2008年11月6日木曜日

JALT Conference 2008 in Tokyo学会発表

 10月31日から11月3日の連休ど真ん中に開催されたJALTの学会に参加した。今回初めて参加した学会ではあるが,英語母語話者を中心とした学会であり,日本国内で開催されたものの非常に国際色豊かな,また日本の学会とは異なったフレンドリーな学会であった。主に研究発表というよりは実践を紹介するものが多い。

今回は同僚とともに“Making the most of the electronic dictionary”という題目で25分間の発表を行った。私が担当したのは,英語を専攻とする大学1年生124名及び1年生を教えている教員19名(日本人教員11名,外国人教員9名)を対象に行った電子辞書に対する意識調査の結果の紹介。学生が知っている機能と利用している機能の間には大きな差が見られ,電子機器としての操作には慣れているものの,語彙習得のための道具としては使いこなせていない実態が明らかになった。またせっかく複数の辞書が搭載されていても,英英辞典や類義語辞典等はあまり使用していないのである。

この結果を基に,同僚が電子辞書を有効に使うための活動案を提示した。好む好まざるにかかわらず多くの学生が電子辞書しか使わない現状においては,このような「使い方」をトレーニングする必要性があるのではないだろうか。

マイナーなトピックにもかかわらず用意していたハンドアウト30部は,2部しか残らないほど盛況であった。

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その他発表で気になったもの。

Grogan, Myles. Can portable applications mean English anywhere?

今やソフトウェアはコンピュータにインストールするのではなく,USBにインストールし持ち運ぶ時代。この発表ではそういったテクノロジーが紹介されていた。

持ち運べるソフトの一覧
http://portableapps.com/
画像加工ソフト
http://www.gimp.org/
フラッシュカードソフト
http://www.mnemosyne-proj.org/

その他エクセルでのクイズの作り方など。発表者は実際に学生にソフトウェアをインストールさせ,授業において活用しているようだが,その効果については触れられなかった。

Tuzi, Frank. & Lynn, Michael. Effective writing and responding online.

オンライン上でコメントのやり取りなどを行えるテクノロジーの紹介。何がeffectiveなのかは不明。

Murray, Jill. Teaching pragmatics for test preparation.

英語において語用論的能力を測定することの必要性。

Taferner, R. H. Peer collaboration in EFL writing.

peer feedbackの有効性をついて事前,事後のアンケート,インタビュー等を基に検証したもの。博士論文の一部らしい。テキストの分析等は今後行うらしいが,方法論は包括的かつ質的なもので興味深かった。

Fukada, Yoshifum. Statistical analyses of imagined communities.

学習者が将来なりたいイメージを明確に持っていれば英語に投資する(invest)時間も増えるという考え。今までの研究においては質的なものが多かったので,本発表においては量的に検討してみようという試み。今回の学会で聞いた中では唯一研究発表らしいもので興味深かったが,「英語の教員になりたいなどの明確なイメージを持っていれば英語学習に投資する時間も増える」という結論は当然と言えば当然。

Barrow, Jack. Electronic dictionaries in interaction.

学習者が英語で対話している際の電子辞書の利用について。発表者本人も言っていたが,元は会話分析をしようと試みたものがあまりうまくいかなかったらしい。このことからやはりタスクの設定は重要だと感じる。実際スピーキング能力についてというよりは,学習者が電子辞書をどのように使うかという所に焦点が移動してしまっており,わかりにくかった。この辺りは聴衆の中からも同様の意見が多数出た。

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