日本リメディアル教育学会第5回全国大会が2009年9月1、2日に千歳科学技術大学にて行われた。千歳科学技術大学は札幌市内から少し離れた場所にあるが、多くの自然に囲まれた非常に美しいキャンパスであった。空港(千歳空港、自衛隊)も近いので飛行機好きにはお勧め。以下幾つかの発表のまとめ。
Boylan, H.R. Techniques for developing college student literacy
学生のliteracyを高めるためにはどうすれば良いのかについて、Appalachian State UniversityのNational Center for Developmental EducationでディレクターをしているBoylan氏が講演を行った。
リサーチに基づいた結果から言えば、1)できるだけ頻繁に学生の理解度を試すためのテストを行うこと(平均して1セメスターに10回!!)、2)学ぶためのスキル(キーワードを探すなど)を教えること、3)アクティブ・ラーニングを用いること、4)learning communitiesを作ること、が有効であると考えられる。4)に関しては2つのコースを有機的に結びつけること(例えばリーディングとライティングのクラス)である。
質疑応答では日本においてこれらの考えが実現可能かなどの議論が行われた。興味深い公演ではあったのだけれど、リメディアル教育が広範囲の科目にわたることの難しさを感じた。内容としてはリメディアル教育における基礎的な概念の紹介であり、アメリカの権威を呼ばなくても、日本の研究者でもできたかもしれない。リメデイァル教育(Developmental Education)黎明期においてはしょうがないのかもしれないけれど。
UPO-NETシステムの開発について
杉山秀則(放送大学)、梅崎卓哉(佐賀大学)、穂屋下茂(佐賀大学)、小野博(メディア教育開発センター)/古賀崇朗(佐賀大学)、酒井志延(千葉商科大学)、久村研(田園調布学園大学)、清田洋一(明星大学)、大崎さつき(千葉商科大学)、中山夏恵(共愛学園、前橋国際大学)、臼井芳子(獨協大学)、小野博(放送大学)、穂屋下茂(佐賀大学)
最近ことばを聴くことの多くなってきたUPO-NETについて複数の発表が行われていた。とにかく発表者が多い。
奥田雅信、中島彰子、合田美子(大手前大学)「多様な学び方と個に応じた初年次必修英語教育」
TOEIC300点以下の学生も多く在籍する学生数800名、教員13名、クラス数48(1クラス20名以下)という環境下での英語教育の試みの紹介。大手前大学では初年次教育システムとして必修4科目(「日本語表現」、「英語表現」、「情報活用」、「フレッシュマンセミナー」)が連携して構築、実践されている。そこにおける特徴は以下のとおり。
1)ターム制の導入
5週間で1つのまとまりとして学習する1学期3ターム制を導入し、「学習(1~3週)→診断・評価(4)→発展学習・補充学習(5)」の学習サイクルを確立している。
2)到達目標別コース編成
目標達成に向けて学生自身がクラスを選べ、タームごとにクラス変更が可能である。
3)スタンプ制
独自開発した携帯電話対応LMS「確認くん」を利用し、学生はここの学習状況を確認できる。
またアナログ的な手法として「学習記録ノート」を作成し、学習事項の理解度を学生自身が判断、またeラーニングのドリルや小テストの結果の達成度も確認した。
大澤佑至(千歳科学技術大学大学院光科学研究科)、高岡詠子(上智大学理工学部情報工学科)、吉田淳一、深町賢一、小田久哉(千歳科学技術大学総合光科学部)「ブレンド型e-Learning講義におけるデータ解析およびドロップアウト早期発見チェックシートの提案」
15回のうち3回の授業のみ対面式の授業においてドロップアウトする学生の傾向を分析し、チェックシート化する試み。英語の授業ではないのだけれど、このような試みは興味深い。
藤井俊子(佐賀大学eラーニングスタジオ)、早瀬博範(佐賀大学文化教育学部)、草葉千穂子(広島大学文学研究科)、齋藤夕希子(佐賀大学教育学研究科)、穂屋下茂(佐賀大学こうとう教育開発センター)「eラーニングを用いた英語教育での音声提出課題とフィードバック」
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その他のキーワード
「産学連携のeラーニング、リメディアル教育」
「入学前学習におけるeラーニングの活用」
とにかくどの発表も発表者が多い!!ことにびっくりしたのだけれど参考になることも多々ありました。しかし教育が絡んでくると英語教育は結構勢力を持つようで、この学会でも数多く英語教育関連の研究発表が行われていました。
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