2012年3月13日火曜日

CEFR-J公開シンポジウム

Cefr-Jの公開シンポジウムが3月9-10日の日程で明治大学駿河台キャンパスのリバティタワーで行われた。このリバティタワーというのが御茶ノ水駅から徒歩5分程度で,まあでかくて・・・。なんて田舎者の感想はここまでにしておいて,当日の覚え書き。

「新しい英語能力到達速度指標 CEFR-J公開シンポジウム」は欧州言語共通参照枠(The Common European Framework of Reference for Languages 通称: CEFR)の日本の英語教育における運用を目的と下2008-2011年度科学研究費補助金基盤研究(A)「小、中、高、大の一貫する英語コミュニケーションの寿力の到達基準の策定とその検証」(研究代表者:投野由起夫)の最終成果報告である(当日配布冊子より引用)。

おそらく公式のウェブサイトはここ

1日目の使用言語は英語で,ブリティッシュ・カウンシルとケンブリッジESOLから講師を呼んでの基調講演もあった。最初の基調講演の後,投野由起夫先生からCEFR-Jの背景と開発の経緯について説明があり,その後「CEFR-Jを用いた学生の自己評価アンケート」と題して中野美知子先生がCEFR-Jにおけるdescriptor(記述文?)と日本語学習者の自己評価との関連について行った調査について簡単な説明をされた。調査は中学校,高校,大学生を大賞に2011年の春と夏に行われた。人数は順に1685名,2538名,1234名,1245名の計5468名。中学生はpre-A1レベルからA2.2レベルにおける12項目,高校生・大学生はpre-A1からC2における22項目について自己評価を行った。分析手法はItem Response Theoryのtwo-parameter logistic model。いろいろと説明をされていたが,この結果descriptorとして順番に並ばない項目を中心に妥当性の検証を行ったという理解で良いのだろうか(ここは私の理解であり未確認)。


1日目の残りのセッションにおいては,CEFR-Jの開発過程についてのものもあったが,私が参加したのは

相川真佐夫.「自己評価と実際の能力の関係(I):スポークン・プロダクション」
椎名紀久子.「自己評価と実際の能力の関係(III):リスニング」
高田智子.「自己評価と実際の能力の関係(IV):リーディング」
中谷安男.「自己評価と実際の能力の関係(V):ライティング」

などCEFR-Jの妥当性検証に関するセッションであった。最後のスロットは投野先生の「コーパスに基づいたCEFR-Jの単語リストとその他の活用資料」を聴きに行こうと思っていたのだが、なんせセッション間の休憩時間がゼロのため,移動を断念した。

全体的な印象としてはタスクの設定,サンプル数,descriptorの選択基準,実際の能力の評価,分析手法について,各技能間でバラツキが多いような気がした。せっかく科研という枠組みでやっているのだから,ミニマルな統一設定があっても良かったのではないだろうか。ただ,「妥当性」をこのように多くの研究者が検証していくというのはとても良い試みだと思う。あと気になったのは,英語を言語として設定しているにもかかわらず日本国内に多数いるであろういわゆるALTの聴衆はほとんどいなかったこと。こういう人たちが聴きに来てくれたら面白いこともあると思うんだが。

2日目は飛行機の都合もあり最後まで聴けなかったが,

高橋美由紀.「Pre-A1レベルの指導法」
高田智子.「A1レベルの指導法」
尾関直子.「スポークン・インタラクション(Aレベル)」
根岸雅史.「リーディング(Bレベル)」

を聴いた.ワークショプ形式ということで緊張していたのだが,そこまで参加型ではなかったのである意味安心した(笑)。発表の質には差があったように思うが,一番しっくりきたのは根岸先生によるリーディングのレベルと実際のテキストのレベルを検討するというセッションだった。これはリーディングにはテキストという実物があるということにも起因するとは思うのだけど・・・。根岸先生の所の大学院生が何らかの計算式でレベルの判定をしたとおっしゃられていたが,どのような計算をされたのがとても興味がある。全セッションに共通して感じたのは,小・中・校・大,そして企業の人たちも交えて,共通の基準に従いながら教材を検討するというのは,とても面白い経験だということだ。

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ということで,全体的な印象に留まるのだが,CEFR-Jは長い年月そして大規模な調査を行った点において今後注目を集めるのは間違いがない。ただ科研メンバーも認めているように,これが完全版ではなく出発点である。小池生夫先生のことばを借りれば「どんどん叩いてもらえればいいと思う」とのこと。そのうちネット上からもCEFR-Jの完全版が入手できるようになると思うが,楽しみである(紙のものはシンポジウム当日に頂きました)。実はCEFR-Jの動向については関心を持っているという程度で,詳しくはあまり知らない(恥ずかしながら)。高等教育機関においてはTOEICの点数だけが目標として設定されてしまう場合も多々あるので,CEFR-Jのような包括的(あえて抽象的ではあるけど)な基準をどのように活用できるかは今後検討していきたい。

English Profileのリンク。

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