2012年8月9日木曜日

外国語教育メディア学会第52回全国研究大会

 2012年8月7日~9日の日程で神戸の甲南大学にて外国語教育メディア学会が開催された。今回のテーマは「外国語教育における学習・指導・評価の最前線」ということで基調講演3件の顔ぶれを見ると今までのLETとはひと味違った感じ。今後のLETの方向性を暗示している気がします。甲南大学の近辺は高級住宅街で大きなお家ばかり!かと思えばその辺に流れる川でイノシシが水を飲んでいたり!真夏の暑い3日間(ワークショップを含む)でしたが,何かと勉強させていただきました。以下,備忘録。

[1日目]
1日目はワークショップの日。メインキャンパスよりも更に上の建物ということで,体力的にやられました。

Aaron Campbell(京都外国語大学)
Using Moodle Reader to Support Extensive Reading


以前から気になっていたので受講。詳細はmoodlereader.org参照のこと。いわゆるGraded Readerを読んだかどうかを確認するための問題をボランティアが作成しているというプロジェクト。moodlereader.orgに登録しても使えるし,自前のサーバにインストールしても利用することが可とのこと。ワークショップ中に3~40人の受講者が一斉にアクセスするとダウンしてしまったので,授業時間内に一斉にアクセスさせるということは考えない方が良いかもしれない。問題のレベルや質についてはあまり精選されていない印象だけど,実際に授業で使ってみたい。

阪上辰也(広島大学)
Rによる教育・言語データ処理のススメ

数年前にRをインストールして以来,挫折していましたが今回重い腰を上げて勉強してみました。実際に触ってみることによっていろんなことがわかったし,簡単な分析であればすぐできることもわかりました。無料でここまでできるのはすごい(とは言えやはり初心者には何かと辛い)。今後継続して勉強してみたくなりました。阪上さんのExcelやSPSSに対するコメントが個人的にはツボでした。

[2日目]
岩田聖子(追手門学院大学)・原田章(追手門学院大学)
CALL学習者に影響を及ぼす要因の特定に向けて:CALL学習者のコンピュータスキル及び英語力に関する質問紙開発


関口幸代(文教大学)
ソーシャルメディアを活用した英語学習者の自己調整学習環境の構築


iPadを貸与し,どのようなアプリをダウンロードして学習したかや,twitterを利用して学習記録をつぶやかせるなどの実践を行った。
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面白いとは思うのだけど,twitterを敢えて利用する意味があるかどうかは疑問。でもtwitterを利用した英語学習には個人的に興味あり。最後の質疑応答はtwitter利用者同士の戦いになっていました(笑)。

安川佳子(神戸凪川学院大学)・白木智士(甲南大学)・吉田佳子(甲南大学)・佐々木緑(関西国際大学)
社会人と大学生が考える自己の英語能力と社会で必要な英語能力とはー社会人と大学生の意識調査からー


社会人と学生の意識について非英語専攻の1年生167名と社会人75名を対象に質問し調査を行った。質問紙はCEFRをもとにしたもので,回答者が「すでにできる」,「大学を卒業していれば,できるべきだ」,「仕事,趣味,生活等に役立つ能力だ」のうち該当する項目にチェックマークを入れる方式で行った。
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「社会人」の定義は何なのか,なぜチェックマークという方式を採用したのか疑問が残る。面白いテーマなので今後の展開が楽しみではあります。

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その他にもポスター発表で「文法力の要請と基礎文法力要請のための教材開発の試みとその検証」(木村修平(立命館大学)・森永弘司(同志社大学))や「汎用計算ソフトを用いたランダム出題型テストの開発と運用」(前田啓朗(広島大学)),「『極めて短いストーリーコンテスト(Extremely Short Story Competition)』を導入した教室活動に関する報告ー東京経済大学のでの実践例ー」(三宅ひろ子(東京経済大学))などが印象に残りました。LETらしくtwitterなどソーシャルメディアの活用を行ったり,事前にオンラインに配布資料を閲覧できる状態にして置いておくなど,学会参加者への配慮が嬉しかったです。

LET参加の楽しみはワークショップとICTなどを活用した実践報告。中にはセカンド・ライフを活用した英語教育実践例等もあったりして興味深く拝聴しました。けれどもこのようなテクノロジーを活用した実践の効果を評価するというのはとても困難なことである気がするので,今後の課題でしょう。そういった意味で今回の大会は「学習・指導・評価」をきちんとやっていきましょうという学会としての決意表明であったような気がします。

時間の都合で荘島宏二郎(大学入試センター研究開発部)先生の講演は聴けなかったのだけど,過去の講演はこちらで視聴できるようです。

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