2013年10月11日金曜日

LET関西支部2013年度秋季研究大会

 2013年10月12日(土)に開催された外国語教育メディア学会関西支部2013年度秋季研究大会で実践報告を行いました。発表タイトルは「学習者の自律的な推敲を促す自動添削ツールの検討」ということで、ライティングの授業で用いているCriterionをはじめとしたいわゆるAES (Automated Essay Scoring)のツールとして利用できそうなものを紹介しました。関連文献は数多くありますが、以下いくつかのものを挙げておきます。

追記(2013.10.18):
石井先生の「L2 writingにおける人間の評価を何らかの変数で予測しようとした研究などの論文リスト」も参考になりますね。

関連文献: 
Attali, Y., & Burstein, J. (2006). Automated essay scoring with e-raterⓇ v. 2. The Journal of Technology, Learning, and Assessment, 4(3). [PDF]

Attali, Y., & Powers, D. (2008). A developmental writing scale (Research Report No. ETS RR-08-19). [PDF]

Burstein, J., Chodorow, M., & Leacock, C. (2004). Automated essay evaluation: The criterion online writing service. AI Magazine, 25(3), 27-36. [PDF]

Chodorow, M., & Burstein, J. (2004). Beyond essay length: Evaluating e-raterⓇ’s performance on TOEFLⓇ essays. (TOEFL Research Reports No. 73). [PDF]

Lee, Y., Gentile, C., & Kantor, R. (2008). Analytic scoring of TOEFL CBT essays: Scores from humans and e-raterⓇ (TOEFL Research Reports No. RR-81). [PDF]

Powers, D., Burstein, J., Chodorow, M., Fowles, M., & Kukich, K. (2001). Stumping E-Rater: Challenging the validity of automated essay scoring (GRE Board Professional Report No. 98-08bP). [PDF]

Quinlan, T., Higgins, D., & Wolff, S. (2009). Evaluating the construct-coverage of the e-raterⓇ scoring engine (Research Report No. ETS RR-09-01). [PDF]

Ramineni, C., Trapani, C.S., Williamson, D.M., Davey, T., & Bridgeman, B. (2012). Evaluation of the e-raterⓇ scoring engine for the TOEFLⓇ independent and integrated Prompts (Research Report No. ETS RR-12-06). [PDF]

Yang, Y., Buckendahl, C., Juszkiewicz, P., & Bhola, D. (2002). A review of strategies for validating computer-automated scoring. Applied Measurement in Education, 15(4), 391-412. [PDF]

石岡恒憲. (2004). 「記述式テストにおける自動採点システムの最新動向」. 行動計量学, 31(2), 67-86. [PDF]

田地野彰, 細越響子, 川西慧, 日髙佑郁,髙橋幸, 金丸敏幸. (2011). 「アカデミックライティング授業におけるフィードバックの研究- CriterionⓇを導入した授業実践からの示唆-」. 京都大学高等教育研究, 17, 97-108. [PDF]

細越響子, 金丸敏幸, 髙橋幸, 田地野彰. (2012). 「英文産出に与えるフィードバックの効果検証-CriterionⓇとピア・フィードバックに焦点をあてて-」. 言語処理学会第18回年次大会発表論文集. 1158-1161. [PDF]

また、発表で紹介したツールは以下のようなものです。

無料(機能限定の場合もあり)の英作文自動添削ツール:
The Linguisticator


当日の発表スライドの概要はこちら↓

2013年9月25日水曜日

2013年度前期授業アンケート

 前期末に行った授業アンケートの集計結果が返ってきたので、まとめておきます。設問は各5点満点(A=5,B=4,C=3,D=1の加重平均)。ちなみに質問項目は2分類に分かれており、以下の通り。

【授業の体系性】
1.授業内容は授業計画と一致していましたか。
2.授業のねらいや学習目標は明解でしたか。                                
3.授業時間や授業回数はきちんと守られていましたか。             

【教授方法・講義内容】
1.教員の話し方や声の大きさは適切でしたか。    
2.教員は学生の質問などに適切に対応していましたか。    
3.学生の反応や理解度をみながら授業が進められていましたか。
4.学習に対する興味・関心を刺激する授業でしたか。                
5.授業の内容は理解できましたか。                                        
6.授業を通して新しい知識や理論、考え方が分かるようになりましたか。
7.教員は私語など受講マナー上の問題に対して適切に対処していましたか。
8.教材(テキスト、プリント、レジュメ、スライド、ビデオ等)は、授業内容を理解する上で役立ちましたか。
9.黒板・ホワイトボード・プロジェクタ等の使用は適切でしたか。
10.課題(発表、レポート、小テスト等)は、勉学を深める上で役立ちましたか。

「英語研究III」履修者数66名(回答者数48名)
【授業の体系性】 設問平均4.9(科目別平均4.8,受講者数平均4.7)
【教授方法・講義内容】 設問平均4.8(科目別平均4.6,受講者数平均4.5)

 テーマは「英語コミュニケーション論」で、コミュニケーションに関連する分野を広く浅く学ぶ授業です。講義はスライドを使って行い、講義資料(スライドや動画)や授業外での議論はMoodleを使って行います。【授業の体系性】【教授方法・講義内容】とも高評価をしていただきましたが、「授業の内容は理解できましたか。」は4.6(科目別平均4.5、受講者数別平均4.3)、「授業を通して新しい知識や内容は理解できましたか。」は4.6(科目別平均4.5、受講者数別平均4.4)は改善の余地ありだと思います。

【自由記述欄】
・広く浅く内容を取り扱っていたので、他の授業とつながる部分もいくつかあって理解が深まったこと。
・授業内で使用していたパワーポイントがあとからMoodleで見返すことができる点。聞き逃したところ、書き逃したところが分かるから。
・難しい理論や考え方を実際に生徒側の活動を通して分かり易すく解釈できる授業でした。
・先生が一方的に話すのではなく、話し合いの時間が設けられたり、ゲームをする機会があって、新しい知識が頭に入りやすかったです。
・考える時間を適度にとってくれたので、理解や定着につながりました。授業内のルールを設けてくれたので、積極的に授業に参加することができました。
・ノートに写す時間をもう少し長くしてほしい。

【総括】
 基本的にスライドはMoodle上で公開しているので、メモを取る程度で良いという話はしているのですが、それでもノートを取る時間が欲しいというコメントがありました。来年度は改善したいと思います。このような講義科目では、できるだけ関心を持ってもらうように話をしようとしているのですが、授業開始時から参加してくれない学生がいたので、その辺りの対応には少し苦労しました。

「英語科教育法II」履修者数21名(回答者数20名)
【授業の体系性】 設問平均5.0(科目別平均4.8,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】 設問平均4.9(科目別平均4.6,受講者数平均4.7)

 英語教育法I〜IIIの流れの中で、IIでは主に(1)タスクの作成、(2)4技能の評価、について説明した後、各グループごとにタスクを用いたミニ模擬授業を行ってもらいます。その授業をもとに受講者間で意見交換し、後日Moodle上でミニ授業に対するコメントを書き込んでもらいます。前年度の反省を踏まえ、今年は欲張りすぎずタスクの作成に焦点を当てた指導を行いました。

【自由記述欄】 
・模擬授業のような形で、自分たちで授業案等を考えてやったのは、授業に集中する上でとても良かったし、グループワークとしてもすごく良かったです。また、自分たち以外のグループの発表を聞くのは、色々な発見があり、知識が深まりました。前に立って生徒たちに教えていくことの難しさをはじめて知り、自分が思っている以上に大変なことだということが分かりました。
・模擬授業で意見をいってもらえること。
・模擬授業の経験が大変勉強になりました。1つの授業のために、かなりの時間を費やして準備すべきだと思ったし、予想される生徒の反応についてもきちんと対応できるようにしたいと思いました。
・やはり自分たちで授業を作って実際に行うことで、自分たちの授業の改善すべき点を見つけることができたり、また他のグループのレベルの高い授業を見ることで、その良い所を自分たちの授業に取り入れることもできるので、授業の作り方を学ぶ上でこの授業は欠かせないものだと感じました。
・テキストが中・高対象にしては難しく、タスクが作りづらい。タスク作りのみ実際の教科書を使ってやりたい。学生間に授業に対する温度差を感じた。何とかできればしてほしい。

【総括】 
 テキストの難しさについては検討したいと思います。この授業の目的は、難しいテキストの教材研究を真剣に行うことで、自身の英語力向上につなげてほしいという所にあります。他の授業と比べて厳しめのことをたくさん言いますが、本気で教員になりたいと思う人たちへのエールだと考えてもらえると嬉しいです。

「初等英語教育論」履修者数39名(回答者数39名)
【授業の体系性】 設問平均4.9(科目別平均4.8,受講者数平均4.8)
【教授方法・講義内容】 設問平均4.7(科目別平均4.6,受講者数平均4.6)

 2013年度より新たに担当し始めた授業で、小学校教員を目指す学生を対象としています。言語習得理論の概要を説明し、それを実際の指導案に落とし込み模擬授業をしてもらうという授業方式を採用しました。

【自由記述欄】 ・にぎやかでよい雰囲気だったところ。
・英語をどう教えればいいか学べた。
・模擬授業で英語を使う機会があったこと。
・映像や、音声など諸感覚を刺激するような内容で興味を持って取り組めました。
・課題の発表の際、個人で固定せず数人で自由に組ませたり、発表している人に対してコメントを書くようにしていた点。座学の中で、一方的に話をするのではなく皆の様子を見ながら授業を進め、VTR等も活用していたこと。
・パワーポイントの字の大きさをもう少し大きくしてほしいです。
・説明が少ない。パワーポイントがはやい。
・模擬授業はDVDを見せて欲しい。
・もう少し英会話や英語の筆記問題を取り入れてほしい。

【総括】 スライド上に多くの文字を詰め込みすぎたので、みんなノートを取るのが辛そうだなというのは感じていました。来年度以降の課題にしたいと思います。また理論的な側面が多かったため、難しいと感じた人が多かったようです。1つの授業で言語習得理論の説明と英語力の向上を目指すのはなかなか難しいですが、改善策を検討します。 


2013年9月4日水曜日

全国英語教育学会 第39回北海道研究大会

 2013年8月10・11日、北海道の北星学園大学で開催された全国英語教育学会(JASELE)の研究大会に参加しました。今回は(も?)残念ながら発表することはできなかったけど、様々なことを学びました。

 開会式のときに、理論と実践の融合や現場の教員が理解できることばで研究成果を語ることの重要性が指摘されていましたし、JASELEの今後の方針もあるのでしょうが、「理論と実践」のつながりについていろいろ意見や感想を持った人が多かったようです。ざっと見たところ、以下のようなブログで感想が綴られています(他に何かご存知のものがあればお知らせください)。

tyoshida's office
タカの英語教師日記〜Stage2〜
英語教育2.0〜my home, anfieldroad〜
○○な英語教員に、俺はなる!!!!
英語科教員奮闘記
白井恭弘ブログ


 以下、ごく簡単に備忘録(本当に備忘録なので許してください)。

【1日目】
今尾 康裕(大阪大学)
「英語学習者エッセイコーパスの書き言葉としての位置づけを探る試み」

【概要】
 ICLE、NICE、ICNALEなどの学習者コーパスを紹介し、それらの多くは学習者エッセイコーパスなので、まずはエッセイコーバスの特徴をつかむ必要があることを指摘。大局的な視点から書き言葉コーパスの中における相対的な位置づけを見てみようという試み。分析手法として、タグ付けしたコーパスの語彙文法項目などを利用した多変量解析を採用、今回はコレスポンデンス分析(頻度表をもとに行と列の変数の対応を視覚化する)の結果を提示された。Logical connectorsの分析で、主な結果の概要は、formalityで使う連結詞が異なる、エッセイライティングというタスクで差があるわけではない、学習者を特徴付ける差がある、習得レベルによって使用頻度に差がある、国籍によっても頻度に差がある、であった。

【感想】
 今Mac界で知らない人はもぐりと言われる研究者、今尾先生の発表でした。Mac用のコンコーダンサーCasualConcやRを簡単に使えてしまうMacRなどの開発者でもあります。プレゼンテーションの美しさもさすがでした。
 
【2日目】
浦野 研(北海学園大学)・水本 篤(関西大学)
「英語教育実践と研究の接点 - 研究の在り方と手法 -」

【概要】
当日のUstream中継
投影資料(水本先生)
togetterによるまとめ

 研究方法についての大まかな理解、ARELEの掲載論文の分析、そして今後どんな研究が求められるかを考えていくためのワークショップ。あまりにも盛りだくさんだったので、以下ワークショップ中に書き留めたことばを羅列しておきます。

「p値を見るとか有意差を見るとかはnの大きさに依存するのでかなりあやしい。」
「効果量について。APA 6th editionによれば必須!」
「効果量を偏差値にたとえる。0.8だと偏差値が8違うようなイメージ。」
「サンプリングの影響もあり、p値は再現性がないが、しばらく使われ続けるだろう。」
「CIと効果量をみればいい。」
「有意水準・検定力・効果量・サンプルサイズのうちの3つがわかれば残り一つが決まる。」
「p値ではなく信頼区間がベター。実質的な差を見るのは効果量。検定にこだわるなら検定力を確認。1回の研究で言えることはかなり少ない。」
「そもそも検定が必要なのか。有意差を出すためにやっちゃってるのでは?」
「提案:p値が大事なら検定力分析を、効果量、信頼区間の蓄積、測定を軽んじない、追試を重視、再現に必要な情報を必ず書く。」
「探索型の研究ばかりやっちゃダメ」

【感想】
 あまりのすごさに「すごすぎてpちゃん」というフレーズが頭の中をグルグル回りました。ワークショップとは言え、参加者が参加できる時間はほぼ皆無だったのだけど、聞いている側の頭をフル回転させてくれる素晴らしいワークショップでした。表面上はARELE掲載論文の分析という形態でしたが、「きちんと作法に則って研究しましょうね。」というシンプルなメッセージが伝わってきました。
 ちゃんとした研究を行うためには、究極まで突き詰めることももちろん重要ですが、統計的な知識を全く持たない人が知っておくべきミニマムがわかればとても嬉しいのですが...(私も苦手な方なので統計を勉強すればするほどどこまで行けばよいのかがわからなくなります)。

白井 恭弘(ピッツバーグ大学)
「日本の英語教育の将来ー小中高における英語教育実践と研究の接点を探るー」

【感想】
 シンプルかつ明解な講演でした。白井先生の著書を見ればわかると思いますので内容はあえてまとめませんが、やはり英語教育に携わる者として1度は白井先生の主張を自分の中で咀嚼してみる必要があるかと思います。

【全体を通しての雑感】
 JASELEの研究大会に参加して思うのは、実践と研究をいかに連携させるかということです。今回も参加者の多くがそのことについて考えていたようですね。私は鳴門教育大学大学院の修士課程で勉強をしましたが、当時は現職教員の派遣制度があり(規定上は大学院生の2/3以上が現職教員だった)、全国各地から派遣された英語教員と一緒に2年間の研究生活を送りました。そこでよく聞いたことばは「研究なんて実践には何の役にも立たないよ」というものでした。私の中で印象に残っている高校の先生は常にこのようなことばを口にされていましたが、2年間の派遣期間中にARELEに投稿し見事に論文が掲載され、2年間の研修期間を終えた後、颯爽と高校に戻って行きました。
 このことから感じるのはやはり「優れた実践者=優れた研究者」であるべきだということです。残念ながら優れた研究者の中には実践を蔑ろにしている(というか実践できない)人もいます。また小・中・高等学校の教員の中には、最初から実践者の視点だけで実践を捉えて「研究なんて...」という人もいることでしょう。ですが研究者の端くれとして言わせていただけるのであれば、「研究と実践の効果的な循環」がなければ英語教育の未来はないと考えています。そのためにも「大学の研究者>小・中・高等学校の教員」という訳のわからない妄想は忘れ、お互いが健全に議論し合うべきだと思います。

 余談ですが、私は教育現場ということばがあまり好きではありません。そのことばを使った途端に小・中・高等学校での英語教育と大学での英語教育が分断されてしまう気がするからです。大学で英語教育に携わる身としては、必死に英語教育をしているつもりですし、研究と教育をなんとか結びつけようともがいています。現場ということばを使うのであれば、大学での英語教育も入れて欲しいと思うし、そのことばを聞く度に何だか切ない気持ちになります。

【その他気になった情報】
検定力分析を行うためのソフトG*Power 3
Exploratory Software for Confidence Intervals
大名力先生のDictation作成サイト

2013年8月14日水曜日

外国語教育メディア学会(LET)第53回全国研究大会

 2013年8月7−9日の日程で東京の文京学院大学で開催された外国語教育メディア学会の全国研究大会に参加した。最寄りの駅は「東大前」ということで、あの東京大学と道を挟んだ向かいにある大学。ちょうど学会が開催されている期間中に東京大学ではオープンキャンパスが開催中でした。

IMG 0139

それはさておき、聞いた発表の中からいくつか簡単な備忘録。

【1日目】8月7日
前田 啓朗(広島大学)
「外国語テストの作成・データ整理に生かすExcel活用法」
 Excelに詳しい前田先生らしい、Excelを活用するためのワークショップでした。前半はExcelを利用したテスト作成について、後半はExcelを利用したデータの整理についての内容。

 前半は参照の方法(絶対参照と相対参照)やテスト作成に活用できる関数の説明。

文字列操作:&, CONCATENATE、LOWER, UPPER, RIGHT, LEFT, MID, LEN
項目選定:RAND, RANK, VLOOKUP

などについて。基本的な関数をこのようにテスト作成に活用できるということを提示されました。後半はデータの整理ということで、EXCELのデータ分析ツールを利用した統計処理の方法やグラフの描き方について提示されました。後半は少し時間が足りなかったので、もう少しゆっくり話を聞きたいと思いましたが、手元にあるExcelというツールでどれだけのことができるかということを見せつけてくれるワークショップでした。その他の情報としては以下のようなものもありました。

・平均の差の検定をオンラインで分析:ANOVA4 on the Web
・比率の差をオンラインで分析:Exact Test

浦野 研(北海学園大学)
「有意性と効果量についてしっかり考えてみよう」
 配布資料や関連情報はすべて浦野先生のサイトから入手できます(ということで詳細は省略)。効果量ということばはよく聞くもののよくわかっていなかったので、とても有り難いワークショップでした。浦野先生のワークショップは聴衆をきちんと意識されているので、話がきちんと頭に入ってきます。
 ワークショップ中に浦野先生が引用された「…統計的推定には、"データ数という、研究者が任意に決められる要因によって結果が左右されてしまう"という根本的な問題があります(吉田, 1998, p. 232)。」ということばは忘れてはいけませんね。効果量の計算は水本先生のExcelシートを使えばあっという間にできます。

参考:
効果量(Cohen, 1969)
小:d=0.2、重なり85.7%
中:d=0.5、重なり67.0%
大:d=0.8、重なり52.6%


【2日目】8月8日
 2日目はいくつかの発表を聴きましたが、メインはコースウェア・ショーケースとして発表した「Can-do調査結果を基に開発したアニメ教材"Culture Swap"の共有に向けて」でした。実際に作成したアニメ教材を提示しながら訪れてくれた方々と話をしました。この教材作成のねらいは、「ミニマムな所だけ面白いものを作り込み、残りの部分については各自教員が作成していく」という所なのですが、やはり反応としては「関連した教材はないのか?」というものが複数ありました。詳細はこちらのページから。
 2日目は最後に基調講演として岸本好弘(東京工科大学)先生による「ゲーミフィケーションを活用した大学教育の可能性」を聞きました。この方は知る人ぞ知るファミスタの開発者です!内容については割愛しますが、ゲームのように中毒性を持って英語学習ができたら良いのにと思いました。ちなみにこの講演の最中にあの地震警報(誤報)が会場内に響き渡りました。Twitterを見ると、「奈良で震度7」ということばが溢れ、あの大震災のことが頭をよぎり絶望的な気分になりましたが、誤報ということで良かったです。
 なお同じ発表時間帯ということで聞けませんでしたが、神谷 健一先生(大阪工業大学)による「FileMaker Go 12を用いた編集・配布が容易なiOS用文字・単語・例文学習用無料アプリ」もおすすめですね。

【3日目】8月9日
 いくつかの発表を聴きました。備忘録がてらリンクを残しておきます。
「草薙邦広のページ」:注目の研究者の一人です。発表資料ほか盛りだくさん。
REX:多読用のシステム
short stories at east of the web :無料で入手できる小説がたくさん
英文チェッカーGinger:その名の通り

---------------------------
最近はSlideShareやブログなどを利用して、発表資料を公開してくれる研究者が増えてきました。ということはこのようなブログを書く意義も薄れつつあるのかなとも思うのですが、あくまでも備忘録なのでお許しください。

2013年7月18日木曜日

第43回中部地区英語教育学会(CELES)

  6月29-39日の日程で富山大学で開催された2013年第43回中部地区英語教育学会に参加しました。参加の動機は第42回に参加していた方々がとても楽しそうだったこと(笑)、そして北海学園大学の浦野研先生がコーディネータを務める英語教育研究法セミナーおよび課題別研究プロジェクトの「英語教育研究法の過去・現在・未来」にに参加することでした。勝手な思い込みで富山は涼しいだろうと期待して行ったら、かなり暑くてバテました。当日の学会の様子はツイッター上でのつぶやきを中心に見ていただけるとフォローできるかと思います。
 研究法セミナーおよび課題別研究プロジェクトは改めて研究に対する姿勢を考えさせてくれる契機になりました。気になったことばをいくつか書き留めておきます。


  • 「研究はひとりよがりではいけない。フィールド全体の発展に貢献する研究を行う」
  • 「多くのResearch Questionを取り入れた研究は複雑で解釈の難しい結果を生み出す」
  • 「良い研究は良い意味でconservativeであること。論理の飛躍をさせない。研究結果以上のことを述べない。」
  • 「やった研究は人目に触れないと意味がない。口頭発表も大事だがやはり論文執筆そして掲載が重要」


 いわゆる英語教育研究の作法をきちんとしましょうという主張だと思いますが、研究の厳密さを追求しすぎると、いろいろと間違いを恐れて研究に手を出せなくなる人がいるかもしれないということは少し気になりました。英語教育研究においては、教員(特に中・高等学校教員)が手軽に間違っていない手法を用いて実践を共有できるような研究が行えると良いですね。将来的には研究のチェックリストのようなものを作成するとのことなので期待したいと思います。あとこれも浦野先生によれば今後話題として扱ってくれるらしいのですが、 研究における倫理上の問題についてはきちんと考えるべきだと思います。
 その他、今話題の江利川春雄先生(和歌山大学)がパネリストの1人して登壇したシンポジウム「生徒の目が輝くとき」にも参加しました。
 その他のパネリストとして中・高等学校の教員も登壇し、それぞれの活動実践例などの紹介をされました。中・高等学校の先生の活動例を聞くのはとても楽しいものです。が、それらの活動をどのように評価しているのかについてもう少し詳しく話を聞きたいと思いました。
 実はこのシンポジウムのタイトルにある「生徒の目が輝く」ということばに、少し違和感を覚えました。確かに中学生や高校生を見ていると目が輝いているなと感じるときはありますし、私自身も大学生と接していて目が輝いていると感じるときもあります。ただし、英語教育という視点から考えたときに「生徒の目が輝く=英語を学習(習得)している」ではないと思うのです。これは江利川先生の主張する「教師の力量=英語力+指導力+人間性」ということばにも感じた違和感なのですが、「生徒の目の輝き」や「人間性」などで判断しない英語教育力というものを考える必要があるのではないかと思います。極論で言えば目が死んでいても教師の人間性が低くても、確実に生徒の英語力は向上しているといったことがあっても良いのではないでしょうか。

 私は現在英語教員養成にかかわる科目を多く担当している立場ではないのですが,それでも「英語科教育法」という科目を1つ担当しています。最近意識して受講生に言うのは,

・自分が受けてきた英語教育の猿真似はするな。きちんと考えること。
・理論は現実には不向きかもしれない。でも困った時には必ず助けてくれる。
・楽しいだけの活動はだれでも作れる。でも活動をどう評価するかを考える。

ということです。教育経験の無い大学生の今だからこそきちんと考えてもらいたいという思いがあります。たまたま今学生を相手に行っている英語勉強会で読んでいる本に次のようなことばがありました。ありきたりなことばではありますが、大切ですね。


Lightbown &Spada (2013) "Take a moment to reflect on your views about how languages are learned and what you think this means about how they should be taught (p.2)"



-----------------------
 ということでCELES参加が終わりました。恥ずかしながら全国大会には顔を出すものの、このように地方大会に参加するのはかなり久しぶりでした。そこで感じたのはフロアの温かさです。どんな発表に対しても聴衆が真摯に質問します。JASELEなんかも昔はそうだったのですが、最近そのような雰囲気が薄れてきているので寂しいですね。近いうちに必ず自分も発表したいと思わせてくれる学会でした。ゼミ生曰く「先生の学会参加中のつぶやきは修学旅行みたいでしたね」(笑)。うまい喩えだと思いますが、本当に楽しい学会参加でした。

 ちなみに話が逸れるので書きませんでしたが, 阪上辰也先生による「縦断的学習者コーパス分析による共起表現の経時変化」の発表は好みでした。こういう研究をしたいんですよね...。頑張らねば。

その他、備忘録。


『英語教育、迫り来る破綻』
「英語教師の研修ノート」
Edinburgh Project on Extensive Reading (EPER)
Nagoya Interlanguage Corpus of English (NICE)


関係ない富山の想い出たちはこちら。

2013年4月5日金曜日

2013年度のはじまり

IMG 0504

 15週授業になってから大学は慌ただしくなっており,3月29日に英語のプレースメントテスト,4月1日に入学式,そこから新入生は数々のガイダンスを経て今日4月5日からいよいよ授業がスタートします。

 大学教員にとって入学式,卒業式の時期は教師冥利に尽きる時期です。いろいろな思いを抱えながら不安と期待の入り交じった表情をしている新入生。大学デビューで髪を染めてオシャレをしていてもどこかあどけなく,かつ凛としています。この時期の気持ちそして目の輝きをすぐに失ってしまう人も多いのだけど,この4年間ほど自分の好きな学問を究められる時期はありません。サークルやバイト,課外の活動にも励みつつ,常に「学業に励む」ことを中心にした生活を送ってもらえればと思います。

 年度始めは大学の教職員も新入生の気持ちを盛り上げようと必死なので,何かとうるさいことを言いたがりますが(笑),かなり的を射たこと言っている場合もあります。僕も言いたいことはたくさんありますが,一言だけ。

We are always here to help you.

大学生活をどのようなものにするかはみなさん次第です。入学おめでとうございます!

IMG 0510

2013年3月25日月曜日

LCSAW 2013


 2013年3月23-24日に神戸大学百年記念館においてLearner Corpus Studies in Asia and the World (LCSAW)と題して国際シンポジウムが開催されました。これは神戸大学の石川慎一郎先生が中心になって作成したThe International Corpus Network of Asian Learners of English (ICNALE)の完成を記念して(?)開催されたもので、学習者コーパスの研究において著名な研究者を世界各地から招いて行われていました。参加者は配布された名簿によれば90名以上(そんなにいるようには見えなかったのだけど)とのことで、多くの参加者は日本人でしたが日本在住で英語を母語とする人も多く参加しており、各発表において英語で活発な議論が行われました。ICNALEの詳細についてはサイトを参照してもらった方が早いと思いますが、コーパスの特徴としては、

(1)アジアの学習者に焦点
(2)ライティングにおける変数をできるだけ統制
(3)学習者を熟達度によって分類
(4)英語母語話者のサンプルも収集

という4点に集約されます。

今回は自分の勉強のために参加したので、勘違いや的外れなまとめが多いかもしれませんが(いつもだけど)、以下いくつかの発表の備忘録。

Granger, S. 
Contrastive Interlanguage Analysis: A Reappraisal

最初の講演。対照中間言語分析の全体像について、そして中間言語に影響を与える変数として母語の話をされた後、その他の変数(習熟度や地域など)も考慮に入れることが重要であると主張されました。International Corpus of Learner Language (ICLE)ではこれらの変数ごとにソートができるそうです(ICLEについては以下の論文も参考になりますね)。

Granger, S. (2003). The international corpus of learner English: A new resource for foreign language learning and teaching and second language acquisition research. TESOL Quarterly, 37(3), 538-546.

また対照中間言語分析、コーパス分析において「英語母語話者を規範としている」という批判に対しては、SLAをはじめとした他の研究でも同様の状況だと批判を一蹴されました。またコーパスのデータに基づくだけではなく実験的手法に基づいたelicitationデータを利用してコーパスデータを補完することの重要性も指摘されました。

Ishikawa, S. 
The ICNALE and Sophisticated Contrastive Interlanguage Analysis of Asian Learners of English. 

石川先生と言えばお馴染みのスライドの上にタイマーを表示させながら、壇上を所狭しと動き回るスタイルでの講演。ICLEやJEFLLコーパスを紹介した後、ICNALEの特長について解説されました。

対照中間言語分析は主に(1)過剰・過少使用、(2)L1の転移、(3)学習者のコミュニケーションにおける回避、(3)(非)英語母語話者の言語使用、(4)非英語母語話者が苦手な側面を扱うものであるとまとめられました。またそれに対する批判のまとめとしてはGranger (2009)があり、それらは主に英語母語話者を規範とすることに対してのものであるそうです。今後より洗練されたものにしていくためにはExternal Conditions、External Validity、Internal Validityの3つが必要になると話を締めくくられました。

また『ウィズダム和英辞典(第2版)』を紹介されましたが、この辞書にはICNALEのデータが活用されているようです(訂正:指摘をいただきました。英和ではなく和英でした(2013.3.25))。

Kirkpatrick, A
The Asian Corpus of English: Motivation and Aims

ASEANの国および中国、日本、韓国のデータを収集したAsian Corpus of English (ACE)の紹介。詳細はThe ACE manual(PDF)および彼の著作を参照のこと(今回の講演と似たような内容としてこんなスライドもオンラインにありました)。

現在はEnglish as a Lingua Franca (ELF)の時代であるとして、このようなコーパスの意義を強調されました。またACEはヨーロッパにおける同等のコーパスVienna Oxford International Corpus of English (VOICE)との比較を主眼に置いているそうです。

両者の比較を行った結果の予備的な考察として以下のようなものを提示されました。

VOIEとACEの比較
・3人称単数の付け忘れ
・動詞の拡張的使用
・同じ付加疑問詞の使用
・指示詞のthisと名詞の複数形の組み合わせ
・通常とは異なる前置詞の使用

VOICEにあってACEにないもの
・who/whichの相互使用
・(不)定冠詞の柔軟な使用
・不可算名詞を複数形として使用

ACEにみられるもの
・過去時制における原形の使用
・冠詞の省略
・複数のsの欠如
・連結詞beの省略

Granger, S. 
The Passive in Learner English: Corpus Insights and Implications for Pedagogical Grammar

1日目の概説的な内容とは打って変わって、受動態に特化した講演でした。

コーパスを利用した受動態についての研究にはStartvik (1996)やGranger (1983)、Biber et al. (1999)などがある。それらの研究の結果明らかになったのは80-90%の文においては行為主が省略されているということ、またgetを利用した受動態は少ないということである。

これら先行研究の結果を踏まえた上で、ICLEとICNALEとの比較を行った。受動態は自動的にPOSタグ付けしたデータから、<Vbe>、<VVN>のタグで検索して取り出した。この方法の限界はHe was recently arrested.のようにbe動詞と過去分詞の間に何かが入っている場合は取り出せないことである(これは解決は難しいにしても何とかしたい問題ですね)。

熟達度が上がると受動態の頻度が高くなるという仮説を立てたが、これは立証されなかった。1つの理由として考えられるのはトピックによる影響とのこと。実際ICNALEの2つのトピックで比較をしてみると”It is important for college students to have a part-time job.”よりも”Smoking should be completely banned at all the restaurants in the country.”のトピックの方が受動態が多用されているという結果であった。また後者のトピックにおいては、

A2   : 20%
B1.1: 28%
B1.2: 37%
B2   : 47%

という割合でbe bannedが利用されており、エッセイの刺激文にも影響されていることがわかる。

次にThe disadvantage can be see in the poor economy status. 

のように過去分詞にできていない間違いについては<Vbe><VV0>で検索をした結果、400件の誤用が見つかった。

またELTの文法テキストを分析した結果、これらコーパスデータの分析結果から明らかになったことはほとんどテキストに反映されておらず、語彙とのかかわりについては絶望的な状況であると指摘した。例外としてはCerce-Murica & Larsen-Freeman (1999)の本(?おそらくリンク先の本だと思うのですが)、Cowan (1998)のThe Teacher’s Grammar of Englishを挙げられました。

最後にコーパスに基づいた研究の結果をテキストの受動態のセクションに活かすためには、

・頻度情報
・lexico-grammarパターンのリスト
・使用域
・学習者が困難と感じる受動態のパターン
・言語グループ特有の困難点

などの情報を追加するべきだと主張されました。

その他、印象に残った言葉としては、

Learner corpus data can contribute to a better understanding of the acquisition of [文法項目など] and better descriptions in ELT tools. 

...”marketability rather than pedagogical effectiveness” is the publishers’ main concern and that many editors are “far more comfortable with rehashes of what has gone before than with something different (and refreshing)” (Harwood, 2005)

などがあります。

======================
ということでコーパスに興味を持ち書籍を読んだりはしていたものの、このようなシンポジウムに参加する機会がなかなか無かったので、とても参考になりました。面白かったのは日本の研究者たちはコレスポンデンス分析等の統計的手法を駆使して分析した結果を発表をしていたのに対し、海外の人たちはコーパスに見られる実例を提示することが中心で、数値と言えば頻度や%、またグラフの提示に留めているということでした。どちらが良いとは言えませんが、英語母語話者は「直感とは異なるデータ(実例)の面白さ」、非英語母語話者は「(直感が無いためか)統計的手続きに則ったデータの確からしさ」に興味があるのかもしれません。

現在世界各地で様々な学習者コーパスが構築されています。今まではコーパスを構築して言語を記述するだけで良かったのかもしれませんが、「学習者」ということばが付いている以上、教育の視点を排除することはできない訳で、現在はコーパスデータを教育に活用するというステージに入っているのでしょう。その視点から言えば、語レベルの分析に留まってしまうとやはり物足りない側面もあるので、今回のシンポジウムでもword clusterやdiscourse markerなど語よりも少し大きな単位で分析をしている発表がいくつかありました。けれども語レベルを超えてしまうとタグ付けの作業等が膨大なものになってしまうので、そこを石川先生が最後にCollaborationということばで締めくくられたように、学習者コーパスの研究だけではなく各分野の研究者たちが協力していくことが大切になってくるのかもしれませんね。

またシンポジウムの中では時折SLAを意識した発言がありましたが、このあたりはどうなのでしょうか。学習者コーパス研究は大きな枠組みでいうとどこの研究に属するのか(SLA?文学?教育?言語学?)ということも少し気になりました(このあたりは詳しくないので私見です)。


百年記念館前の桜
百年記念館からの景色