収は必要ない」のですが、大小に関わらず運営委員会のようなものがあれば、「人格のない社団・財団」という何だかかっこいい扱いになり、源泉徴収を行う必要が出てきます。その際は代表者が「給与支払事務所等の開設届」(記載例はこちら)を納税地所轄税務署に提出する必要があります(郵送でも可)。研究会開催後でも届出は可能ですが、開催翌月の10日までには税金を納付する必要がありますので、早めの届出が望ましいでしょう。なお、研究会が終わった後もわざわざ廃止にする必要はありません(研究会がある度に事務所として頼られ事務手続きが増えるという負の側面もありそうですが...)。今回は給与等の支払いは行わない(ここがポイント。給与の支払いを行うと少しややこしくなる)ので、念のため届出書の「届出の内容及び理由」欄の「その他」に「給与の支払いは行わない」など記入しておきます。そして税金を支払うための納付書(源泉徴収の納付の際に必要。記載例はこちらを郵送してもらうように依頼しましょう。登録が完了すると整理番号が割り振られます。

 さていよいよ講師に報酬を支払います。その際、講師が必要とする旅費や宿泊費などがあり、その料金を運営側が直接交通機関やホテルに支払えば源泉徴収の対象にはなりません。講演会等の報酬については10.21%の税金(1円未満は切り捨て)がかかります。そのため、報酬が30,000円であれば、

30,000×0.1021=3,063(講師が受け取る金額は26,937円)

で、3,063円の源泉徴収となります。きっちりとした金額を渡したいのであれば、

報酬金額÷0.8979

で計算した金額を報酬とすれば、源泉徴収をした後の金額がすっきりします。たとえば30,000円を渡したい場合には報酬の額を33,411円とし、3,411円を源泉徴収分とし、30,000円を講師にお渡しします。

 なお報酬を受け取る側の確定申告等のことを考えると支払調書(ここから雛形を無料でダウンロードできます)を作成して、講師に渡した方が親切かもしれません(作成方法については「平成25年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」を参照、記載例はこちら)。ちなみに報酬が源泉徴収込みで50,000円を超えてしまうと、税務署にも支払調書を提出しなければならなくなるので、手続きがややこしくなります。また万が一の場合も考えて運営側、報酬を受け取る側双方の記録として領収書も作成しておくと良いと思います。

 あとは忘れずに研究会開催の翌月10日までに納付書を利用して税金を納付すれば終了です。なお、アルバイト学生を雇ってアルバイト代を支払いたい場合には給与となるので、注意が必要です。「平成26年度分源泉徴収税額表「日額表」「丙」欄を確認してください。9,300円未満であれば源泉徴収の必要はありませんが、その他の関連する手続きが面倒くさくなるので、小さな研究会では雇わない方が楽かもしれません。

 以下、まとめです。

  1. できれば個人で研究会を主催する
  2. 講師を丸め込んで、謝金なし、旅費・宿泊費の支給で許してもらう(その際、運営側が交通機関および宿泊先に直接支払うこと)
  3. それがダメで複数人で主催する場合は代表者が「給与支払事務所等の開設届」を所轄の税務署に提出する(その際、納付書をもらうのを忘れずに)
  4. アルバイトを雇わなくて済むのであればその方が手続きは楽
  5. 源泉徴収額を計算し、講師に謝金を手渡す
  6. 研究会開催翌月10日までに源泉徴収分を振り込む

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