2011年8月7日日曜日

LET第51回全国研究大会「外国語学習での自律性と継続性」(名古屋学院大学名古屋キャンパス)

2011年8月6日~8月8日の日程で開催されたLET全国研究大会に参加した。今回は仕事の都合もあり,参加したのは8月7日のみ。風のない暑い日で昼は味噌カツ弁当,夜は味噌煮込みうどんと,味噌にまみれた名古屋の1日。以下,備忘録。

多様な大学環境における英語eラーニングー学習者アンケートからみえてくるものー
青木伸之(広島市立大学)ほか


 ぎゅっとeを導入している各大学において,学習者の情意面(学習意欲や興味など)が受講中にどのように変化するのか,変化するとすれば教材消化率,不適切学習の発生率などの学習パフォーマンスとどのような関係にあるのか,そしてそれらは導入形態や授業形態などによってどのように異なるのかについての調査。

リーディング:読解速度300wpm以上での学習
リスニング:学習速度3秒以下で学習

のものを「不適切学習」と定義し,質を伴った学習と区別する。また英語力は単純化して,知っている能力と使える能力に区別する。

学習の事前(4月中旬~5月上旬),中間(5月下旬~6月上旬),事後(7月上旬~下旬)にアンケート調査を実施した。やる気役立ち感,態度,努力・まじめ,楽しさ,学習進度,満足度について調査した(今回の調査は太字について)

太字の項目について概観した後,TOEICスコアの伸び率(分母:満点ー事前得点,分子,事後得点ー事前得点)についても簡単に触れていた。

まとめ
マネージメントがある程度の影響を及ぼしている可能性がある。特に学習進度は管理がういほど,自分の進捗状況に好印象を持っている。学習者にとって学習しやすい課題かどうかによっても差がある。役立ち感では,マネージメントの効果は見られなかった。

情意面の変化と実際の学習履歴との関係:
管理の強い大学ほど影響する余地は少なく,コンスタントな学習が見られ,強くない大学では情意面での違いが比較的消化率に影響していた。強い管理が無いことは,やる気の高低に関係なく,学習期間終了間際に駆け込み消化の傾向が見られた。

有効なマネージメントとは?:
学習期間中の細かい締め切りの設定,復習テストの実施の有無,週1回の対面授業の有無などが,管理の重要なポイントであることがわかった。→学習者が自身の学習について振り返ったりチェックしたりする機会をできるだけ提供できるような管理が有効なのではないか?

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以前から思っていることだが,eラーニングに関する研究はまだ発展途上で,理論的背景も十分とは言えず,研究テーマとしては面白いのだが,説得力に欠ける部分が多い。今回の研究はそういった意味では非常に野心的な研究であると言えるのだけれど,提示したデータと解釈の乖離が激しいように感じた。「このデータの理由はおそらく○○だと思われる」ということばが多かったのだけれど,もう少し興味深いデータが欲しいところ。

英語教育における自己調整学習に関する質問紙の作成
香林綾子(関西大学)


学習方略の尺度:MSLQ, SILL, MAIなど。

EFL環境下におけるL2 Motivational Self Systemの検証:英語専攻者と非専攻者を比較して
植木美千子(関西大学大学院)


共分散構造分析(SEM)による分析。

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関西大学の大学院は最近頑張っている。ただ,これが外国語教育「メディア」学会の発表かと言うと,疑問も残る。

協働学習を取り入れた英語ライティング指導の可能性
阿部真(獨協大学)・山西博之(関西外国語大学)


2つの大学で行われた,ペアで英作文を書く活動中に質問紙調査を実施し,学習者がペアで協働することによって「できた(わかった)」ことは何かについての調査。

調査1:
私立大学1年生45名を対象に,「ペアで作文を書く」「ペアで模範作文を参照する」「個別で書き直す」の3段階タスクを実施し,それぞれの段階で「できた(わかった)」ことに関する4件法による10の質問項目と自由記述3項目からなる質問紙調査を実施した(質問紙の項目は発話思考法のデータから得られたもの)。4件法による回答は記述統計量を算出し,自由記述はKJ法を用いて記述内容をグループ化した。それぞれ2人でやったからこそできた「協力」,自分ができない部分を相手が補ってくれた「補助」,自分と違う点が興味深い「相違」に分類した。それらにあてはまらないものは,グローバルなストラテジーという視点での分類が現れていた。

タスクは英検の4コマのストーリーを説明するもの。質問紙の項目は以下の通り。

語彙に関するもの
1.適切な単語を思いつくことができた。
2.どちらを使うか迷っていた単語を一つに決めることができた。
3.表現を多様にするためにどのように単語を言い換えればよいかわかった。
形式に関するもの
4.単語の正しい綴りがわかった(確認することができた)。
5.内容語(名詞,形容詞,動詞の語法など)の適切な使い方がわかった.
6.機能語(冠詞,前置詞,接続詞,関係詞など)の適切な使い方がわかった。
7.文法事項(時制,態,名詞の単数・複数など)の適切な使い方がわかった。
作文の内容やタスクに関するもの
8.絵の中の何を書いたらよいのかわかった。
9.絵の中の情報をどの程度細かく書くべきかわかった。
10.このタスクが何を求めているのかがわかった。
自由記述による質問項目(1~10以外)
11.ペアで作文を書いている段階でよくできたと思うことは何ですか?

調査2:
上記とは別の私立大学60名を対象に,調査2を実施した。調査2では1のKJ法による質的分析から得られたグループを用いて質問項目を作成した(1.パートナーと協力してできたこと,2.パートナーが助けてくれたこと,3.パートナーとの違いで興味深かったこと)。得られた自由記述の回答は,語彙・形式・内容の3つのカテゴリーに当てはめる要領で分類し集計された。

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とてもかりやすい発表でした。今後の予定として,作文の質との関連を探るとのことであったが,その結果が待たれる。

プロジェクトIRCー多読の授業における互恵的な読書環境の創出
水野邦太郎(福岡県立大学)

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KH Coderを使った分析ということで興味深かった。

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広島ー名古屋間の移動を甘く見て,日帰り出張にしたのだけれど,よく考えてみれば往復の新幹線だけで往復5時間。学会会場に滞在した時間は約6時間。あまり効率の良い出張とは言えなかったような・・・。

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