2012年2月28日火曜日

MoodleMoot 2012

2012年2月22−23日の日程でMoodleMootが三重大学で開催された。日本ムードル協会が設立されて2回目の大会。以下,いくつかの発表の覚え書き。


沼田寛・大塚裕子・椿本弥生・不破祟行.日本語ライティング指導への用語集モジュールの活用.


1年次の学生全員の必修科目「科学技術リテラシ」で理系作文技術を導入教育。2-3年前よりMoodleを活用している。受講生は250名で,全員がお互いのエッセイを閲覧可能。「テーマ選択→設問設定→アウトライン執筆→ドラフト執筆→最終稿提出」のプロセスを可視化した。各段階での教員からの評価も可視化,各プロセスにピア・レスポンス活動を導入した。

具体的には,2011東日本大震災に関する用語集を作成。各学生が解説する用語を自分で選ぶ。解説の見出しを決めたら,問いを設定して文献調査を行い,問いを検証する。調査した結果をもとに,2000字以内の解説文をまとめる。見出し語の定義文,問い(解説視点)の明示と結論の根拠事実の提示を求める。ピア活動においては,解説する用語の選択の是非,設問の適切さ,根拠提示は十分か,問いと結論の対応,出典提示方法の適切さ,などをピア相互間でチェックし合ってもらった。今後の課題として,受講生の見出し語選択の粒度の計量言語学的分析,受講生が執筆した見出し語の相互関連を学生らに見せる,学生らがリンクを発見するようなタスクの設計,ライティング・プロセスの分析(文章更新のデータを自動蓄積する機能が欲しい),受講者から同意をとってのコーパス構築などが考えられる。

質疑応答の時間にも出ていたが,ピア活動においてどのようなガイドラインを用いているかなどに興味を持った。このように「可視化」して作品を共有できるというのはMoodleの利点の1つなので,効果的に使えば面白い実践ができそう。

大西昭夫・大澤真也・中西大輔・有田真理子.小テストを簡単に作るブロックモジュール「e問つく朗」.

広島修道大学の学内向けに開発した問題作成モジュールを無償で一般公開するというもの。Moodleでは小テストを作成する時にちょっとしたコツが必要だが,このブロックを利用すれば直感的な操作で小テストを作成できるようになる。以下のサイトで公開予定です。


横浜市消防局企画課 藤田豊.続・消防本部におけるMoodle活用事例.

去年この発表を聞いた人たちの評価がすばらしかったので,聞きに行った発表。スライドの美しさ,プレゼンの美しさ,実践の美しさ,どれをとっても格別です。一番印象に残ったのは,利用者がMoodleを使っているというのを意識していないという点。eラーニングは好きな人が押し付け気味にやってしまう場合もあるけど,自然と利用者が使いたくなるような仕組みを取り入れるのは重要だ。Maharaの活用も始めるようです!

ちなみにMoodleMoo 2012の概要については以下の3つが便利です。

MoodleMoot 2012の発表資料(ログインが必要)。


その他,いくつか覚えておきたいこと。


・Feedback+(Moodle 2.2対応)を利用すればrubricを利用したライティングの評価ができる。
・バグ等の報告はMoodle Tracker経由で。
・GoogleアカウントでMoodleにログイン可能!?(β版)


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なぜMoodleMootはConferenceじゃないのか。mootの定義をODEで引いてみる。


adj. subject to debate, dispute, or uncertainty.

noun. a regular gathering of people having a common interest


つまり興味を持っている人たちが集まって,いろいろと議論をしましょうという意義があるのだと考えられる。けれども,日本ムードル協会が設立され,Moot自体がもしかするとアカデミックな方向へと舵を取りつつあるのかもしれない。そうなった時に,Mootが今と同じ位の参加人数を集められるのかということは慎重に議論しなければならない。発表内容を見てみると,プラグインなどの開発およびMoodleを利用した実践の2種類に加え,Moodleに興味を持った人を対象にしたワークショップが開講されている。つまり,Moodleに興味を持ったけど使い方がわからない人(ワークショップ),Moodleを使い始めたばかりで授業などでの使い方について知りたい人(実践),Moodleは使いこなせるようになったのでもう少し高度な使い方をしたい人(プラグインなどの開発),の3つの層をターゲットにできる訳だ。そこから考えれば自然な流れとして,Moodleを使って研究をしている人,という層をターゲットにした発表が今後出てくるのかもしれない。が,多種多様のCMSやLMSが存在する中で,Moodleに限定した研究が成功しているか(あるいは成功するか)と言われれば疑問符が付くだろう。


現在MoodleMootで弱い部分は実践を支える理論に関連する研究である。これに関してはMoodleに限定せず幅広くLMS/CMSを対象にした研究が必要になるだろう。個人的な意見としては,MoodleMootに参加する目的は,多種多様な立場から多種多様な発表が行われるからであって,アカデミックな雰囲気を求めているからではない。同じ1つのものを「好き」な人たちが集まって話し合える場というのは貴重なので,この雰囲気を残して欲しい気もする。「学会」という名前に変わった途端,いろいろと大変なので・・・。


ちなみにMoodleの一番のハードルはオープンソースで導入は無料なのに,一定の知識がないとインストールできないということです。このあたりのハードルが取り除かれれば,利用者は爆発的に増加すると思うんだけどなあ。

2012年2月24日金曜日

ウォリック大学引率ほか

ツイッターをやるようになってから,日記を書かなくなってきた今日この頃。ツイッターやらFacebookやらやりだすと,なかなか同時にすべてのことはできません。そう言えばmixiは完全に放置・・・。

それはさておき,2012年も始まりました。春休み期間は自己研修の期間でもあるので,いろいろと飛び回ります。


1月30-31日 佐賀大学・熊本大学視察
2月 5-13日 英国ウォリック大学語学研修引率
2月17-21日 アメリカeLearn学会出張
2月22-23日 三重学会出張


こうやってまとめてみると2月のスケジュールはひどいことに・・・(苦笑)。


ただこういう期間に自分の中にいろいろと蓄積しておかないと前進できないので,頑張っております。自分の備忘録もかねて,イギリスの写真とアメリカの写真をアップロードしておきます。イギリスは毎日氷点下の日々で,到着当日はヒースロー空港のフライトが半分キャンセルされるという過酷な状況でした。そんな中,学生たちは頑張っていましたよ。一点,アメリカの学会はロサンゼルスのロングビーチで開催されたので20度前後の陽気。成田空港にコートを預けておいて正解でした。両者のコントラストが面白いですね。

残す所は,3月の東京出張1回です。飛び回っているだけでは知識にならないので,少しは腰を据えて勉強しようと思います(本当かな?)。

佐賀大学・熊本大学eラーニング推進機構視察

 本学では2012年度より正式にMoodleを全学的に導入することになった。それに伴い,全国の中でも先進的な取り組みを行っている佐賀大学eラーニングスタジオ熊本大学eラーニング推進機構への視察を行った。写真も何枚か撮ったので,こちらから。
 どのような取り組みを行っているかはそれぞれのサイトを参考にしてもらった方が早いが,佐賀大学では教務課,熊本大学では総合情報センターとの関わりが密であるという点が興味深かった。そして両大学に共通するのは職員は基本的に非常勤であることである。
 今回の主な目的は施設を見せていただくということであったが,両大学とも立派な施設を持っているという印象を受けた。eラーニングにおいてはコンテンツが命であるが,このようなコンテンツの開発を行う専門的な部署があるというのは非常にうらやましい環境である。高等教育機関においてはeラーニングは教育と結びつくものなので,システムそのものではなく教育効果の高いコンテンツ開発を行う必要があるのは明らかだ。
 eラーニングを崇拝する必要はないが,上手に取り入れる必要がある。けれどもeラーニング導入における障害は,教職員にコンテンツを開発する能力と時間が無いことであり,この障害が取り除かれない限りは普及が難しいということを痛感した。
 ちなみに夜は熊本大学の教員の方数名とご一緒したが,お互いがeラーニングについて熱く語っていらっしゃったのがとても印象的であった。

2011年10月14日金曜日

2011年度前期授業アンケート

前期末に行った授業アンケートの集計結果が返ってきた。ちょっと遅くなったけど,まとめておきます。設問は各5点満点(A=5,B=4,C=3,D=1の加重平均)。

「Reading & Writing I」履修者数28名(回答者数28名)

【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.7,受講者数平均4.7)

【教授方法・講義内容】
設問平均4.8(科目別平均4.5,受講者数平均4.5)

授業内でMoodleを利用した活動をメインに行っている授業。概ね4.8以上の高評価をいただきましたが,【教授方法・講義内容】における「授業を通して新しい知識や理論,考え方がわかるようになりましたか」が4.6(科目別平均4.4,受講者数別平均4.4),「課題(発表,レポート,小テスト等)は,勉学を深める上で役立ちましたか」が4.6(科目別平均4.5,受講者数別平均4.5)なのが気にかかる所。何人かの学生にインタビューした所,eラーニングをやっていると勉強をした実感がわきにくいとの声もあった。実際はそうでもないんだろうけど,そのような実感を高めるための授業にするための努力が必要。

【自由記述欄】
・「パソコンを使うと、打ちこむことにも慣れてくるのですごく良い。持ってくるものがすくなくてすむ。」
・「パソコンを使うとノートにとったり、手元に残らないのですこしよくない。」=この2つの記述がポイント。
・「授業の途中で見せるパワーポイントが教科書よりすごく分りやすくてためになった。内容がおもしろくてよかった。」
・「自分の好きなように英作文するという活動が多かったので楽しかったし、単語力や文法力の無さなどを実感できたのが良かったです。」


「英語研究III」履修者数85名(回答者数71名)

【授業の体系性】
設問平均4.8(科目別平均4.7,受講者数平均4.7)

【教授内容・講義内容】
設問平均4.9(科目別平均4.5,受講者数平均4.5)

気になるのは【授業の体系性】の所で,「授業のねらいや学習目標は明確でしたか」の設問に2名が「あまりそう思わない」と答えている所。扱う内容が広範囲に渡っているので,理解が浅くなってしまったのかもしれない。その他の設問は4.8以上の高評価をいただきました。

【自由記述欄】
・「授業中で取り扱ったスライドを修道のmoodleから入手できるシステムは非常にありがたいと思う。」=良かったです。
・「授業スピードがちょうどよい。学習を一歩一歩踏みしめていくような速度。」
・「先生の話がおもしろくて、寝たりすることがほとんどなかった。スライドもおもしろくて、良かった。」
・「日頃意識していなかったコミュニケーションの問題など非常に興味深かったです。日々の生活でも考えるようになりましたし、コミュニケーションに対して少し慎重になった気がします。」
・「ノートを書く時間がほしい。」=このようなコメントが複数ありました。そのためにスライドを常時閲覧できるようにしているのですが,スライドを多用しすぎると良くないという実例です。


「英語科教育法II」履修者数23名(回答者数22名)

【授業の体系性】
設問平均4.9(科目別平均4.8,受講者数平均4.7)

【教授内容・講義内容】
設問平均4.9(科目別平均4.5,受講者数平均4.5)

概ね高評価をいただきました。


【自由記述欄】
・「模擬授業を実際にやってみて授業をくむ大変さを学ぶことができた。教師になりたいとさらに思うようになった。」
・「自分では出来ていたと思ってても辛口なコメントをもらえることで改善すればいいところを教えてもらえたこと。」
・「できたら先生にもまるまる1回分の中学生・高校生対象の授業をしてほしかったです。」=そうですね,一度は模範例を見せた方が良かったかも。

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毎年の改善の結果,少しずつは評価も好転しているように思います。昨年度からMoodleを利用した授業を複数行っています。Reading & Writingはその中でも授業のほぼすべてをMoodle上で行いますが,このスタイルにはやはり好き嫌いがわかれるようです。eラーニングありき,ではなくどのように効果的に使うかがポイントでしょうね。今後の改善のテーマとしたいと思います。

第4回FD・SD研修会

研修会は2部構成。1部は,Benesseによる自己発見レポートの結果をまとめたもの。2部はリクルートによる進学ブランド力調査について。以下簡単なまとめ。ちなみに広島修道大学を対象とした調査結果の報告なので,その点はご了承ください。

自己発見レポート結果報告

半数以上は大学第1志望ではなかった。特に入試形態別では一般・センター試験利用で合格した学生にその傾向が高い。入学した理由は「学びたい学問分野があったから」が最も高く,「入試難易度が合っていたから」が続く。大学選びに役立った情報上位は「高校の先生との面談や話」「オープンキャンパス」入学後学生が期待しているのは,カリキュラムにおける「講義形式」「基礎基本中心」,授業においては「専門知識の豊富さ」「説明の分かりやすさ」。入学時の意欲および学力が低い層も入試形態別でよく表れている。

当然と言えば当然の結果。カリキュラムや授業に対する要望は何だか矛盾しているような気もするが,簡単にまとめると「大学生らしい高度なことをやりたいけど,わかりやすくやってね」ということだろうか。オープンキャンパスが大学選びに役立っているかどうかは疑問だが,高校の先生への宣伝活動はもっとするべきだろう。結局高校での進路指導が「国公立偏重」である限り,地方私立大学の未来は暗い。

進学ブランド力調査

中国エリアの高校に通っている高校生1,117名を分析対象とした。進学希望地域としては中国地方内では広島県が高い(47.8%)ものの,関西(40.7%),首都圏(23.2%)への希望も高い。但し,首都圏ともなると男子学生は希望する(30.3%)ものの女子学生はそうでもない(14.7%)。

中四国エリア全体の知名度は1位広島修道大学,2位安田女子大学,3位ノートルダム清心女子大学と続く。中国エリアでも全体では1位だが,男子は1位にもかかわらず女子では2位(1位は安田女子大学)。全体の興味度は1位川崎医療福祉大学,2位広島修道大学,3位安田女子大学。男子では1位広島工業大学,2位広島修道大学,3位岡山理科大学。女子では1位安田女子大学,2位川崎医療福祉大学,3位ノートルダム清心女子大学。中四国エリア全体の志願度トップは1位広島修道大学,2位や川崎医療福祉大学,3位安田女子大学。男子では1位広島修道大学,2位広島工業大学,3位川崎医療福祉大学,女子では1位安田女子大学,2位ノートルダム清心女子大学,3位川崎医療福祉大学。広島県で見ると男子では知名度・志願度で広島修道大学が1位,興味度は広島工業大学が1位。女子では安田女子大学がすべての項目で1位

中四国エリア全体でイメージランキング(機能的イメージ)1位の項目は「教授・講師陣が魅力的である」「自宅から通える」「学生生活が楽しめる」「クラブ・サークルが盛んである」「入試方法が自分に合っている」「偏差値が自分に合っている」「活気がある感じがする」「有名である」。下位項目は「専門分野を深く学べる」「学費が高くない」「遊びに行くのに便利な立地である」「学校が発展していく可能性がある」。感性的イメージの上位項目は「明るい」「親しみやすい」「自由な」。下位項目では「先進的な」「おしゃれな」「力強い」。

まさに本学の現状を良く表している。以前は女子大学が苦戦しているイメージだったが,最近は盛り返している(一部の女子大学のみ)傾向にあるようだ。女子学生を獲得するというのは大学経営において重要なポイントであり,女子学生の比率が確実に下がっている本学においては,早急な対策が望まれる。

以下,広島修道大学が安田女子大学に負けている項目をまとめてみた。これらを見ればわかるように,ほとんどはイメージに基づく判断(ブランド性)であり,実情とは必ずしも一致していない。だからこそ,大学としての確固としたブランド向上のための戦略が必要となる。学会等に行くと大学案内をもらうことが多いが,どの大学案内を見たって内容や構成に目新しさは全くない。もしかして同じ会社が作ったんじゃないだろうかと思う位だ。大学としてもう少し方針を明確にし,それらを大学案内をはじめとしたメディアで宣伝すべきだと思う。

教育内容・制度
「学びたい学部・学科がある」「教育方針・カリキュラムが魅力的である」「教育内容のレベルが高い」「社会で役立つ力が身につく」「教養が身に付く」

構成要員
「先輩・卒業生が魅力的である」「学生の面倒見が良い」

卒業後
「就職に有利である」「卒業後に社会で活躍できる」

立地・環境
「勉強するのに良い環境である」

学生生活
「学習設備や環境が整っている」「キャンパスがきれいである」「寮や奨学金などが充実している」

ブランド性
「校風や雰囲気が良い」「学校が発展していく可能性がある」「周囲の人からの評判が良い」



2011年9月6日火曜日

学士力,社会人基礎力,コミュニケーション力〜「○○力」と大学教育〜

 2011年9月5日(月曜日)広島修道大学にてtwitterでおなじみの渡邊芳之先生(帯広畜産大学)による「学士力,社会人基礎力,コミュニケーション力~「○○力」と大学教育~」という講演が行われた。巷に蔓延る「○○力」を批判する内容で,今までの疑問が解決するような明快かつ爽快な講演であった。以下,覚え書きとして書いた講演の流れ。当日の模様はUSTREAMで閲覧できます。

「◯○力」ということば。老人力をきっかけに増え始めてきた。それまで力と思われていなかったもの。教育においては「生きる力」。ゆとり教育の見直しの中でも中心に位置づけ。2008年においては、中教審の学士力。次に2006年の中教審による社会人基礎力、そして企業が採用時の重要な基準とするコミュニケーション力。

新しい「○○力」の特徴は、社会や企業の側が求めるもの、それを持つかどうかで人が評価され序列化されるもの、目標を決めるのは教育ではなく社会や企業である、という3つ。なので教育との間に様々な問題を生み出す。

物理学による力の意味するもの。力とは物体の位置や速度の変化を引き起こすもの。位置や変化そのもの(作用、反作用などの現象)、変化を引き起こすものの内部にあるもの(潜在力、位置エネルギー)。力そのものは見えない曖昧な概念。

心理学的な力。学力とは、実際に教科学習の成績が高いこと(教科テストの成績、学力の操作的定義、目に見える力)、教科学習の成績を高くする潜在力(生徒の内部にある力、心的概念、目に見えない力)。

カルナップによる傾性概念(disposition concept)と理論的構成概念(theoretical construct)という考え方。テストで測られる目に見える学力は傾性概念。観察にすべて還元される概念。現象の説明力、予測力は状況に依存。生徒の中にある目に見えない概念は理論的構成概念。観察に還元されない意味を持つ。状況を超えた説明力、予測力を持つ。原因論的な説明も可能。

心理的な力はふつう、理論的構成概念として用いられる。そこで、成績をあげたかったら、生徒の学力を育てようと考える。
○○力も同様。どんな状況で○○できるということなのか?

○○力は学力や体力とどう違うか?その力が明確な操作的定義がされているか、育成する方法が知られているかどうか。このことが教育の場での問題を大きくしている。

学力。学習達成は操作的に定義され、心理学的測定により客観的に測定可能。○○力を測定できるテストがあるか?操作的定義が不明確だと、評価が恣意的になり、結果論(生きている生徒には生きる力がある)にしかならなくなる。

○○力を育成する方法は知られているか?学力や体力には授業やトレーニング方法があり、それらが系統化、組織化されており、教員は専門家である。学士力やコミュニケーション力には、具体的な方法が用意されておらず、系統化も組織化もされておらず、教員はその専門家ではない。育成方法が知られていないと、育てられない、ばかりか、本人の努力に依存するようになり、教育以前の能力で決まってしまう(家庭環境やしつけ、経験)。

現在、大学ではコミュニケーション主眼、特に初年次教育において、が増えているが、教員にはそれを測定、教育する力もない。そうすると教育目標や評価基準のない授業が増える。コミュニケーション「させる」だけの授業が増える。コミュニケーションさせたら、コミュ力が育つという根拠は?学修の成果をどう評価すれば良いのか?更に深刻なのは、大学に不適応になる学生が増える(コミュ力の低い学生は)。

では大学は何をすべきか。2つの方法。1つには○○力を操作的定義し育成法を確立する。それは心理学者の仕事だが、果たしてできるか、すべきか?次に○○力に批判的な目を向ける。○○力を人の内部にあるものと見ることをやめ、その場の状況や文脈と結びついて発揮される力と考える。本人の責任にするのではなく、コミュ力が発揮される環境作り、コミュ力を引き出す対人関係作りをする。
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「○○力」というのはあくまでも比喩表現であり,それを安易に用いてしまうことの危険性がよく理解できた。学士力という概念が一度導入されてしまった以上,無くなることはないだろう。今後このような批判的な意見をはじめとして,大学人がきちんと議論をしていくことが重要だ。

日本リメディアル教育学会第7回全国大会

 日本リメディアル教育学会第7回全国大会(福岡大学)が、2011年9月2日(金曜日)~3日(土曜日)の日程で福岡大学で行われた。学会では、リメディアル教育学会で行ったアンケート結果をWeb上でも公開し、学会誌で詳細について検討していく予定とのこと。また学習支援ハンドブック(仮)を作成し、第8回全国大会前に刊行する予定らしい。一日目は快晴だったものの、段々と天気が怪しくなり二日目は暴風の中で何とか開催された。以下、いくつかの発表の覚え書き。

特別企画
フィンランドの教育・日本の教育
Finnish Education - From past success to Future excellence
Jarmo Viteli(タンペレ大学)


今後はICTや協働学習などが今後重要になってくるであろう。フィンランドでは講義スタイルからの脱却を図っている。教師と学習者に役割の変化、教師はorchestratorであり、学習者自身が目標を設定し、自律的に学習できる方向へ転換している。

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YouTubeビデオを見ながら楽器の演奏で始まった講演。聴衆を惹きつけるという意味で非常に優れたものだったと思う。知識偏重ではなく想像力や協働学習を重視するという話ではあったけど、それによって与える知識の量が限られてしまうという弊害もあるはずだ。日本の教育においてもゆとり教育からの脱却が図られたように、フィンランドにおいても今後時計の振り子が戻るということもあるかもしれない。関係ないけど講演中に流したYouTubeビデオが格好良かった。


小野博(昭和大学)、田中周一(昭和大学)、工藤俊郎(大阪体育大学)、加藤良徳(大阪体育大学)、長尾佳代子(大阪体育大学)、穂屋下茂(佐賀大学)
大学入学時に求められるコミュニケーション能力とその測定


近年のコミュニケーション能力の欠如を考慮に入れ、大学入学時に必要とされるものを学習型コミュニケーション能力(SCA)、就活時に必要な能力を就活型コミュニケーション能力(BCA)と名付けた。

まずは先行研究を基にアンケートを作成し実施した結果を分析した。その結果、発信傾向、受信傾向、交渉傾向、教室質問傾向、自尊感情、自己肯定、達成動機、シャイネスの8因子を検討している。日本語学習言語と実際に使う言語には相関が無い。私立大学などにおいて発信傾向などが高い、などの結果(スライドの提示だけだったので、詳細は不明)。結果から、対面会話力(役者による指導)、日本語力、自尊感情、学習意欲などの育成を目指す必要があるだろう。今後の課題として、定義の検討やプレースメントテストの開発を行っていきたい。

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スライドがよく見えなかったのだけど、私立大学の方が発信力が高いということは就職する力もあるということなのだろうか。コミュニケーション能力は確かに重要だが、あくまでも学力を支えるためのものであって、それを前面に押し出すのは少し問題があるかもしれない。

石田雪也(千歳科学技術大学総合光学部)
e-learningを用いた入学前教育における学習効果


2000年より利用を開始し、19000コンテンツを開発。LMSの利用。2週間ごとのコース制、英、数、国を週20~30時間行う。学習指導(やるように指導)及び手紙を送り、達成率が低い場合は学長室に呼び出すことにした。発表者本人が述べているように、eラーニングと紙媒体の間の違いは認められない。

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この大学は以前からeラーニングを用いた入学前教育を行っており、興味深い。入学前教育を受ける目的が、学力の維持あるいは向上にあるのであれば、学習の内容に踏み込んだ指導が必要となるだろう。

森川修(鳥取大学教育支援機構入学センター)
入学前教育におけるe-learningでの英語の学習効果


2005年より入学前教育を実施。入学前教育合宿研修(プレースメントテスト)、e-learing課題、入学後にプレースメントテストという形式に変換。ワオ・コーポレーションの教材を利用。合宿研修時のGTECとTOEICのスコアを比較(紙媒体での学習者を除く)。e-learningの進捗状況を理想型、集中型、後半型、未実施の4種類がいる。学習時間が長いから良い訳ではない。

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テストの種類が多様で解釈が難しかった。eラーニングをより一層活用するためには、このような効果の検証が必要。ただし、他の要素も多くからんでいるはずなので、純粋なeラーニングの効果を検証するのは非常に困難かもしれない。

藤川俊子(佐賀大学高等教育開発センター)、田代雅美(佐賀大学eラーニングスタジオ)、穂屋下茂(佐賀大学高等教育開発センター)
LMSを利用促進を目指した授業


「教育デジタル表現」という科目。eラーニングコンテンツの作成を行う。moodleの機能を理解し使うことができる、テーマに応じた教材を作成できる、グループで協調してコースを作成できることを目標とした。受講生は学生として教員としてログインする。

田中忠芳(松本歯科大学歯学部)
大学初年次物理系教育のための講義・実験モジュールの構築とe-Learningコンテンツの開発III

LMSのWebStudyを利用。

米満潔(佐賀大学eラーニングスタジオ)ほか
リメディアル教材の作成と活用支援

大学で作成した教材は他大学では使いにくい。今後は共有して使いやすいものにする必要がある。

教材の共有化:scorm2004に準拠し、複数のLMSに対応。
教材と学習者情報の分離:教材はレポジトリサーバへ保存。UPOネットが先行、その後、大学コンソーシアム佐賀が英語リメディアル教材、初級編(15項目)・中級編(16項目)を作成。それぞれの学習項目に穴埋めや並べ替え、音声を利用した問題が混在、4技能のうち、スピーキングを除くもの。

2010年に試行し、2011年は英文法の授業外で用いるリメディアル教材として利用。教員が学習履歴を確認するのは大変なので、センターにメンターを配置。

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このような試みは重要だが、一つだけ気になったのは英語の音声が日本人学生によるものだったこと。

神谷健一(大阪工業大学知的財産学部)
Phrase Reading Worksheetと種々の副教材を使った授業設計:教室内学力格差への対応を目指して

Phrase Reading Worksheet (PRW)作成ツールによるプリント教材を利用した実践について。ソフトウェアはhttp://www.oit.ac.jp/ip/~kamiya/prw/からダウンロード可能

大澤真也、中西大輔
学生に自信を付けさせる英語教育プログラムの予備的検討(2):教員・学生を対象としたCan-Doアンケートの分析から


出張の目的。前年度に引き続き学生を対象に行ったCan-Doアンケートの結果とToeicスコアとの相関を調べたもの。今回は教員へのアンケートも行い、その分析結果の発表を行った。
この研究もそろそろ相関がどうのこうのという所からステップアップして英語教育改革へとつなげたい。

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ということで、学習支援センターの仕事にかかわるようになって以来、参加するようになったリメディアル教育学会への参加を終えた。この学会の面白い所は理数系教育・英語教育や学習支援センター、ICT系など様々な分野の人が発表する所だ。特にeラーニング系の発表については参考になるものが多い(個人的にはmoodle関連)。でも非常に意欲的な研究発表を行っている人もいる一方で、リメディアル教育への嘆きを言っているだけのような人もいる。

リメディアル教育がこれからますます重要視されるのは間違いない。だからこそ、協働して教育手法・評価、教材作りなどを行っていかなければいけない。泣き言を言っている暇はないのだ。